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がんの痛みを和らげる薬など、新薬10成分はどんな薬?
研究報告・添付文書から

from Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology


がんの痛みを和らげる薬など、新薬10成分はどんな薬?の写真

写真はイメージです。本文の内容とは関係ありません。 (C) Svetoslav Sokolov - Fotolia.com


3月30日に、新薬10成分が厚生労働省から承認されました。がんの痛みや炎症性腸疾患などに使える薬が増えることになります。それぞれに臨床試験で示されている効果などを紹介します。

アフリベルセプト(商品名ザルトラップ®)は抗がん剤です。VEGF阻害薬に分類されます。ザルトラップは「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」を効能・効果として承認されました。

2012年に論文として報告された臨床試験では、転移のある大腸がんがオキサリプラチンを使った化学療法のあと進行した場合に、従来の抗がん剤を使ったFOLFIRI療法にアフリベルセプトを加えることで生存率が改善しました。対象者の半数が生存した期間は、アフリベルセプトを加えなかったグループで12.06か月、対してアフリベルセプトを加えたグループでは13.50か月でした。

参照: 2012 Oct 1.

フォロデシン塩酸塩(商品名ムンデシン®)は抗がん剤です。PNP阻害薬に分類されます。ムンデシンは「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」を効能・効果として承認されました。

臨床試験では、再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫の患者45人が対象となり、ムンデシン300mg1日2回の治療を行ったところ、改善の指標である奏効率は全体で22.2%となりました。比較のための対照群は置かれていません。

参照:ムンデシンカプセル100mg添付文書

 

イキサゾミブ(商品名ニンラーロ®)は、多発性骨髄腫(たはつせいこつずいしゅ)の治療薬です。プロテアソーム阻害薬に分類されます。

多発性骨髄腫は血液のがんの一種です。骨破壊、貧血腎機能低下など多様な問題につながります。

ニンラーロは「再発又は難治性の多発性骨髄腫」を効能・効果として新たに承認されました。

2016年に論文として報告された臨床試験では、イキサゾミブと同時にレナリドミドとデキサメタゾンを使う治療が試されました。3剤とも飲み薬です。

イキサゾミブを使ったグループでは、半数の人が20.6か月以上、病気の進行なく生存しました。イキサゾミブを使わずレナリドミド・デキサメタゾンだけで治療したグループでは、半数が進行なく生存した期間は14.7か月でした。

副作用の可能性がある事例として、血小板減少、発疹、下痢、便秘末梢神経障害などがありました。

詳しくは別の記事「骨が溶け貧血になる「多発性骨髄腫」の新薬ニンラーロが病気の進行を遅らせた」で紹介しています。

 

ヒドロモルフォン塩酸塩(商品名ナルラピド®、ナルサス®)は痛み止めの薬です。オピオイド受容体作動薬に分類されます。海外では古くから標準的に使われていた薬です。

ナルラピドは即放性(短時間で有効成分が放出される)、ナルサスは徐放性(ゆっくりと放出される)の製剤です。どちらも「中等度から高度の疼痛を伴う各種がんにおける鎮痛」を効能・効果として承認されました。

臨床試験では、いずれもオピオイド鎮痛薬のオキシコドンと比較して劣らないという結果が示されました。非オピオイド鎮痛薬で痛みが改善しない、オピオイド鎮痛薬非使用のがん患者を対象として、痛みを0-100mmの長さで表現するVASの数値が、ナルサス4mg7日間の治療後には平均30.5mm改善し、ナルラピド1mg5日間の治療後には平均30.0mm改善しました。

参照:ナルラピド錠1mg/ナルラピド錠2mg/ナルラピド錠4mg 添付文書ナルサス錠2mg/ナルサス錠6mg/ナルサス錠12mg/ナルサス錠24mg 添付文書

 

ナルデメジン(商品名スインプロイク®)は、オピオイド鎮痛薬の副作用として現れる便秘を改善する薬です。

オピオイド鎮痛薬はがんの痛みなどに対して優れた効果があります。その一方、便秘・嘔吐などの副作用もあります。ナルデメジンはオピオイド鎮痛薬を副作用に対処しつつ有効に使うことが目的です。

臨床試験の結果では、オピオイド使用中で14日間の排便が5回以下となった患者を対象として、ナルデメジン0.2mgによる12週間の治療により、自発排便回数が3回/週以上かつ治療開始から1回/週以上増加という治療目標が、偽薬よりも全体の36.8%高い割合で達成されました。

参照:スインプロイク錠0.2mg 添付文書

 

グアンファシン塩酸塩徐放錠(商品名インチュニブ®)は、神経を刺激する作用のある薬です。子供のADHD注意欠陥・多動性障害に対して効果があります。アメリカなどでは以前から使われていた薬です。

国内で行われた臨床試験では、6歳以上18歳未満のADHD患者に対して、偽薬に比べて症状が改善する結果がありました。症状のスコアであるADHD-RS-IVを使い、0点から54点の間で状態を判定したところ、グアンファシンとして0.12mg/kgを飲んだグループと偽薬のグループの間に平均10.19点の差が見られました。主な副作用に傾眠、血圧低下、頭痛がありました。

参照:インチュニブ錠1mg/インチュニブ錠3mg 添付文書

 

コムクロは「頭部の尋常性乾癬」を効能・効果として承認されました。強力なステロイド薬を含むシャンプーです。有効成分であるステロイド薬はクロベタゾールプロピオン酸エステルです。

尋常性乾癬は皮膚が銀色のガサガサした状態に変わる病気です。臨床試験では、頭部の尋常性乾癬の患者が対象となり、コムクロシャンプーを1日1回4週間使用したところ、29.5%の人で症状のスコア(PSSI)が75%以上改善し、偽薬よりも大きな改善が示されました。

参照:コムクロシャンプー0.05% 添付文書

 

ウステキヌマブ(商品名ステラーラ®)は、炎症を抑える作用のある薬です。

ステラーラは従来、尋常性乾癬などの効能・効果を認められていましたが、新たに「中等症から重症の活動期クローン病の導入療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」が効能・効果として追加されました。

クローン病は胃腸に炎症が起きる原因不明の難病です。炎症性腸疾患の一種です。

ステラーラ点滴静注130mgのために2件、ステラーラ皮下注45mgシリンジのために1件の臨床試験で効果が検証されました。

添付文書上の用法では、まず点滴を使うことと決められています。点滴の2件の試験は、いずれも既存治療で十分な改善が得られなかったクローン病患者が対象となりました(既存治療の内容が違います)。目標とした水準の改善が見られた人の割合は次のように、偽薬よりも大きくなりました。

  • 第1の試験(CRD3001)
    • 偽薬:21.5%
    • ウステキヌマブ130mg:34.3%
    • ウステキヌマブ6mg/kg:33.3%
  • 第2の試験(CRD3002)
    • 偽薬28.7%
    • ウステキヌマブ130mg:51.7%
    • ウステキヌマブ6mg/kg:55.5%

添付文書上の用量は、患者体重が55kg以下のとき260mg、55kg-85kgのとき390mg、85kgを超えるとき520mgと決められました。

参照:ステラーラ点滴静注130mg 添付文書

 

ゴリムマブ(商品名シンポニー®)は、炎症を抑える作用がある薬です。抗TNFα抗体に分類されます。従来関節リウマチを効能・効果とされていましたが、新たに「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の改善及び維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の効能・効果を追加されました。

潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症が起きる原因不明の難病です。炎症性腸疾患の一種です。

臨床試験では、他の薬で効果不十分だった潰瘍性大腸炎患者が対象となり、偽薬よりも勝る改善効果が示されました。

改善効果として、以下のように、ゴリムマブを使ったほうが偽薬より目標達成が多くなりました。

  • 治療開始から6週時点の評価
    • 偽薬:30.3%
    • ゴリムマブ初回200mg、2週間後に100mg:51.0%
    • ゴリムマブ初回400mg、2週間後に200mg:54.9%
  • 治療開始から52週時点の評価
    • 6週以後4週ごとに偽薬:31.2%
    • 6週以後4週ごとにゴリムマブ50mg:47.0%
    • 6週以後4週ごとにゴリムマブ100mg:49.7%

添付文書上の用量は最初に200mg、2週間後に100mg、以後4週ごとに100mgと決められました。

参照:シンポニー皮下注50mgシリンジ/ シンポニー皮下注100mgシリンジ 添付文書

 

乾燥濃縮人プロトロンビン複合体(商品名ケイセントラ®)は、血液を固まりにくくする薬の効果を急速に解除する薬です。つまり、血液が普通に固まる状態に戻します。

ワルファリンなどの種類の薬は、血液を固まりにくくします。血液の塊が血管に詰まって起こる病気(血栓症)の危険性が高い人などで、血液を固まりにくくする薬が使われます。

血液を固まりにくくすることで、出血しやすくもなります。薬を飲んでいる人に緊急手術が必要になった場合などは、薬の効果を解除しなければ大量出血の危険性があります。

臨床試験では、急性重篤出血(短時間で発生した深刻な出血)の患者のうち、ケイセントラにより止血効果が「有効」とされた人は72.4%でした。比較対照とされた血漿(血液から血球を除いた成分)では65.4%でした。

緊急手術が必要になった患者を対象とした試験では、止血効果が「有効」とされた割合はケイセントラで89.7%、血漿で75.3%でした。

参照:ケイセントラ静注用500/ケイセントラ静注用1000 添付文書

 

新薬が加わることにより、保険診療として新しい治療法が使えるようになります。効能・効果や副作用に対応して報告されているデータを参考に、従来の治療法と比較することで、ひとりひとりに合わせた治療選択の幅を広げることができます。

◆参照文献

Addition of aflibercept to fluorouracil, leucovorin, and irinotecan improves survival in a phase III randomized trial in patients with metastatic colorectal cancer previously treated with an oxaliplatin-based regimen.

J Clin Oncol. 2012 Oct 1.

[PMID: 22949147 ]

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*本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。 [執筆者一覧]



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