尿管結石を排出させる薬は効く?α遮断薬の研究55件のまとめ
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急激な腹痛などを起こす尿管結石の治療のひとつがα遮断薬です。α遮断薬は結石を早く排出させる狙いで使われます。効果についてこれまでに報告されているデータの調査が行われました。
尿管結石に対するα遮断薬の効果
尿管結石の治療としてα遮断薬の効果と副作用を調べた研究を紹介します。
α遮断薬は一般に前立腺肥大症などの治療で使われます。尿道などの筋肉の緊張をやわらげ、尿の出が悪い症状などに効果を現します。
この研究は、以前の研究報告を集める方法により、関係する研究が行われている状況を調べ、すでに得られているデータをまとめたものです。
患者の治療法をランダムに分ける方法の研究(ランダム化対照試験)だけを調査対象としました。
排石が早くなる効果など
採用基準を満たす55件のランダム化対照試験が見つかりました。
以下のα遮断薬が試されていました。
- タムスロシン(商品名ハルナールなど)
- アルフゾシン(日本では未承認)
- ドキサゾシン(商品名カルデナリンなど)
- ナフトピジル(商品名フリバスなど)
- シロドシン(商品名ユリーフ)
- テラゾシン(商品名バソメット、ハイトラシン)
集まったデータから次の結果が得られました。
α遮断薬が尿管結石を排石しやすくすることの中等度の質の証拠があった(リスク比1.49、95%信頼区間1.39-1.61)。
対照群に比べて、α遮断薬を使用した患者では排石までの時間が有意に短く(平均差-3.79日、-4.45から-3.14、中等度の質の証拠)、腹痛のエピソードが少なく(-0.74回、-1.28から-0.21、低い質の証拠)、外科的治療のリスクが低く(リスク比0.44、0.37-0.52、中等度の質の証拠)、入院のリスクが低かった(リスク比0.37、0.22-0.64、中等度の質の証拠)。深刻な有害事象のリスクは治療群と対照群で類似していた(1.49、0.24-9.35、低い質の証拠)。
α遮断薬により、尿管結石が排出される割合が高くなっていました。
ほかα遮断薬を使った人について以下のデータがありました。
- 排石が早い
- 腹痛が現れる回数が少ない
- 手術が必要になる割合が少ない
- 入院になる割合が少ない
副作用の可能性がある症状などで、深刻なものの頻度は、α遮断薬を使わなかった人よりも統計的に多いとは言えない範囲でした。
解釈
尿管結石に対してα遮断薬の効果を示すデータが見つかりました。
ただし、ここで挙がったα遮断薬のうち、日本で尿管結石を効果・効能として認められているものはありません。日本で実際に使おうとするときは適応外使用として扱われます。
尿管結石は小さいものなら多くは自然に排出されます。水を多めに飲むなどして排出を待てる場合もあります。薬で排出が早くなる一方、副作用として射精障害などが起こる可能性もあります。
症状の重さや全身の状態など、さまざまな条件とともに、効果を示すデータを見比べることで、治療法を選ぶために役立てることができます。
執筆者
Alpha blockers for treatment of ureteric stones: systematic review and meta-analysis.
BMJ. 2016 Dec 1.
[PMID: 27908918]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。