腹痛と嘔吐を訴えた男性
東京歯科大学市川総合病院の研究班が、小腸閉塞と診断された人の例を『Internal Medicine』に報告しました。
報告されている69歳の男性は、腹痛と嘔吐を訴えて紹介受診しました。診察では上腹部を押したときの軽い痛みがありました。
腹痛と嘔吐の原因は?
高齢者に腹痛と嘔吐を起こしやすい主な病気として次のものが考えられます。
- 急性胃腸炎
- 急性胆嚢炎
- 腸閉塞
- 急性虫垂炎
- 胃潰瘍
血液検査では白血球14,900個/μl、CRP 0.96mg/dlなど、軽い炎症反応が見られたほかに異常はありませんでした。腹部レントゲン写真を撮影したところ、腸がガスで膨らんでいる様子が写り、腸閉塞が疑われました。
腸閉塞の原因として、お腹を開く手術をしたあとで腸が周りと癒着してしまうことが代表的です。しかしこの男性は手術を受けたことがありませんでした。
腹部CTを撮影すると、小腸に白く写るものが詰まっていました。
画像上、中身が均一で白く写る特徴が、餅の写りかたとして報告されているものと一致しました。さらに詳しく問診した結果、病院に来る14時間前に餅を食べていたことがわかり、餅による小腸閉塞と診断されました。
入院して手術はせず保存的治療を続けた結果、数日で完全に症状はなくなりました。
餅のトラブルに注意
餅が腸閉塞を起こすことは少ないですが、過去にも報告があります。腸閉塞になった人14人を調べたところ全員が餅を噛まずに飲み込んでいたとする報告もあります。
餅のトラブルでもっと多いのは、のどに詰まることです。毎年かなりの数の死者が出ています。
お正月に餅を楽しみにしている方も多いと思います。けれども、高齢者では万一のトラブルに気を付けつつ食べることも大切です。東京消防庁は餅を小さく切る・よく噛むなどの予防策のほか、背中を叩く応急処置などを紹介しています(http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/stop/old_03.pdf)。
お正月を楽しく過ごすためにも、餅の注意点を覚えておいてください。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。