もちがのどに詰まったらどうする?(前篇)〔新年企画〕
食べ物などがのどに詰まったときの応急処置として、ハイムリッヒ法が広く知られています。実際にどの程度使われ、救命に結びついているかを調べた2007年の研究を紹介します。
◆ハイムリッヒ法とは
ハイムリッヒ法は、のどが詰まった患者の背後に救助者が立ち、両手を患者の腹部に回して突き上げるように圧迫することで、詰まったものを吐き出させる方法です。
片方の手を握りこぶしにして患者の胸骨とへその間に当て、もう一方の手を重ねて強く引き、繰り返し圧迫します。
まれに胃など腹部の臓器を傷付ける場合がありますが、救命に役立つと言われています。
妊娠中の女性や乳児には使ってはいけないとされ、代わりに患者をうつ伏せの姿勢にして支え、もう片方の手で背中の肩甲骨の間を強く叩く方法(背部叩打法)が勧められています。
どちらの方法も患者の意識がないときには行うべきでないとされています(関連記事もあわせてご覧ください)。
◆サン・ディエゴの記録から
この研究では、アメリカのサン・ディエゴの統計から、17か月の対象期間に起こった成人の気道異物閉塞の例を集め、実際に行われた応急処置や死亡数などについてまとめました。
◆ハイムリッヒ法で86.5%が改善
次の結果が得られました。
研究期間に、513例の成人の気道異物閉塞があった。そのうち17人(3.3%)が死亡した。
ハイムリッヒ法は最も広く使われた介入であり、86.5%の率で患者の改善をもたらした。マギル鉗子はハイムリッヒ法で難治だった3例において有益に働いた。
見つかった513例のうち3%以上にあたる17人が死亡していました。応急処置としてハイムリッヒ法が最も多く行われ、行われた場合の86.5%で改善が見られました。ハイムリッヒ法で異物を吐き出させることができなかったとき、救急治療で使われるマギル鉗子で異物が取り除かれた例が3件ありました。
研究班は「気道異物閉塞は成人において最も緊急の事態の代表であり、この研究で死亡率は3.3%だった。ハイムリッヒ法はしばしば使われ、また成功を収めてもいた」と結論しています。
楽しい新年の食事でも、万一の事故につながることはありえます。危ないときには救急車を呼ぶのはもちろん、こうした応急処置も救命のための大切な要素になります。
執筆者
Adult foreign body airway obstruction in the prehospital setting.
Prehosp Emerg Care. 2007 Jan-Mar
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。