2017.09.30 | ニュース

減量手術から12年、体重・糖尿病・高血圧はどうなった?

1,156人の試験の追跡結果

減量手術から12年、体重・糖尿病・高血圧はどうなった?の写真

重度の肥満の治療のひとつが減量手術です。食べ物が胃を通らないで腸に流れるようにする手術方法があります。手術後の長期追跡で確認された効果が報告されました。

ルーワイ手術から12年後

アメリカのユタ州ソルトレークシティーの施設で減量手術を受けた人の長期経過が、医学誌『The New England Journal of Medicine』に報告されました。

この研究は、1施設で「Roux-en-Y胃バイパス」の手術を受けた418人の経過を追跡し、手術から12年後までの体重、2型糖尿病、高血圧などの状態を調べたものです。比較のため、同じ施設に手術を求めて来たけれども手術をしなかった417人(非手術1群)、また別に募集され手術は求めていなかった321人(非手術2群)とあわせて、合計1,156人が追跡されました。

調査開始時の平均年齢は手術群で42.5歳、非手術1群で42.9歳、非手術2群で49.4歳でした。平均体重は手術群で133.9kg、非手術1群で129.8kg、非手術2群で124.0kgでした。

Roux-en-Y胃バイパス(ルーワイ手術)は減量手術としてよく使われている方法です。胃の一部だけを小さく切り出し、食道から来た食べ物がそこを通って腸に流れるようにします。胃の大部分は食べ物が入ってこないようになります。すぐに満腹になることなどにより減量効果が現れます。

 

12年後まで効果が持続

追跡の結果、手術前と12年後を比べると表のようになりました。

  手術

非手術1

非手術2

体重

-35.0kg -2.9kg

0kg

糖尿病発生

3% 26%

26%

高血圧発生

16% 41%

47%

糖尿病寛解

51% 10%

5%

高血圧寛解

36% 10%

14%

手術をした人では、体重は平均35kg減り、もともと2型糖尿病があった人のうち51%が糖尿病の基準に満たない状態になっていました。もともと高血圧があった人でも36%は基準未満になっていました。

もともと2型糖尿病がなかった人は、非手術1群・非手術2群ともに26%が新たに2型糖尿病になりましたが、手術群では3%だけでした。

 

減量手術が肥満大国の切り札に?

減量手術の長期経過を紹介しました。

この研究が行われたアメリカでは肥満が大きな問題になっています。平均体重130kgの対象者を1,000人以上集めることは、日本ではいくらか難しくなるかもしれません。

減量手術によって130kgが100kgになるという目覚ましい効果が出ています。対して手術しなかった人の減量は平均3kgに満たないという結果でした。この研究の対象者は減量手術のほかに食事や運動による肥満治療もしてよいことになっていましたが、生活習慣で体重を減らして長年維持するのはかなり難しいようです。

日本でも減量手術を行っている施設はあります。BMI(体重[kg]÷身長[m]÷身長[m])が35以上でほかの治療では減らないなどの場合に手術が検討されることがあります。日本でも将来重度肥満の人が多くなれば、減量手術を適切に使うことが社会にとって重みを増してくるかもしれません。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Weight and Metabolic Outcomes 12 Years after Gastric Bypass.

N Engl J Med. 2017 Sep 21.

[PMID: 28930514]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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