2017.09.01 | ニュース

妊娠糖尿病と言われたら、次の妊娠までにやせるべき?

文献の調査から

妊娠糖尿病と言われたら、次の妊娠までにやせるべき?の写真

妊娠中は血糖値が上がりやすくなります。妊娠糖尿病と呼ばれる状態は、子供に影響する恐れもあり、注意が必要とされます。次の妊娠の前に治療して効果があるかが調査されました。

妊娠糖尿病から次の妊娠までの介入

オーストラリアの研究班が、妊娠糖尿病を経験した女性に対して、以後の妊娠までの治療(介入)で効果が得られるかについて文献の調査を行い、『The Cochrane Database of Systematic Reviews』に報告しました。

この研究は、それまでの研究から出ている結果を検索して集めたものです。

妊娠糖尿病は糖尿病ではありません。出産後に血糖値は下がる場合が多く、治療も終了できます。ただし妊娠糖尿病を経験した女性は以後に糖尿病になりやすいなどの影響があります。

 

出版された結果なし

調査の結果、採用条件を満たす研究で、論文として出版されているものは1件も見つかりませんでした

1件の研究は、以前に妊娠糖尿病の経験があり、新たに妊娠中の女性を対象として、食事と運動の効果を報告していました。次の妊娠の前ではないため条件に合いませんでした。

ほかには妊娠糖尿病の経験があり肥満であり、次の妊娠を計画中の女性を対象として、強い生活介入とリラグルチド(糖尿病治療薬)の効果を調べる1件の研究が進行中で、結果はまだ出ていませんでした。

また、妊娠糖尿病の経験があり肥満であり次の妊娠を計画中の女性を対象に、減量と運動介入の効果を調べる1件の研究が見つかりましたが、結果は出版されていませんでした。

 

妊娠糖尿病になったらどうする?

妊娠糖尿病のあと次の妊娠の前の治療による効果はまだ報告されていないという調査結果を紹介しました。

この結果は「何もわからなかった」という意味ではありません。「わかっていないこと」がわかることには価値があります。つまり、現時点では判断できないと考えてほかの問題の検討を優先するといった使いかたができます。

妊娠糖尿病が悪い結果につながるかもしれないと思うと怖くなってしまいます。実際に、インスリンなどによる治療を必要とする場合や、難産などの悪い結果が現れてしまう場合も中にはあり、次の妊娠で妊娠糖尿病が再発する女性もいます。

だからといって効果の証拠がないことまで最大限努力するべきと考えるのは極端です。ほかの研究では、妊娠糖尿病のある妊婦になされたさまざまな食事指導のうちほとんどは効果が確認されていないという報告、妊娠糖尿病で運動をしても血糖値が下がる以外に結果の違いは確認されていないという報告もあります。

わかっていないことまで気に病むよりも、より確かなことに注意を振り向けたほうが、無理をしないで妊娠・育児を続ける役に立つのではないでしょうか。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Interconception care for women with a history of gestational diabetes for improving maternal and infant outcomes.

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Aug 24. [Epub ahead of print]

[PMID: 28836274]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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