2017.05.26 | ニュース

のどの痛みのあと肌がザラザラに、赤い線もできた20歳男性

猩紅熱の症例報告

from The New England journal of medicine

のどの痛みのあと肌がザラザラに、赤い線もできた20歳男性の写真

猩紅熱(しょうこうねつ)という病気は発熱のほか皮膚に特徴的な症状を現します。発熱・のどの痛みとともに皮膚の症状が出て診断された人の例が報告されました。

グアム海軍病院の医師が、猩紅熱の症状が強く現れた20歳男性の写真を医学誌『New England Journal of Medicine』に報告しました。

この男性は、3日間続く扁桃口やのどにあるリンパ組織。免疫に関与している(へんとう)の腫れ、のどの痛み、発熱、悪寒、皮膚の症状があり受診しました。

皮膚にかゆみはなく、見た目の症状が腹部から発生して胸部と背部に広がり、両腕、両脚、顔にも現れました。

診察された時点で以下の症状がありました。

  • 扁桃が腫れて液体がにじみ出ている
  • 舌が腫れて細かい凹みが目立っている(イチゴ舌)
  • 首のリンパ節体全体にある、免疫を担当する器官の1つ。感染や免疫異常、血液のがん、がんの転移などで腫れるが腫れて大きくなり、押すと痛む
  • 皮膚がまだらに赤くなっている
  • 皮膚に細かくザラザラとした盛り上がり丘疹皮膚にできる発疹を表す言葉の一種で、しこりやできもののように盛り上がったもののうち、通常1cm以下のものを指す)ができている(紙やすり状皮疹皮膚に起こる、何かしらの目に見える変化の総称
  • 首と右脇腹に点状出血が赤い線のように並んだ箇所がある(パスティア線)

のどの奥にある扁桃と腹部の皮膚に現れた症状の写真が「参照文献」のリンク先で見られます。

以前に同じ症状が出たことはなく、アレルギー免疫反応によって、体が過剰な防御反応を起こして悪影響が生じてしまう状態を指摘されたことも、最近新しく飲み始めた薬もありませんでした。

 

典型的な症状から猩紅熱が疑われました。猩紅熱は、A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)の感染によって起こる発熱と皮膚症状です。この男性は溶連菌の迅速検査で陽性となり、症状と合わせて猩紅熱と診断されました。

抗菌薬細菌感染症に対して用いられ、細菌の増殖を防ぐ、もしくは殺菌する薬。ウイルスや真菌(かび)には効果がない抗生物質微生物が産生する細胞の増殖や機能を阻害する物質。抗菌薬・抗ウィルス薬・抗がん薬を含む、抗生剤)で治療され、3日以内に症状は完全に解消しました。

 

溶連菌は普通の環境の中でどこにでもいる細菌感染症を起こす微生物の1つ。ウイルスと比較して10-100倍の体の大きさをもつです。扁桃炎咽頭炎を起こしてのどの痛みなどの症状を現します。のどの痛みだけで治る場合が多いですが、体が溶連菌の毒素に対する過敏反応を起こし、猩紅熱の症状が現れる場合もあります。

溶連菌の感染はとてもありふれており、ペニシリンという古くからある抗菌薬が非常によく効くことが特徴的です。扁桃炎咽頭炎だけであれば、抗菌薬治療により数日で症状が治まる場合がほとんどですが、数日の治療だと再発することもあるため抗菌薬を10日ほど飲むことになります。その一方で、扁桃に溶連菌が長年住み着いたまま特に症状もなく過ごしている人もいます。

ごく一部の場合で、溶連菌の感染が関与して、特徴的で多様な症状が現れます。いくつかの例を挙げます。

  • 扁桃周囲膿瘍:のどが腫れて飲み込みにくい、発音しにくい、あごが開きにくいなど
  • リウマチ熱:発熱、息苦しさ、関節の痛み、手足が勝手に動く、皮膚に赤い輪のような模様(輪状紅斑輪状または環状の形をした紅斑(皮膚表面が赤くなった状態)を示す、皮膚の異常)が出る、皮膚の下に数mm程度の塊(皮下結節)ができるなど
  • 急性糸球体腎炎血尿尿に血液成分が混じった状態。尿の通り道に病気があると起こる。血尿といっても真っ赤とは限らず、見た目は普通で、検査をしないと血尿であることが分からない場合も多いタンパク尿尿中にタンパク質が多く含まれること。病気による影響の場合と、正常な反応の場合があるなど
  • 壊死性筋膜炎(人食いバクテリア):皮膚や脂肪などの組織が急激に壊死ある部位の細胞が死んでしまうこと。多くの場合、血管が詰まったり、つぶれたりして、血液が流れなくなってしまうことが原因となるする

この中には溶連菌が見つかった時点で抗菌薬を使うことにより予防できるものもあります。しかし、同じ溶連菌がなぜこれほど多様な状態に結び付くのかについては、いまだ不明な点が残されています。

猩紅熱は一見目立った症状が出るので不安になるかもしれませんが、抗菌薬で治しやすいケースです。熱やのどの痛みに加えて皮膚にも症状があるときは、溶連菌感染の可能性が考えられます。またここでは触れていませんが、マイコプラズマ細菌の一種。肺炎や気管支炎の原因となることで知られているの感染で皮膚に症状が出た場合なども抗菌薬が有効です。

見覚えのない症状に気付いたら、まずは皮膚科やかかりつけの医療機関で相談してください。

執筆者

大脇 幸志郎


参考文献

Scarlet Fever.

N Engl J Med. 2017 May 18.

[PMID: 28514617] http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1612308

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。 [執筆者一覧]