冠動脈疾患患者における運動による心臓リハビリテーションの効果
冠動脈疾患の患者を対象に、心臓リハビリテーションの効果について文献の調査を行った研究を紹介します。
この研究は、文献データベースを2014年7月までの範囲で検索し、過去の研究から報告されている結果を収集しました。
冠動脈は、心臓の筋肉に血液を送る血管です。冠動脈が動脈硬化により詰まったり塞がったりすると、心臓の筋肉が酸素不足に陥って胸の痛み(狭心症)を起こしたり、心筋梗塞として命に関わる状態に至ったりする危険があります。狭心症や心筋梗塞を含めて、冠動脈の血流低下がある状態を冠動脈疾患と言います。
心臓リハビリテーションとは、冠動脈疾患などの患者を対象に、運動療法や食事療法などを通して、再発予防などの目的で行うリハビリテーションのことです。
入院中は病棟やリハビリ室などで軽い負荷の身体活動を行いながら、活動範囲を拡大することを目指します。退院後は有酸素運動を中心とした運動療法による体力の回復、食事内容の見直しや禁煙によって再発予防が図られます。
ここで紹介する研究では、調査対象として、次のいずれかの患者が運動を基本とする心臓リハビリテーションを行うことについて調べた報告を集めました。
- 心筋梗塞
- 心臓バイパス手術(CABG)後
- 冠動脈のカテーテル治療(PCI)後
- 狭心症
- 冠動脈疾患
心血管疾患による死亡が減少
関係する63件の研究が見つかりました。合計で14,486人の患者についてのデータが得られました。
統計解析から次の結果が得られました。
運動に基づく心臓リハビリテーションは、運動療法を行わない対照群と比べて心血管死亡を減らした(27件の試験、リスク比0.74、95%信頼区間0.64-0.86)。
運動による心臓リハビリテーションを行うことで、心血管疾患による死亡を減らす効果があると見られました。
全体としての死亡率、心筋梗塞の発生数、心臓バイパス手術が行われた件数、カテーテル治療が行われた件数は統計的に違いが見られませんでした。
まとめ
心臓リハビリテーションの効果についての研究を紹介しました。
心臓リハビリテーションは長い歴史がありますが、効果については報告によって幅があります。このように体系的な方法で過去の報告を要約することにより、わかっていることの全体像を把握し、より広い視野から治療効果を見積もって方針を立てるために役立てることができます。
執筆者
Exercise-based cardiac rehabilitation for coronary heart disease.
Cochrane Database Syst Rev. 2016 Jan 5.
[PMID: 26730878 ]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。