2016.02.09 | ニュース

心臓リハビリで急性冠症候群のあとのQOLを改善

入院した50人で比較
from Iranian journal of nursing and midwifery research
心臓リハビリで急性冠症候群のあとのQOLを改善の写真
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心筋梗塞や不安定狭心症を総称して急性冠症候群(ACS)と言います。ACSでは生活の質(QOL)が下がることがあります。今回の研究チームは、心臓リハビリテーションによるQOLの改善効果を検証しました。

◆心臓リハビリテーションとは

ACSを発症したあとの生活は、他人からは変わらないように見えるかもしれません。しかし実際には、心臓に対する不安、精神的な落ち込み、活動性や身体機能の低下などからQOLが下がりやすい状態です。この研究はACSの治療後のQOLに着目しています。

ACSの治療で、入院中は、病棟やリハビリ室などで軽い負荷の身体活動を行いながら、心電図や血圧、胸の症状等を確認し、安全に活動範囲を拡大することが目指されます。退院後は有酸素運動を中心とした運動療法による体力の回復、食事内容の見直しや禁煙といった包括的なリハビリを通じて、再発予防が図られます。これらを「心臓リハビリテーション」と言います。

 

◆ACSの患者50人を対象に分析

今回の研究チームは、ACSを発症し入院となった50人を対象にしました。

対象者は、入院中から退院後4週にわたって心臓リハビリをする群(心臓リハビリ群)と、入院期間中のみリハビリを行う群(対象群)にランダムに割り当てられました。

心臓リハビリ群では、退院後にリハビリ施設での運動や、自宅への電話連絡による問診等での対応が行われましました。

心臓リハビリの効果を検証するために、心臓リハビリ群と対象群について、入院期間でのリハビリ介入前と退院4週間後における、QOLについて評価を行い、比較し分析しました。

 

◆心臓リハビリで生活の質は改善

以下の結果が得られました。

心臓リハビリ群では、生活の質を問う全ての項目において心臓リハビリ介入前後の平均スコアが統計学的に有意な改善を示した(P<0.05)。コントロール群では、生活の質の平均スコアに介入前後での変化は認められなかった(P<0.05)。また、下位尺度のうち全体的健康感と社会生活機能のほかは、全項目で有意に心リハ介入群を支持する結果であった(P<0.05)。

ACSのあと心臓リハビリテーションを退院後も継続することでQOLが改善するという結果でした。詳しく見ると、心臓リハビリにより身体機能や活力が改善し、QOLの向上につながることが示唆されました。

 

今回の研究では、生活の質(QOL)を評価する際に、「身体的な健康」や「精神的な健康」といった、健康に関連したQOLがどの程度満たされているかを評価しています。ACSなどの心臓病は再発予防も重要とされているので、健康に関連したQOLの改善と再発予防との関連性についての研究報告が今後さらに出されるのを期待します。

執筆者

TORU KOKUBO

参考文献

The effect of cardiac rehabilitation on quality of life in patients with acute coronary syndrome.

Iran J Nurs Midwifery Res. 2015 Sep.

[PMID: 26457097]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。