2016.12.11 | ニュース

腸内細菌を見ると大腸がんがわかる?便潜血と組み合わせて感度92%

309人の検査で検証

from Gut

腸内細菌を見ると大腸がんがわかる?便潜血と組み合わせて感度92%の写真

大腸がんの便潜血検査は簡単にできて信頼性が高い検査です。しかし検査は絶対ではありません。信頼性を高めるために、腸内細菌を調べる検査が試されました。

香港の研究班が、便潜血検査に加えて腸内細菌の量を比較したときに大腸がんを見分ける検査能力が高まるかどうかを調べ、専門誌『Gut』に報告しました。

この研究では、次のような合計309人の対象者の中から、大腸がんがある人を検査で正しく見分けられるかが試されました。

  • 大腸がんがある人 104人
  • 進行した大腸がんがある人 103人
  • 大腸がんがない人 102人

研究班は、健康な人の腸内にもいる3種類の細菌の量に注目しました。

  • フゾバクテリウム(Fusobacterium nucleatum)
  • ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus anaerobius)
  • パルビモナス(Parvimonas micra)

対象者の便を使って、便潜血検査(免疫学法)で検査するとともに、細菌のDNAを大量にコピーする方法(PCR法)を使って、これらの細菌の量を調べました。

 

検査の結果、3種類の細菌はいずれも大腸がんがある人のほうが量が多くなっていました。特に、フゾバクテリウムの量で分けると、次の結果が得られました。

フゾバクテリウムのマーカーは、免疫学的便潜血試験と組み合わせたとき、同じ患者コホートにおいて結腸直腸がんを検出する上で免疫学的便潜血検査単独に比べて勝った感度(92.3% vs 73.1%、P<0.001)およびROC曲線下面積(0.95 vs 0.86、P<0.001)を示した。

便潜血検査とフゾバクテリウムで大腸がんを判定すると、大腸がんがある場合に正しく指摘できる割合(感度)は92.3%となり、便潜血検査だけで判定したときの73.1%を上回りました。

一般に、感度が高い検査は、実際には病気がなくても病気があるとする間違いが多くなります。そこで、大腸がんがない場合に正しく「大腸がんがない」と判定する割合(特異度)も加味した指標で比較したところ、便潜血検査だけでは0.86に対して、フゾバクテリウムの検査を加えると0.95に検査性能が向上しました(数値は0から1まで、大きいほうが性能が高い)。

進行した大腸がんに限って比べたときも、フゾバクテリウムの検査を加えたほうが、便潜血検査だけよりも検査性能が高くなりました。

 

フゾバクテリウムの検査を加えることで、便潜血検査よりも正しく大腸がんを見分けることができるかもしれません。

ただし、多くの人が受ける検診に使うには、診断が正しくなるだけでは十分とは言えません。検査にかかる時間や費用を考え合わせなければ、検査を受けたくない人が増えてしまうかもしれません。また、性能が上がることでより適切な治療ができ、患者の寿命や生活の質を改善することに結び付くかどうかは別に検証が必要です。

フゾバクテリウムの検査が広く使われるためには、こうした多くの課題をクリアできるかどうかが問われるでしょう。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Quantitation of faecal Fusobacterium improves faecal immunochemical test in detecting advanced colorectal neoplasia.

Gut. 2016 Oct 24. [Epub ahead of print]

[PMID: 27797940]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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