人食いバクテリアを誤診されやすかった61%の人の特徴

壊死性筋膜炎は、A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)などのありふれた細菌がごくまれに起こす劇症型の病気で、「人食いバクテリア」とも呼ばれます。かかった人の特徴の研究から、特定の場合に誤診などが多かったことが報告されました。
糖尿病の人が壊死性筋膜炎になったときの特徴
シンガポールの研究班が、壊死性筋膜炎の経過に糖尿病が影響するかどうかを調べ、専門誌『The Bone & Joint Journal』に報告しました。
1施設の診療の記録をもとに、2005年から2014年の間に壊死性筋膜炎で治療された127人のデータを解析しました。糖尿病があった人となかった人を比較して、違う特徴があるかを調べました。
61%が糖尿病、誤診・切断が多い
調査の結果、壊死性筋膜炎の患者のうち61.4%にあたる78人が糖尿病でした。糖尿病があった人は、なかった人に比べて次の場合が多くなっていました。
- 複数の細菌に感染している
- 腎障害が起こっている
- 末期腎不全の状態である
- ほかに複数の病気を持っている
- 圧痛(押すと痛む症状)がない
- 低血圧がない
- 誤診された
- 手足を切断された
- 手術までの時間が長い
- 入院期間が長い
一方、死亡率には統計的に違いが見られませんでした。
糖尿病は万病の元!
糖尿病の人は感染症にかかりやすいことが知られています。糖尿病の人では結核が多いとした報告もあります。さらに、足の血行が悪くなることなどにより、足が壊死して切断が必要になることもあります。壊死性筋膜炎とは別に糖尿病自体も足の切断の原因になるということです。
また、糖尿病性腎症を起こすことによって高カリウム血症などの原因にもなります。血糖値が高いことが検査値にも影響し、検査上低ナトリウム血症として表れる場合もあります。このように、糖尿病がある人では検査をもとに診断を下すだけでもより高度な判断が必要になり、誤診が生まれるリスクもあると考えられます。
壊死性筋膜炎はまれな病気で、誰に起こるかは予測できません。ただ、糖尿病の人にはより危険性が高いと言えます。糖尿病によるほかの合併症はもちろん、感染症の危険性を減らすためにも、糖尿病を予防することや治療を怠らないことが大切です。
執筆者
A comparison of necrotising fasciitis in diabetics and non-diabetics: a review of 127 patients.
Bone Joint J. 2016 Nov.
[PMID: 27803235 ]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。