グルテン過敏は勘違い?自己申告した人の73%に「ほかの原因」
「パンを食べるな」と言われたことはありますか?必要のない食事制限が世界的な問題になっています。グルテンのせいで症状が出ると思っていた人に、ほかの原因を疑わせる特徴が多く見られたことが報告されました。
オランダで785人にアンケート
オランダの研究班が、アンケート調査をもとにした研究の結果を栄養学専門誌『Nutrients』に報告しました。
この研究では、一般成人を対象に、グルテン過敏症に当てはまるかのアンケートを取りました。
グルテン過敏症とは?
グルテンは小麦粉などに含まれているタンパク質です。ほとんどの人にはタンパク質として有益な栄養になりますが、セリアック病という病気の人は、グルテンに反応して腸の
セリアック病は、栄養がうまく吸収されないことによって貧血や低体重など「やせ衰える」症状の原因となる病気です。治療として、つまり「太るための治療」として、一生にわたって食事からグルテンを一切除く「グルテンフリー食」という方法があります。少量のグルテンでも問題になる場合があるので、グルテンフリーの食品をときどき食べるのではグルテンフリー食とは言えません。
セリアック病は白人では数百人に1人程度に発生します。日本人ではきわめてまれと言われています。一方で、セリアック病の基準を満たさなくてもグルテン過敏症と言える人がいるという説があります。
ここで紹介する研究では、オランダの一般人口を対象として、自分はグルテン過敏症だと感じている人の割合などを調べています。
お腹が張りやすい食べ物のせい?
調査から次の結果が得られました。
質問をした785人の成人の中で、2人がセリアック病だった。49人(6.2%)がグルテンを含む食品の摂食に関連する症状を報告した。これらの個人はほかの回答者に比べてより若く、主に女性であり、都市部に住んでいる場合が多かった。
調査対象の785人のうちセリアック病だった人は2人と、300人に1人未満でした。グルテンを含む食べ物で症状が引き起こされると答えた人は6.2%で、次の特徴がほかの人よりも多く見られました。
- 若い
- 女性
- 都市部に住んでいる
また、回答にあった症状を引き起こしやすいグルテン以外の食品について、次の結果がありました。
FODMAPを含む食品に関連する腹部不快感は、グルテン過敏症を自己申告した人からはほかの回答者よりも頻繁に報告された(73.5% vs 21.7%、P<0.001)。
グルテン過敏症を自己申告した人のうち73.5%が、FODMAPを含む食品によってお腹の不快感が現れると答えていました。対して、グルテン過敏症を自己申告しなかった人では21.7%にとどまりました。
FODMAPは炭水化物のうち一部のものです。「発酵性オリゴ糖・二糖・単糖・ポリオール」の略です。FODMAPは野菜や果物など多くの食品に含まれています。FODMAPは腸の中で発酵してガスを出しやすい性質があり、お腹の張りなどにつながる人もいます。
研究班はグルテン過敏症を自己申告した人について「これらの症状が部分的にはFODMAPのせいである可能性は否定できない」と注釈しています。
本当にグルテンのせいですか?
グルテン過敏症を自己申告した人に以下の特徴があったという報告でした。
- 若い
- 女性
- 都市部に住んでいる
- お腹が張りやすい食べ物によって症状が出る人が多い
お腹が張りやすい食べ物のせいで出ている症状をグルテンのせいだと勘違いしている人がいるとすれば、特徴の一部は説明がつくかもしれません。
また、グルテン過敏症は最近メディアで話題になっていますが、実際にどの程度の患者がいるのかははっきりしません。スウェーデンの統計でセリアック病は300人に1人程度だったとする報告や、アメリカの調査でセリアック病ではないのにグルテンフリー食をしている人が最近数年のうちに3倍以上に増えたという報告もあります。
日本の調査では対象者470人の中にセリアック病はひとりもいなかったとする報告があります。
グルテンフリー食が必要な人はごく少数です。
グルテンフリー食は一生にわたって多くの食品が禁止になる、非常に厳しい食事制限です。
有名人がグルテンフリー食をしているといった情報を気にしすぎても、ほとんどの人にはいいことがありません。
執筆者
Prevalence and Characterization of Self-Reported Gluten Sensitivity in The Netherlands.
Nutrients. 2016 Nov 8.
[PMID: 27834802]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。