2016.09.23 | ニュース

グルテンフリーが必要な人は本場スウェーデンでも300人に1人!原因は?

スウェーデン全国の統計から

from Archives of disease in childhood

グルテンフリーが必要な人は本場スウェーデンでも300人に1人!原因は?の写真

グルテンを含む小麦などが食べられないセリアック病は白人に多い病気です。スウェーデンの統計で、スウェーデン国内でも生まれた季節によって頻度に差があったことから、原因についての考察が示されました。

スウェーデンの研究班が、研究結果を専門誌『Archives of Disease in Childhood』に報告しました。

この研究では、スウェーデンで行われた全国調査のデータが使われました。調査ではスウェーデンで1991年から2009年に産まれた0歳から14.9歳の子ども1,912,204人が対象とされました。

そのうちセリアック病と確認された子どもは6,569人いました。

研究班は、統計解析により、産まれた地域や季節がセリアック病に関連しているかを調べました。

 

セリアック病は、グルテンに対する過敏な反応により、下痢や貧血、体重減少などを起こす病気です。セリアック病の人のために、グルテンフリー(グルテンを含まない食事)という食事療法が考え出されました。つまりグルテンフリーは太るための食事です。セリアック病ではない人には関係ありません。

一般にセリアック病は白人に多いとされ、日本人では非常に少数です。

 

スウェーデンの統計の解析から次の結果が得られました。

全体で、冬に産まれた子どもに比べて春・夏・秋に生まれた子どものほうがセリアック病のリスクは高かった。調整ハザード比は春生まれで1.08(95%1.01-1.16)、夏生まれで1.10(95%信頼区間1.03-1.18)、秋生まれで1.10(95%信頼区間1.02-1.18)だった。

セリアック病は冬生まれの子どもでわずかに少なく、ほかの季節に生まれた子どもでわずかに多いという結果でした。

 

研究班は、セリアック病の頻度に差があった原因について考察しています。

  • 原因に関係する遺伝子(HLA-DQ2とHLA-DQ8)に偏りがあるとは思われない。
  • 冬に多いウイルス感染症がセリアック病の発生に関係するという説がある。
  • 春・夏生まれの子どもが秋・冬に離乳して小麦を食べ始める時期にウイルスに感染することでセリアック病になりやすくなるのではないか。

セリアック病を引き起こすきっかけについての興味深い考察が示されました。

一般的には、免疫の異常による1型糖尿病、橋本病、ギラン・バレー症候群などがウイルス感染をきっかけに起こる場合があります。

この報告ではセリアック病が190万人のうち6千人に見つかりました。およそ300人に1人です。セリアック病が多いとされる白人の国でもその程度です。日本ではセリアック病は「きわめてまれ」とした論文や、日本で似た症状のある対象者470人を調べたところセリアック病はひとりもいなかったという報告があります。

セリアック病に関係する遺伝子(HLA-DQ2とHLA-DQ8)はある報告によればセリアック病の患者全員に見つかったとされ、この遺伝子を持っていない日本人は危険性が低いと考えられます。

さらに、今回紹介した考察によれば、次の条件が重なるとセリアック病を引き起こしやすいことになります。

  • 原因遺伝子を持っている。
  • 離乳の時期に小麦を食べた。
  • 小麦を食べ始めた時期に一致してウイルスに感染した。

小麦は白人にとっては欠かせない主食ですが、日本人に小麦の影響がどの程度あるかは疑問です。そもそも原因遺伝子がある人が非常に少数です。

セリアック病は長年の下痢や貧血に苦しみ、太るために主食の小麦を制限しなければならない、つらい病気です。「グルテンが悪い」と聞くと怖くなってしまいます。

しかし、ほとんどの日本人には関係ありません。

海外の有名人がグルテンフリーに気を付けているなどの報道がありますが、過敏に反応せず、バランスのよい食生活を続けてください。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Season and region of birth as risk factors for coeliac disease a key to the aetiology?

Arch Dis Child. 2016 Aug 15. [Epub ahead of print]

[PMID: 27528621]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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