GLP-1アナログとは?
ここで紹介する研究では、糖尿病の薬のうち「GLP-1アナログ」と呼ばれる種類のものについて検討しています。
GLP-1アナログは、血糖値を下げる薬です。注射で使います。膵臓を刺激して、ホルモンの分泌をコントロールします。
膵臓は本来、インスリンというホルモンを出しています。インスリンは血糖値を下げるホルモンです。糖尿病ではインスリンの働きが不十分になります。GLP-1アナログは、膵臓からインスリンを分泌させることによって血糖値を下げます。
GLP-1アナログに分類される薬として、日本でもリラグルチド(商品名ビクトーザ)などが実際に処方されています。
イギリス7万人を追跡した調査
新たに報告された研究を紹介します。カナダとフランスの研究班が行い、論文として専門誌『JAMA Internal Medicine』に掲載されました。
研究班はイギリスの統計データの解析を行いました。このデータは、2007年から2014年にかけて、期間内に糖尿病の薬物治療を始めた成人71,369人の経過を追跡したものです。
研究班は、GLP-1アナログと、別の種類のDPP-4阻害薬に注目しました。GLP-1アナログまたはDPP-4阻害薬を使った場合と、飲み薬の糖尿病治療薬2種類以上を使った場合を比較しました。
胆石症、胆嚢炎、胆管炎のどれかが新たに発生して入院が必要になった頻度について、解析が行われました。
GLP-1アナログ使用中には胆嚢摘出術が多い
解析から次の結果が得られました。
[...]GLP-1アナログの使用は、少なくとも2種類の経口糖尿病治療薬を使用中であることと比べて胆道および胆嚢の疾患のリスク増加と関連した(1000人年あたり6.1件 vs 3.3件、調整ハザード比1.79、95%信頼区間1.21-2.67)。二次解析において、GLP-1アナログはまた、胆嚢摘出術のリスク増加と関連した(調整ハザード比2.08、95%信頼区間1.08-4.02)。
GLP-1アナログを使用中だった人では、飲み薬を2種類以上飲んでいた人に比べて、胆道・胆嚢の病気が発生する率が1.79倍に多くなっていました。また、GLP-1アナログを使用中だった人では胆嚢を取り除く手術(胆嚢摘出術)がおよそ2倍多く行われていました。
DPP-4阻害薬には関連が見られませんでした。
研究班は「臨床医はこれらの製剤を処方する際、この潜在的な有害事象を意識するべきである」と結論しています。
解釈
GLP-1アナログの副作用かもしれない問題点が指摘されました。
ただし、この研究の方法では、GLP-1アナログを使った人と使わなかった人が同じ条件とは言い切れません。
つまり、胆道・胆嚢に関係する何らかの危険な要素を持っていた人にはGLP-1アナログが処方されやすかったと仮定すると、GLP-1アナログに副作用がなかったとしても、病気の頻度が高いことが説明できるかもしれません。条件の違いは計算上調整されていますが、未知の要因が関わっていた可能性はゼロではありません。
この報告だけでは確かとは言えませんが、関係する人は副作用を疑う声が上がったことを心にとめておくことで、今後の情報を読み解く手掛かりにできるかもしれません。
執筆者
Association of Bile Duct and Gallbladder Diseases With the Use of Incretin-Based Drugs in Patients With Type 2 Diabetes Mellitus.
JAMA Intern Med. 2016 Aug 1. [Epub ahead of print]
[PMID: 27478902]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。