2016.03.31 | ニュース

痩せ型の20代に血尿を起こす「くるみ割り症候群」、主な症状は?

112例の報告から

from International angiology : a journal of the International Union of Angiology

痩せ型の20代に血尿を起こす「くるみ割り症候群」、主な症状は?の写真

くるみ割り症候群(ナットクラッカー症候群)は、腎臓から流れ出す静脈が圧迫されることにより、血尿などの症状を起こす状態です。どのような人に多く、どんな症状が多いのか、報告された症例のデータが集計されました。

◆くるみ割り症候群はなぜ起こる?

正常な体の中で、左の腎臓から血液が流れ出る静脈(左腎静脈)は、大動脈の前を横切っています。左腎静脈のさらに前(お腹の側)の位置には、大動脈から分かれた上腸間膜動脈が通っています。普通は左腎静脈と上腸間膜動脈の間には隙間があるのですが、上腸間膜動脈が後ろ(大動脈に近い側)に寄りすぎると、左腎静脈が大動脈と上腸間膜動脈の間で挟まれ、圧迫されてしまいます(図)。

このように、上腸間膜動脈によって左腎静脈が圧迫され、左の腎臓から正常に血液が流れだせなくなってしまった状態がくるみ割り症候群です。挟まれた左腎静脈が、くるみ割りにくるみが挟まれた形に似ていることからこの名前があります。痩せ型の人に多いと言われています。

くるみ割り症候群の特徴として、ここでは、ポーランドの研究班が、これまでに研究されたデータをまとめたものを紹介します。研究班は文献データベースを検索して、採用基準を満たした112人分の報告を集め、患者に見られた特徴を集計しました。

 

◆平均26歳、症状は血尿・腹痛・蛋白尿

次の結果が得られました。

男女分布は均等であり、全体で診断時の平均年齢は26.47±13.77歳だった。下記の頻度の症状が記されていた:血尿が78.57%、左側腹部痛が38.39%、精索静脈瘤が男性の35.71%、蛋白尿が30.36%、貧血が13.39%。

くるみ割り症候群は男女どちらにも同程度の頻度で見られました。年齢は平均26歳でした。最も多く報告されていた症状は血尿で、ほかに左の腹部の痛み蛋白尿貧血(血液検査でヘモグロビンが少なくなった状態)、また男性では精索静脈瘤をともなう場合が多く見られました。

精索静脈瘤は、精巣から流れ出す精巣静脈の一部がコブのように膨れた状態で、不妊の原因にもなります。精巣静脈は左腎静脈に流れ込んでいるため、くるみ割り症候群が精索静脈瘤の原因になることがあります。

研究班は「くるみ割り症候群は頻度の高い診断ではないが、特に原因不明の血尿と精索静脈瘤があるときには、考慮に入れるべきである」と結論しています。

 

くるみ割り症候群の治療は、重症度に応じて手術などの方法がありますが、多くは自然に改善します。ここで報告された特徴は、ほかの腎臓や泌尿器系の病気と見分け、適切な治療を選ぶための手掛かりになります。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

The nutcracker syndrome. Morphology and clinical aspects of the important vascular variations: a systematic study of 112 cases.

Int Angiol. 2016 Feb.

[PMID: 25972135]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

▲ ページトップに戻る