ダンスをする人とウォーキングをする人はどちらが健康か
健康のために運動は大切です。特に、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患は運動と深く関わっています。運動の中身によって違いがあるかという観点から、ダンスに注目した研究が行われました。
◆ダンスは心血管疾患による死亡と関係があるか?
ここで紹介する研究は、ダンスが盛んな国であるイギリスで、40歳以上の健康な人を対象に行われました。対象者48,390人に、最近4週間でダンスをしたか、またある程度以上に歩いたかの聞き取り調査が行われました。
聞き取りから数年間の追跡のうちに、
ダンスをしていたかどうかで心血管疾患による死亡の多さに違いがあるかが統計解析されました。
◆ダンスで46%、歩行で25%少ない
次の結果が得られました。
Cox回帰モデルで、性別、年齢、社会経済的状態、喫煙、アルコール、
BMI 、慢性疾患、心理社会的苦痛、総身体活動量で調整すると、心血管疾患による死亡のハザード比は中等度の強さのダンスで0.54(95%信頼区間0.34-0.87)、中等度の強さの歩行で0.75(95%信頼区間0.62-0.90)だった。
中等度の強さのダンスをしていた人では心血管疾患による死亡率が46%低く、中等度の強さの歩行をしていた人では心血管疾患による死亡率が25%低いという結果でした。
研究班は「中等度の強さのダンスは、歩行よりも強く、心血管疾患による死亡のリスク減少と関連した」と述べています。
ダンスは楽しく長く運動を続けるには良いやり方なのかもしれません。
ただし、この研究の方法では、ダンス自体の効果のほかに、ダンスをする人には生活習慣などに健康的な特徴のある人が多かったという可能性も考えられます。運動量や経済的背景などの代表的な要素は計算に入っていますが、検討されていない要素が関係していた可能性は否定できません。
ダンスにどの程度の効果が期待できるのか、またダンスがどのようなしくみで健康に影響するのかといった点を知るにはほかの研究が必要です。この研究は、健康的な運動についてさらに詳しい研究の手がかりになるかもしれません。
執筆者
Dancing Participation and Cardiovascular Disease Mortality: A Pooled Analysis of 11 Population-Based British Cohorts.
Am J Prev Med. 2016 Feb 25. [Epub ahead of print]
[PMID: 26944521]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。