乳児血管腫ってどんな病気?
乳児血管腫は生まれたときに気づくことが多い良性の腫瘍で、盛り上がっていたり、平たい地図状だったりと、いろいろな種類があります。ほとんどが5歳から10歳くらいまでに自然に消えていきます。自然に消えない場合や、目の近くにあって視力低下の恐れがある場合、のどにあって気道をふさぐ恐れがある場合、見た目の問題がある場合などに治療が行われます。
どんな治療法があるの?
乳児血管腫には主に以下の治療が行われています。
- レーザー治療
- 切除手術
- ステロイドの内服
- β遮断薬の内服
これまで、レーザー治療やステロイドの内服が一般的でした。しかし近年、高血圧などにも使われる「β遮断薬」という種類の薬剤であるプロプラノロールが新たな治療法の候補になっています。
薬による血管腫の縮小効果を比較
研究チームは文献データベースを検索し、1982~2015年までに発表された研究から18件の研究(乳児血管腫の子ども計1,265人)を集めました。これらのデータを合わせて解析し、血管腫の縮小効果についてプロプラノロールとステロイドを比較しました。
プロプラノロールで血管腫が目立たなくなった子どもの割合は95%
以下の結果が得られました。
予測縮小率の平均推定値は、ステロイド内服では43%(95%ベイジアン信用区間(BCI):21%-66%)、対照では6%(1%-11%)だったのに対し、プロプラノロール内服では95%(88%-99%)で最も高かった。
血管腫が小さくなって目立たなくなった割合は、プロプラノロールで治療された子どものうち95%、ステロイドでは43%でした。
研究チームは、子どもの血管腫の治療法を決める際は、「[...]病変の大きさ、体のどの部位にあるか、数、種類、子ども自身と親の意向といった要素を考慮にいれるべき」と指摘しています。
日本ではまだ乳児血管腫に対するプロプラノロールの保険適応はありませんが、一部の病院では自費診療でプロプラノロール治療が行われています。また、現在、乳児血管腫に対するプロプラノロール内服の効果に関する臨床試験が進行中です。
結果次第では、今後日本でも標準的な治療として広く使われるようになるかもしれません。
2016/9/28追記
プロプラノロールを有効成分とする製剤ヘマンジオルシロップが、日本で2016年9月から販売されています。
執筆者
Pharmacologic Interventions for Infantile Hemangioma: A Meta-analysis.
Pediatrics. 2016 Feb.
[PMID: 26772662]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。