◆ナルコレプシーとは
ナルコレプシーの症状のひとつに、過眠症状があります。ナルコレプシーの場合は、朝寝すぎるというよりも、日中に眠気が強まり、特に昼間から夕方のちょうど昼寝をする時間帯で異様な眠気に襲われるという特徴があります。眠気に襲われ、5分から15分くらい居眠りをし、起きると眠気が改善しますが、その1時間から数時間後にまた同様の眠気に襲われ、居眠りを繰り返すという症状が見られます。
ナルコレプシーによる眠気(過眠症状)は、脳の視床下部と呼ばれている部分が関わっていると言われています。視床下部には、睡眠と覚醒を調整する役割があり、正常であれば、それらはさまざまな物質によってバランスが保たれています。ナルコレプシーの場合は、そのバランスを保つのに必要な物質が消失することで、バランスに不均衡が生じ、過眠症状や居眠りが現れると考えられます。
しかし、眠気を症状に持つ病気はその他にも多くありますので、眠気だけで本当にナルコレプシーかはわかりません。次に症状として眠気が現れる病気について説明していきます。
◆ナルコレプシー以外に眠気を症状とする病気はあるか
ナルコレプシーの他に眠気が見られる病気の例として以下が考えられます。
- 特発性過眠症
- 原因不明の、日中の過度な眠気が持続的に現れる病気です。反復することもあります。
- ナルコレプシーと区別するのはなかなか難しいのですが、ナルコレプシーの眠気は我慢できないことが多い一方で、特発性過眠症の眠気は我慢できる場合もあります。
- 甲状腺機能低下症
- 代謝の調節をする甲状腺(首にある臓器)の機能が何らかの原因で低下した状態です。無気力や疲れやすさ、眠気のような症状などを感じることがあります。
- 甲状腺機能の検査で異常値が見られたり、ナルコレプシーではあまり見られない首の腫れ、便秘、かすれ声といった症状によって区別することができます。
- パーキンソン病
- 無動・寡動(体を動かせない、ゆっくりになる)、筋強剛(動きに抵抗がある)、振戦(安静時に手や足がふるえている状態)、姿勢反射障害(本来であれば倒れそうになるとそれに抵抗するように姿勢を調整するものですが、抵抗せずにそのまま倒れてしまう症状)などを症状とする病気です。パーキンソン病の場合も、眠気に襲われることがあります。
- 上記の症状(無動、筋強剛、振戦、姿勢反射障害)に関係して、表情が乏しくなること、突進現象(前のめりになって歩く)、ほかに排尿障害などによってナルコレプシーと区別することができます。
- 季節性うつ病
- ある季節にのみうつ症状が現れる病気です。冬に見られるものは、冬季うつ病と呼ばれることがあります。眠気や体のだるさといった症状が見られます。
- 季節性うつ病の場合は、その他の症状、例えば抑うつ気分があるか、季節によって変化するかなどが、ナルコレプシーと区別する症状として参考にすることができます。
- 睡眠時無呼吸症候群
- 睡眠中に呼吸が止まったり、呼吸リズムが悪くなったりする病気です。睡眠時無呼吸症候群の人では、日中に頭がぼーっとして過度な眠気に襲われることがあります。
- ナルコレプシーとの違いは、睡眠ポリグラフ検査などで見つけることができます。睡眠時無呼吸症候群では、睡眠中に無呼吸があること、酸素飽和度(どの程度酸素が体に行き渡っているかを示す指標)が低いことなどが手がかりになります。
- 薬剤性過眠症
- 薬の副作用として眠気が見られることがあります。
- 行動誘発性睡眠不足症候群
- 慢性の睡眠不足により、休日の睡眠時間が長くなっていることがあります。
- 睡眠の時間帯などの睡眠習慣によって、ナルコレプシーと区別することができます。
- 概日リズム睡眠障害
- 睡眠相がかなり後退して、睡眠している時間帯が遅くなっている一方で、社会リズムとして朝起きなければいけないと、日中に過度な眠気に襲われることがあります。
- 睡眠の時間帯などの睡眠習慣によって、ナルコレプシーと区別することができます。
これらの病気では、過度な眠気(過眠症状)が現れることがありますので、ナルコレプシーと区別するために、問診や検査をする必要があります。ここでは詳しい問診内容や検査内容については解説しませんが、例えば、「日頃、何時に寝て、何時に起きていますか?」といった質問により、過眠症状の原因が「睡眠時間帯の影響である可能性」について知ることができるかもしれません。
以上、ナルコレプシーの症状のひとつである過眠症状と、その過眠症状が見られる病気との違いについて説明してきました。「眠気が強いからナルコレプシー」というわけではなく、様々な症状と整合して、診断がつきます。
注:この記事は2016年3月8日に公開されましたが、2018年2月9日に編集部(大脇)が更新しました。
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※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。