2016.02.02 | コラム

WHOが緊急事態宣言「ジカ熱」とは?医師が解説する原因・症状・感染対策まとめ

国内での感染はないが、日本人の感染者あり
from 緊急特集
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(C) farland9 - Fotolia.com

ブラジルで、ジカ熱の影響が強く疑われる小頭症の子どもが急激に増えて社会問題となっています。2016年2月1日にはWHO(世界保健機関)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。 ジカ熱は蚊に刺されることで感染する、ジカウイルスによる感染症です。日本にいながらにしてジカ熱に感染する可能性はどのくらいあるのでしょうか。また、流行地域へ渡航予定のある方はどのようなことに気をつける必要があるのでしょうか。

◆ジカウイルスはどこから来たのか?

ジカウイルスは、1947年にウガンダのジカ森林で初めて確認されました。

最初の大規模な流行が報告されているのは2007年ミクロネシアにおけるものです。2013年から2014年にかけては、ポリネシアでも同じく流行が確認されています。ポリネシアの最東端であり、そして南米チリに所属するイースター島で感染者が2014年に確認されてから、2015年には南米大陸本土へとウイルスが拡大しています。

ミクロネシア、ポリネシア、イースター島、そして南米と、地図上で見ると徐々に東へウイルスが拡大していったように見えます

 

◆どんな症状が?

ジカウイルスに感染しても、75-80%の人には症状が出ません。検査をしない限り自分が感染者だということに気づかないのです。

残りの人では、以下の様な症状が見られます。

  • 発熱
  • 関節の痛み(関節炎)
  • 目の充血や違和感(結膜炎
  • 皮膚の赤みやぶつぶつとした皮疹
  • 頭痛、目の奥の痛み

いずれも症状はあまり強くなく、重症化して入院が必要となったり、命に関わるようなことはまれな病気です。ジカ熱感染そのものが恐ろしいというわけではないのですが、妊娠中の女性がジカ熱に感染してしまうことが問題となっています

妊娠中のジカ熱感染は、流産、そして胎児の小頭症(頭蓋骨の成長が不十分で、知能発達の遅れなどを引き起こす)を引き起こすと考えられています。ブラジルでは直近の1年間で小頭症の赤ちゃんが3500人以上報告されており、これはそれ以前と比較して実に20倍に及ぶ増加に当たります

 

◆感染経路と流行地域

ジカ熱は、ジカウイルスをもった蚊に刺されることが原因となって発症する感染症です。蚊がウイルスを媒介する役割を担っていますが、感染者から別の人へと蚊を介さずに感染が直接広がることは、性行為によって伝染したと考えられるわずか数名の例外を除き報告がありません。

2016年1月現在で流行が見られるのがブラジルを中心とする中南米です。北米大陸ではメキシコのみですが、南米では半分以上の国で、そして中米でも多くの国でウイルスが検出されています。

日本人が渡航することの多いアメリカ合衆国については、カリブ海にあるアメリカ領ヴァージン諸島、プエルトリコ、ポリネシアにあるアメリカ領サモアを除き感染者は報告されていません。

日本国内での感染もやはり現時点ではありませんが、海外で感染した日本人観光客が、帰国後に国内でジカ熱と診断されたケースがあります(タイ、ポリネシアからの帰国で計3名)。日本人でも、実はジカ熱でありながら診断がつかないうちに自然と治ってしまったという人は、過去にこの数倍から数十倍いたと考えてもおかしくありません。

 

◆ブラジル五輪の影響で世界的拡大が懸念

2014年夏にデング熱が流行したことを覚えていますでしょうか。

デング熱は従来日本国内で流行する感染症ではありませんでした。しかし海外で感染した人が国内へ戻り、デングウイルスを含んだその血液を蚊が吸い、その蚊がまた別の人間を刺すといった経路で日本での感染が拡大したと考えられています。

ジカ熱でも同じ事態が生じる可能性があります。

2016年8月にはリオデジャネイロでオリンピックが開催されます。世界中から大勢の観光客がブラジルを訪れ、その中にはジカ熱に感染したまま帰国する人もおそらく含まれるでしょう。感染者の75-80%は無症状(潜伏感染)のままですし、症状が出るまでの潜伏期間も最大で2週間ほどあります。そのような方も含めて完全に入国の際に感染者をチェックするというのは困難です。

感染者の方が国内で蚊に刺されると、国内で新たな感染が生じてしまう可能性があります。ジカ熱を媒介できる二種類の蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)のうち、ヒトスジシマカは日本国内にも生息しているのです

 

◆対策としてできること

個人レベルで可能な対策としては、いかにウイルスをもった蚊に刺されないようにするか、という一点につきます。

流行地域への不要不急の旅行を再検討する、また、これらの地域を訪れる際には虫よけを使用して、長袖長ズボンを着用する、そして蚊帳を使用するといった対策が考えられます。なお、ジカ熱のワクチンはまだ開発されていません。

エボラ出血熱などと異なり致死的になることはほとんどない感染症ではありますが、妊婦の感染で赤ちゃんの先天異常を引き起こしてしまうこと、そして、自分も感染の拡大に一役買ってしまう可能性があることといった観点から注意が必要な疾患です。

 

◆ ジカ熱に関連する情報まとめ

最後になりますが、ジカ熱の症状や治療法などをまとめたこちらのページもどうぞご参考になさってください。

ジカ熱の症状・原因・治療
http://medley.life/diseases/item/56ac23065a8af6a8008b4577

小頭症の症状・原因・治療
http://medley.life/diseases/item/54fa8feb6ef458cb3885ce0d

 

【訂正2/2】

・本文中に「ブラジル最大の都市、リオデジャネイロ」とありましたが、ブラジル最大の都市はサンパウロであり誤りでした。「ブラジル最大の都市、」を削除しました。

・米疾病予防管理センターの2月1日付けの情報によると、アメリカ領サモアでも感染が見つかっているため、「、ポリネシアにあるアメリカ領サモア」と追記しました。2月1日時点で感染が見られている地域は以下のとおりです。

バルバドス ボリビア ブラジル コロンビア プエルトリコ コスタリカ キュラソー ドミニカ共和国 エクアドル エルサルバドル フランス領ギアナ グアドループ グアテマラ ガイアナ ハイチ ホンジュラス マルティニーク メキシコ ニカラグア パナマ パラグアイ サンマルタン スリナム アメリカ領ヴァージン諸島 ベネズエラ アメリカ領サモア サモア カーボベルデ 

参照:http://www.cdc.gov/zika/geo/index.html

執筆者

沖山 翔

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。


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