2016.01.18 | コラム

てんかん発作は、脳の部位によって沢山の種類がある

脳の科学・てんかん(2)

てんかん発作は、脳の部位によって沢山の種類があるの写真

脳には沢山のてんかん発作の種類があります。すべてが分かって居るわけではありませんが、発作を起こしている脳の部位と発作の型には密接な関係があります。

◆脳研究の大革命

脳機能局在論とは、脳の部位毎で異なる役割があり、それが集合して人間がものを感じたり考えたりしていると言う考え方です。

実は19世紀までは脳のことはほとんど未知の領域で、人間が脳を使ってどのように考えるか知る手段がありませんでした。それまでは一般的に、脳は全体でひとつのものだと漠然と考えられていました。

ところが1860年代にフランスのポール・ブローカが失語症の患者さんの解剖をもとに左前頭葉の言語機能について報告しました。この研究により、脳の機能が全体で均一な訳ではない事が分り、脳機能局在論の最初のくさびが打たれました。

次の大きな歴史的転換点は1930年代にワイルダー・ペンフィールドがカナダのモントリオールで行った研究でした。

脳外科手術を行う患者さんの術前に、頭蓋骨を覚醒したまま開けて、その場で電気刺激を与えながら起こる現象を観察しました。この研究では特定の部位の刺激で特定の記憶がよみがえったり、運動や感覚が脳の細かい部位毎で分かれている事が証明され、脳の機能局在がより細かい脳の地図で出来上がっている事が予想されました。

脳機能局在論だけでは、高度な人間の心理や判断の理解は出来ません。ですから脳機能局在論は万能ではありませんが、それでも人類の脳の機能の理解に劇的な進歩を与えたのです。

 

◆てんかん発作と脳機能局在論

てんかんの発作では、例えばブローカ野(ことばを話す領域:左前頭葉の一部)の発作では聞こえる言葉は理解出来るのに、意味のある文を話せなくなるという症状が出ることがあります。

ウェルニッケ野(ことばを理解する領域:左側頭葉の一部)の発作では音としては声を認識しているのに話の内容が理解出来ないことがあります。

運動野(両側の前頭葉の後部)の発作では手の領域から腕、肩の領域へと発作が移動するにつれて体もその部位がけいれんを起こします。

視覚野(後頭葉の後端)の発作では単純に目の前が黒くなったり白くなったりするものや、幻覚だけを見たり、目の前の人が沢山に分身したように見える発作を起こすこともあります。

また右前頭葉の発作は広い範囲で出ても自分の意識や思考がほぼ保たれている事もあります。

脳機能局在論を理解することはてんかんの理解に大きく役立ちますし、逆に私たちてんかんを診る医師にとって、脳はどのように働いているのかを考えさせる哲学的な刺激も与えてくれます。

このようにてんかんは脳の病気の中でも極めて脳の機能が複雑に絡み合う病気です。また脳波や画像検査の結果に対する解釈が、医療の中でも長年のトレーニングが必要な領域です。もし中々治療が上手くいかない方がいる場合は、てんかんを専門的に診療している医師に一度相談されるとよいと思います。

執筆者

岡西 徹

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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