2015.11.02 | ニュース

外傷性脳挫傷に低体温療法を行っても機能回復は改善しない

ランダム化比較試験により検証
from The New England journal of medicine
外傷性脳挫傷に低体温療法を行っても機能回復は改善しない の写真
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外傷性脳挫傷では、体温を低く保つ治療法(低体温療法)により頭蓋内の圧を減らすことができます。今回の研究では、低体温療法を行うことでその後の身体機能にどのような効果があるか検証しました。

◆低体温療法を行う群と対照群にランダムに振り分け

頭を強く打つなどで、脳が物理的に傷ついたとき(外傷性脳挫傷)、脳が腫れて体積が大きくなり、頭蓋骨の中の圧(頭蓋内圧)が上がることがあります。頭蓋内圧が高い状態では脳や神経がさらに圧迫され、ダメージが深くなってしまい、致命的な状態に陥ることがあります。

低体温療法は、体温を32℃から35℃付近に調整し、頭蓋内圧を下げる治療法で、脳の保護を目的に行われるものです。

今回の研究では、外傷性脳挫傷に通常の治療を行ったにも関わらず、頭蓋内圧が20mmHgより高い患者387人を、32℃から35℃の低体温療法を実施する群と対照群にランダムに分けました。

次に、対照群では必要に応じて高張液注射療法などを、低体温療法群では、低体温療法だけで頭蓋内圧の管理ができなかった場合に高張液注射療法などを行いました。最後に、どちらの群でも頭蓋内圧の管理ができなかった場合に、抗てんかん薬と減圧開頭術を行いました。

 

◆低体温療法を行うと機能障害がより悪くなる

以下の結果が得られました。

GOS-Eスコアに対する調整済みオッズ比は1.53(95%信頼区間1.02-2.30、p=0.04)であり、対照群よりも低体温療法群で機能がより悪くなることを示した。

低体温療法を行うと、行わない場合と比べて、機能回復の程度が悪いという結果でした。

 

過去の研究では、低体温療法が頭蓋内圧を下げると言われていましたが、今回の研究では機能障害への効果は見られませんでした。 低体温療法は、救急でのいくつかの場面で勧められていますが、外傷性脳挫傷に対して適切かどうかは確立されていません。さらに研究が重ねられ、低体温療法の意義が検証されていくかもしれません。

執筆者

Shuhei Fujimoto

参考文献

Hypothermia for Intracranial Hypertension after Traumatic Brain Injury.

N Engl J Med. 2015 Oct 7

[PMID: 26444221]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。