2019.04.09 | コラム

子どもが頭をぶつけた!病院に行った方がいいの?

病院に連れて行かず、家で様子を見て大丈夫なケースも多いです
子どもが頭をぶつけた!病院に行った方がいいの?の写真
(c) iuricazac-Fotolia.com

多くの親御さんは「子どもが頭をぶつけた!」という経験があるかと思います。強めにぶつけていれば「病院に連れて行った方がいいかも・・・」と心配になるものです。実際に頭のケガが深刻であれば、後遺症をのこしたり命に関わったりすることもあるのですぐに受診したほうが良いのですが、そうでなければ家で様子を見て良いケースが多いです。
このコラムでは、実際に多くのお医者さんが参考にしている基準を踏まえて、医療機関に行くべきかどうかの目安を解説します。

1. 子どもは頭をぶつけやすく、ケガに弱い

子どもは大人よりも頭でっかちなので、重心が高くてバランスが悪く、転ぶと頭を打ちやすいです。また、注意力が散漫で視野も狭いので、色々な場所で頭をぶつけます。立ち上がって歩くようになる1-2歳児は最も頭のケガが多い年代です。子どもの頭は大人よりもケガに弱いため、大人とは異なる基準でお医者さんは診ています。野原しんのすけのような石頭はマンガの世界だけの話なのです。

 

2. どの程度のケガならば病院に行くべき?

子どもの頭のケガについて考えるとき、2歳未満か2歳以上かという点がポイントになります。2歳未満ではケガによって頭の中に出血する危険性が特に高いからです。

2歳未満の子どもが頭をぶつけた時、以下のうち1つでも当てはまるものがあれば、すぐに受診してください。なお、受診前に子どものケガに対応している医療機関かどうか電話で問い合わせるほうが良いです。あるいは以下の症状があれば救急車を呼んで構いません。

 

【受診の目安:2歳未満の子どもの場合】

  • 親から見ていつもと様子が違う、ぼんやりしている/活気がない
  • 5秒以上意識を失っていた(ケガをしてすぐに泣き出さない)
  • 目の周りや耳の後ろにアザがある、鼻や耳から液だれがある
    (頭蓋骨の底を骨折している時に見られるサイン)
  • 頭をよく触ってみると骨が折れているのが分かる
  • 強い力が加わったケガである
    (90cm以上の高さから落下したくらいが「強い力」の目安)
  • おでこ以外にたんこぶがある

 

2歳以上では成長してきて頭の作りが次第に大人に近づいてきており、2歳未満よりはやや頑丈です。2歳以上の子どもが頭をぶつけた時、以下のうち1つでも当てはまるものがあれば、すぐに受診してください。

 

【受診の目安:2歳以上の子どもの場合】

  • 親から見ていつもと様子が違う、ぼんやりしている/活気がない
  • 目の周りや耳の後ろにアザがある、鼻や耳から液だれがある
    (頭蓋骨の底を骨折している時に見られるサイン)
  • 強い力が加わったケガである
    (1.5m以上の高さから落下したくらいが「強い力」の目安)
  • 強い頭痛がある
  • 吐いている

 

これらの状況に当てはまらなければ、家で様子を見ていてもほとんどのケースで問題ないことが分かっています。実際に医療機関でも、このような状況でなければ診察以外の検査は行わないことが多いです。しかし、様子を見ていたらぐったりしてきたなどの異常が現れたら速やかに受診してください。

 

3. 病院で行われる検査は?

頭のケガで受診した時、医療機関で行われる主要な検査は頭部CT検査です。放射線を利用して頭の中身を輪切りの写真で見ることができ、頭蓋骨に骨折がないか、頭蓋骨の中に出血がないか、などが分かります。レントゲン検査は頭蓋骨に大きな骨折がないかどうかくらいしか分からないので、あまり行われません。そのため、頭を強く打って心配という場合には頭部CT検査が救急で受けられる医療機関を受診してください。

 

4. CT検査は被曝するけれども大丈夫?

放射線を使う検査、と聞くと被曝の影響を心配する人も多いと思います。結論から述べると、1回や2回くらい頭部CT検査を受けても過度の被曝の心配は不要です。

撮影する部位によって異なるのですが、CT検査では単純レントゲン検査の10倍や100倍といった量の被曝があります。頭部への被曝では主に眼や甲状腺への悪影響が懸念されます。また、子どもは大人よりも被曝による悪影響を受けやすいことが分かっています。なので、医療機関でも前述の【受診の目安】で書いたような基準を参考にして、大きい骨折や脳の出血などがあまり疑われない場合には頭部CTを撮らないようにしています。

しかし、頭部CT検査による被曝の影響を心配しすぎる必要はないのです。1回や2回の頭部CT検査で受ける被曝量は、身体への影響が出てくる放射線量よりもずっと少ないからです。(もちろん毎日頭部CTを受ければ影響が心配になりますが。)

結論として、CT検査による被曝の影響はほとんど心配無用だが、不要な検査による被曝はあまり気持ちの良いものではないので、頭の中で重大なことが起こっている可能性がありそうな時だけ行うようにする、というのが一般的なスタンスです。

 

5. 皮膚に傷がある場合は?

頭を打った拍子に傷ができることがあります。軽いスリ傷など以外は受診が必要です。深い傷は自分で対応することは難しく、縫ったり、テープを貼ったり、頭皮であれば髪の毛で傷口を寄せたり医療用ホッチキスで止めたりする治療をしなくてはいけません。こうした処置を行うかどうかの判断は医療者以外には難しいので、迷った時には受診をしてください。(受診の目安はこちらのコラムを参考にしてください。)

処置はできれば外科のお医者さんにしてもらった方が良いです。顔の傷など目立つ傷であれば、形成外科(整形外科とは違います)のお医者さんに処置してもらうと傷跡が残りにくく上手に縫ってもらえますが、救急で受診して形成外科医が対応できる病院はかなりまれです。大学病院などでは対応していることもありますが、形成外科にこだわり過ぎず、早めに受診しておくのが無難かと思います。

なお、傷口は消毒せずに水道水で十分に流してください。水道水で傷口の汚染を流せますし、消毒薬をつけると傷口の治りが遅くなることが分かっています。

 

6. 血が出た時はどうする?

傷口から出血しているときには、慌てずよく水道水で洗い流し、清潔な布でしっかりと傷口を圧迫してください。5分もしっかり圧迫していればほとんどの出血は止まりますし、病院でもまず行う止血法は圧迫です。途中で「止まったかな?」と思って傷口を見てしまうと、圧迫が解除されてなかなか止血できません。少なくとも5分は押さえ続けるのがポイントです。

ただ、なかなか血が止まらないくらいのケガであれば、医療機関を受診してください。

 

ここまで、子どもが頭を打った時に医療機関に行くべきかどうかの目安について説明しました。

前述の【受診の目安】にも当てはまらないならば、99.9%以上の場合で自宅で様子を見て大丈夫、というデータがあるのですが、ケガをした後24時間ほどはいつもより慎重に子どもの様子を見てあげてください。

また、どんな名医でも実際にケガをした子どもを診ないで「大丈夫」と言い切ることは不可能です。ケガをしたのが頭であれば必要以上に心配してしまうのが親心であり、このコラムはそんな親の心の負担を少しでも減らせれば、という思いから書いています。とはいえ、それでも心配な場合にはためらわず病院を受診してください。受診する場合にはあらかじめ医療機関に電話をして、必要に応じて頭部CT検査や傷の縫合などの処置をしてもらえるかを確認すると安心です。

 

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。