脳震盪を起こしたあとは、どのくらい運動を制限しなければいけないのか

頭をぶつけるなどして脳震盪が起こると、意識を失うなど神経の症状が一時的に現れます。脳損傷や頭蓋内出血に至らない限り、経過観察で症状は消え、もとの生活に戻れる場合がほとんどです。最近の研究では、脳震盪のあとはあまり厳しい運動制限をする必要もないと考えられています。アメリカの研究班が、22歳以下で脳震盪が起こった人を対象にした研究から、厳しい運動制限をしても回復が促されることはなかったと報告しました。
◆11歳から22歳が対象
研究班は、11歳から22歳で脳震盪と診断された人を対象に、5日間厳しい運動制限をした場合と、通常どおり1日から2日の安静ののち徐々に日常生活に戻った場合とで、退院後に神経機能などの回復の度合いに違いがあるかどうかを調べました。
◆厳しく制限したほうが悪い可能性も
次の結果が得られました。
99人の患者が登録された。88人がすべての研究の過程を終えた(45人が介入群、43人が対照群)。
神経認知機能とバランス機能の帰結に、臨床的に
有意 な差はなかった。ただし、介入群では日常生活での脳震盪後症状がより多く報告され(受傷後10日間の総症状スコアが187.9、対照群で131.9、P<0.03)、症状の解消がより遅かった。
厳しい運動制限をしたグループと通常のケアのグループで神経機能などに違いは見られず、10日後までに現れた症状は厳しい運動制限のグループでむしろ多くなっていました。
研究班は「青少年に対して脳震盪直後の厳格な安静を勧めることは通常のケアに加えて利益をもたらすことがなかった」と結論しています。
脳震盪はスポーツのときなどに起こることも多く、突然子どもが意識を失うと家族の方は不安になるかもしれませんが、退院してからはそれほど神経質にならなくてよい場合が多いようです。
執筆者
Benefits of strict rest after acute concussion: a randomized controlled trial.
J Pediatr. 2015 Jul
[PMID: 25560444]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。