2015.10.12 | ニュース

尋常性天疱瘡の原因に関係が?糞線虫、ピロリ菌の感染

249人の横断研究

from International journal of dermatology

尋常性天疱瘡の原因に関係が?糞線虫、ピロリ菌の感染の写真

天疱瘡(てんぽうそう)は、免疫の異常により、皮膚や口の粘膜に水ぶくれができる病気です。原因は不明ですが、イランなどの研究班から、感染症との統計的な関連を調べた結果が報告されました。

◆感染症を検索

この研究は、天疱瘡の細かい種類のうち最も患者が多い尋常性天疱瘡について調べました。尋常性天疱瘡の患者118人と、健康な131人の対象者を比較して、糞線虫、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、EBウイルス、リーシュマニア原虫、トキソプラズマの検査が行われました。

 

◆糞線虫、ピロリ菌と関連あり

次の結果が得られました。

新たに診断された未治療尋常性天疱瘡の患者は、対照群と比べて糞線虫またはヘリコバクター・ピロリのIgG抗体が血清陽性である率が有意に高かった(糞線虫について69.5% vs 16.0%、P<0.001、ヘリコバクター・ピロリについて79.3% vs 59.5%、P=0.004)。

まだ治療を受けていない尋常性天疱瘡の患者では、天疱瘡がない人に比べて、糞線虫またはピロリ菌の抗体を持っている割合が大きいという結果でした。

研究班は「糞線虫およびヘリコバクター・ピロリの血清陽性率と未治療疾患の有意な関連は、これらの病原体が尋常性天疱瘡の病態発生に寄与するかもしれないという仮説を導く」と述べています。

 

感染症が引き金になって免疫の異常が起こると考えられている病気が、ほかにいくつかあります。ここで示された関連は、天疱瘡の原因を解明するための手掛かりになるかもしれません。

ただし、この研究はひとつの時点だけを調べる方法でなされているため、天疱瘡が原因で感染が起こるなどの可能性も考えられ、より進んだ推論のためにはほかの研究が必要です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Frequency of seropositivity against infectious agents amongst pemphigus vulgaris patients: a case-control study on Strongyloides stercoralis, Helicobacter pylori, Toxoplasma gondii, Leishmania major, and Epstein-Barr virus.

Int J Dermatol. 2015 Jul 14 [Epub ahead of print]

[PMID: 26175264]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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