2015.09.02 | コラム

副作用を否定することはできない〔論文の読み方シリーズ〕

副作用と有害事象
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ニュースで「副作用の可能性を否定できない」という表現を見たことがあるかもしれません。これはどういう意味でしょうか。どうしてこんな回りくどい言い方をするのでしょうか。

◆副作用と有害事象

熱が出て薬を飲んでいたとします。仮に「ネツサメール」という薬だとしましょう。ネツサメールを飲んでいたらなんだか頭が痛くなってきました。副作用でしょうか?

副作用かもしれませんし、そうではないかもしれません。熱が出る病気で頭痛も出ることはよくありますし、熱が出ていないときでも頭痛がして困ることはありますね。

この頭痛のように、薬を飲んでいるときに現れた症状などのことを研究論文では「有害事象」と言います。ネツサメールを飲んでいるときに咳が出ても有害事象、鼻水が出ても有害事象、熱がさらに上がっても有害事象です。有害事象には副作用が含まれているかもしれませんが、もともとあった病気の症状も含まれているかもしれません(なので、重い病気の研究ほど、深刻な有害事象が数多く報告されます)。

ネツサメールの頭痛のように、有害事象が副作用なのか、そうでないのかは区別できないことがよくあります。そう、この頭痛は「副作用の可能性を否定できない」のです。

 

◆症状はたまたま出たり出なかったりする

病気はたまたま治ったり治らなかったりするので、薬が効いたかどうかは飲んだときと飲まなかったときを比べてみなければわかりません。ネツサメールを飲むと熱が下がるのか、調べてみるとこんな結果だったとします。

  下がった 下がらなかった
飲んだ 5 0
飲まなかった 1 4

飲んだ人は全員熱が下がっていますが、飲まなかった人で下がったのは1人だけですね。この1人は、薬に関係なく、自然に治ったのかもしれません。その場合を含めても、ネツサメールが効いていそうに見えます。

副作用も同じです。出ることと出ないことがあり、飲んだときと飲まなかったときを比べてみなければ、薬に副作用があるかどうかはわからないのです。ネツサメールを飲むと頭痛の副作用があるのかも調べてみました。

  頭痛が出た 出なかった
飲んだ 3 2
飲まなかった 2 3

頭痛はネツサメールの副作用でしょうか?

確かにネツサメールを飲んでいたら頭痛が出た人は3人いますが、飲まなくても2人で頭痛が出ています。「1人増えてるじゃないか」と思うかもしれません。その「増える」ことこそが副作用です

この例では増えた数が少ないため、統計的に「たまたまかもしれない」という範囲に収まっています。ネツサメールに頭痛の副作用があるとは言えませんが、ないとも言えません。熱が下がったかどうかを見たときのように、飲むか飲まないかではっきりとした違いがあったときに初めて「副作用があるようだ」と判断できます。

 

◆印象の強い症状は副作用と感じられやすい

でも、ネツサメールを飲んでいた人が、ある日土を食べ始めたら、どう思いますか?

これは数えるまでもなく副作用に決まっている、と思えるかもしれません。表で言うと、「飲まなかった・土を食べた」の数はゼロに決まっている、ということです。

ところがそうでもないのです。土などを食べてしまう「異食症」という症状は、貧血の人などでときどき起こります。一見変わった症状でも、やはり飲んだときと飲まなかったときを比べてみないと、薬のせいかどうかはわからないのです。

こうした印象の強い症状が見つかったとき、報道で「副作用の可能性を否定できない」として紹介されることがあります。確かに否定はできませんが、副作用ではない可能性についても情報がなければ公平ではありません。

副作用は、薬を飲まなければ避けられたという面で、もともとある病気の症状とは感じられ方が違います。だから「副作用かどうかはっきりしなくても、疑いがある薬はできれば使いたくない」と思うのは自然なことです。だからこそ、副作用と感じられやすい症状について十分な情報があり、変わったことがあっても「副作用かも」という心配を和らげられるのが大事なのではないでしょうか。

執筆者

大脇 幸志郎

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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