「飲んだ、治った、効いた」は要注意!〔論文の読み方シリーズ〕

医学論文を読むのは大変です。人体のしくみや病気の知識はもちろん、研究の結果をどう解釈するかにも悩まされます。論文を読んでいる中で出会う、日々の生活にも応用できる、初歩的な統計学の考え方を紹介します。
◆飲んで治った人が本当にいたら?
「○○を飲んだら××が治った!」という怪しい治療法の宣伝を見たことがある方は多いと思います。こうした文を見たとき、「効くのかな」と思いますか?それとも「嘘だろう」と思いますか?
どちらも思う壺じゃないかな、と僕は思います。
「嘘だろう」と思ったときに、本当に「飲んで治った」人が目の前に現れたらどうでしょうか?証拠になりそうな写真や検査データがいろいろ出てきても、白衣を着た賢そうな人が「なぜ効くか」を詳しく説明してくれても、テレビでコメンテーターが「私もこれ飲んでよくなったんですよ」と言っても、やっぱり嘘だと思いますか?
残念ながら、これでは十分な証拠とは言えません。専門用語で言うとコントロールがないのです。
◆コントロールとは?
コントロールとは、比較になるもののことです。中学校の理科でよく出てくる「対照実験」はコントロールを作るための実験です。上の例で言うと、「飲まなかったら治らなかった」人が出てこなければ、いくら「治った」が確かでも、「効いた」かどうかはわかりません。飲まなくても治るなら、飲んで治っても、効いたとは言えません。
実際にはたいてい、何もしなければ普通は治らないだろうと思える病気が話題になっていますね。そこでもう少し詳しく言うと、たとえば「○○を飲んだら
コントロールは注目した点(飲むか、飲まないか)以外の条件がすべて同じでなければ、正確な比較になりません。治りそうな人が飲んで治り、治りにくそうな人が飲まなくて治らなかったとしても、やはり効いたかどうかはわからないのです。
「飲んだ、治った、だから効いた」は間違いです。「飲まないと治らないのか?」を確かめるために、研究者はいろいろな工夫をします。大事なのは適切なコントロールと比較するということです。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。