2015.09.10 | コラム

病気の原因はひとつではない〔論文の読み方シリーズ〕

交絡とは
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病気の原因になる食べ物が気になったことはありますか?「○○を食べる人には××病が多い」という情報はよく見かけますが、ほかの原因で説明がつくこともよくあります。どうやって見分ければいいのでしょうか。

◆なぜ、がんが少ないのか?

仮に1000人の人を調べたら、スマートフォンの画面を見ている時間が週10時間を超える人には、がんがある場合が少なかったとします。表で言うとこうです。

  がんがある がんがない
スマホ≦10時間/週 50 690 740
スマホ>10時間/週 2 258 260
52 948 1000

これは仮定の話です。実際に調べた結果ではありませんので、以下の話も実際にがんがどんな人に多いかとは関係ないという点にご注意ください。

スマートフォンをあまり使わない人では数%(50/740)にがんがありますが、よく使う人では1%未満(2/260)ですね。この違いは統計的にたまたまではなさそうな量です。スマートフォンはがんを予防するのでしょうか。

「そんなはずはない」と思った方は、何がおかしいのか説明できますか?

ひとつの時点だけを見てもわからない」と思った方、ごもっともです。これではスマートフォンががんを防ぐ原因なのか、がんがスマートフォンを使わなくする原因なのか、区別できません。がんの治療で入院していたら、スマートフォンを使わなくなるかもしれないですね。

でも、入院中にすることがなくてスマートフォンを見ている人もいるのではないでしょうか?もしかしたら、スマートフォンのヘルスケアアプリを使って健康的な生活をすることで、がんが予防できるかもしれません。あるいは、スマートフォンを使いこなす活動的な生活そのものが、がんを予防する健康的な習慣だったのかもしれません。いやいや、スマートフォンから出ている微弱な電波が、知らないうちにがん細胞を殺してくれているのかもしれません。

そんなはずはないですね。

こうなる理由はおそらく、スマートフォンを使っている人は若い人が多く、若い人にはがんが少ないためでしょう。年齢別に調べるとこうなっていました。

40歳未満 がんがある がんがない
スマホ≦10時間/週 1 249 250
スマホ>10時間/週 1 249 250
2 498 500

40歳未満の人では、スマートフォンをよく使う人でも、使わない人でも、がんの頻度は1/250です(実際のデータではありません。これは仮定の話です)。40歳以上の人ではこうでした。

40歳以上 がんがある がんがない
スマホ≦10時間/週 49 441 490
スマホ>10時間/週 1 9 10
50 450 500

スマートフォンをよく使うかどうかによらず、がんの頻度は1/10ですね。40歳未満、40歳以上のどちらでも、スマートフォンとがんには関係がないという結果ですが、2つの表を足すと最初の表になってしまいます。

  がんがある がんがない
スマホ≦10時間/週 50 690 740
スマホ>10時間/週 2 258 260
52 948 1000

繰り返しになりますが、この数字は説明のために仮定の話として作ったもので、実際に調べた結果ではありません。けれども、実際のデータを見ても、このようなことはよく起こります。

 

◆共通の原因はいつもどこかにある

上の例のように、2つのことに共通の原因があるとき、実際は因果関係がなくても、関係がありそうに見えてしまうことがあります。この効果を交絡(こうらく)と言います(正確にはもう少し厳しい定義があります)。

交絡を起こす原因、上の例で言うと年齢のことを交絡因子と言います。

すべてのことには原因がありますから、交絡因子は何をどうやって調べても必ずどこかにあると言えます。たとえばこんな研究では交絡によく注意して結果を見ないといけません。

「コーヒー愛飲者に肺がんが多い理由は?生活習慣との関連を検証」

http://medley.life/news/item/5589521b660815fe00d5ec8e

コーヒーをよく飲む人に肺がんが多かったからと言って、コーヒーが肺がんの原因だとすぐに決めつけることはできません。「コーヒーやタバコに囲まれた生活」という共通の原因があったようです。

交絡が特にデータの見た目を変えてしまいやすいのは、対象者が均一になるように選ばれていないときです。こんな例があります。

「子どもの睡眠の質には血液の中の亜鉛の濃度が関係している?」

http://medley.life/news/item/55b72b57b5d46e4d0160576a

一見、亜鉛が睡眠の質に影響しているようにも見えますが、血液に亜鉛が少なかった子どもと多かった子どもで、ほかの特徴が均一だったかどうか、たとえば食習慣に違いがなかったかはわかりません。もし食習慣が偏っていて全体として栄養状態が悪い子どもに亜鉛が少なかったと想像するなら、そういった子どもの睡眠の質が悪いのは全体として生活が不規則になりがちだからではないか、という考えも浮かんできます。こういった別の原因ではなく、確かに亜鉛が睡眠の質の原因なのだと示すのはとても難しいことです。

 

大切なのは「ほかの原因もあるのではないか?」という視点をいつも忘れないことです。病気の原因はひとつではないのです。

執筆者

大脇 幸志郎

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。

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