脂肪肝による肝硬変から肝臓がんに移行する確率は?

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は肝硬変の原因になり、さらに肝細胞がんに進行する可能性があると言われています。今回は、どのくらいの割合で肝細胞がんまで進行するか検証した2010年の論文を紹介します。
◆慢性C型肝炎または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と肝細胞がんの関連性を検証
今回の調査は、慢性C型肝炎による肝硬変の患者315名と、NASHによる肝硬変の患者195名を対象に、肝臓にできるがんの中でも代表的な肝細胞がんへの進行がどの程度あるかを調べるために、6ヶ月ごとに腹部CTと血液マーカーによる検査を行いました。
◆NASHから肝硬変になった患者のうち12.8%が肝細胞がんに
調査の結果、以下のことを報告しました。
25/195(12.8%)がNASH後の肝硬変から肝細胞がんに、64/315(20.3%)が慢性C型肝炎後の肝硬変から肝細胞がんに進行し(P=0.03)、追跡期間の中央値は3.2年(第一四分位、第三四分位:1.7、5.7)であった。
NASHから肝硬変に移行すると、その後肝細胞がんに進行するリスクが大きくなりました。
筆者らは、C型肝硬変の患者と同様、「NASH肝硬変の患者では、肝がんのリスクが大きく増える。」と述べています。
今回の論文は、NASHと肝細胞がんの関連性を検証したことで、『NAFLD/NASH診療ガイドライン2014』でも引用されています。これまで、NASHと慢性腎臓病など他の疾患との関連についても紹介してきましたが、肝細胞がんとの関連にも注意が必要かもしれません。
このような論文が積み重なり、より多くの面が検証されることで、さらに役立つ情報となるのではないでしょうか。
執筆者
The incidence and risk factors of hepatocellular carcinoma in patients with nonalcoholic steatohepatitis.
Hepatology. 2010 Jun
[PMID: 20209604]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。