脱水予防のための適切な水分摂取方法〔小児科に行く前に〕
お子さんが胃腸炎や風邪のときになかなか水分が取れず、脱水にならないか心配になることが多いと思います。水分摂取のポイントを知っておくと、慌てずにすみます。そして、脱水の時の見逃してはいけないポイントをご紹介させていただきます。
まずは、なかなか水分摂取がうまくいかない時のポイントを4つほどお伝えします。
- 吐いた後は、飲んだり食べたりするのを我慢して、その後1〜2時間してから、水分をスプーン1杯程度から開始してください。その後も15分くらいあけながら、少量を何度もあげるようにしてください。
- 塩分、カリウムの含まれたものを摂取することが大事です。経口補水液であるOS-1が薬局などで市販されています。塩分が多く、糖分が少なく初期には今のところ最もすぐれた飲料です。
- お茶やお水は吸収が悪いので、初期は飲ませないでください。コンビニなどどこでも購入できるイオン飲料も塩分が少なく吸収が悪いので、初期にはふさわしくありません。
- 上記の方法をとっても4、5回嘔吐が続く場合、ぼんやりして眠りがちな状態が続く場合は、脱水が強い可能性がありますので医療機関を受診してください。
この4点を知っておくと、自宅で安心して対処できると思います。
次にこどもの体の特徴、脱水のときの見るべきポイントなどを詳しく解説していきます。
◆子どもの体の特徴と脱水の判断のポイント
こどもの体は大人に比べて必要とする水の割合が高く、体内の水分を調節する機能も未熟なため、脱水状態に陥りやすいのが特徴です。水分が失われていく状況(嘔吐下痢症、発熱時、発汗が多いとき)では、お子さんの状態をよく観察して、失われた水分や塩分(
- 高熱がある
- 1日6回以上の多量の下痢がある
- 嘔吐が続いている
- 皮膚、唇、口腔内、舌が乾燥している
- 泣いても涙が出ない
- 目が落ちくぼんでいる
- 皮膚に張りがない
- 機嫌が悪い
- ぼんやりして、眠りがち
- 顔色が悪い
- おしっこの量、回数が少ない、おしっこの色が濃い
このような症状がある場合には脱水症状が強い場合がありますので、早めに医療機関を受診してください。高度の脱水症状に陥らないために、適切な水分摂取を行ってください。
では、どんな水分を取ればいいのでしょうか。
体液の成分である電解質(ナトリウム、カリウムなど)が入った水分を摂取しましょう。お茶、麦茶、真水などは吸収が悪いため、有効に水分摂取ができない場合があります。体外に出て行った水分と似た性質をもつ水分の摂取が必要です。
電解質の入った飲み物として、スポーツドリンク、イオン飲料などがあります。まったく電解質の入っていないものに比べれば、吸収は良いのですが、電解質の量は十分ではありません。脱水予防に飲むものとしては不適切かもしれません。
脱水症状がある場合には、一般に「経口補水液」と呼ばれるものを飲ませるのが一番有効です(参考までに大塚製薬から「OS-1:オーエスワン」というものが発売されています)。保険調剤薬局などで取り扱っている場合が多いですが、どうしても手に入らない場合にはご自宅でも作ることができます。
◆経口補水液の作り方
一度沸騰させた水1リットルに対し、塩小さじ1/2杯(3g)、砂糖大さじ4と1/2杯(40g)、できれば砂糖は
◆どのような水分をどのように飲ませたらいいの?
乳幼児の場合、体重1kgあたり1日50〜100ml、つまり5kgのお子さんは250〜500ml、10kgのお子さんは500〜1000mlが目安です。
嘔吐、下痢のときは腸の動きが悪く、吸収が悪い状態になっています。嘔吐した直後はすぐに水分や固形のものは与えず、口をすすぐ程度がいいと思います。
その後、1〜2時間してからゆっくりと分摂取を始めてください。3〜4時間はあわてずにゆっくりを心がけましょう。
最初は、ティースプーン1杯(約5ml)から始め、これを15分おきに飲ませてください。急にたくさん飲ませてしまうと更に腸の動きが悪くなり、症状を悪化させてしまう場合があります。根気強く少量ずつ与えてください。
1時間くらい続け、症状の悪化がないことを確認できたら少しずつ1回量を増やし、先ほどお伝えした1日の水分量を摂取できるようにしましょう。
食事については、水分が十分に摂取できてからでかまいません。経口補水液には糖分がありますのでそのカロリーで十分です。水分が取れ、おしっこが十分に出るようになったら少しずつ食事を開始しましょう。
お子さんにとって自宅でケアしてあげることが一番負担が少なく効果的です。すぐに点滴に頼るのではなく、お子さんの状態を観察しながらケアしてあげることがお子さんにとって、とても安心できる環境なのです。
【編集部注】
この記事は、「キャップスクリニック」のサイトで公開中の記事をもとに作成しています。
執筆者
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。