重症熱中症の集中治療、持続的血液浄化療法で治癒率改善

重症の熱中症(熱射病)では、脱水に加えて腎臓などの働きが悪くなり、血液中の物質のバランスが崩れてしまうことがあります。この治療として、血液の成分を透析のようにコントロールする持続的血液浄化療法という方法がありますが、どんな場合に使われるべきかは確立されていません。中国の研究班が、重症の熱中症患者に必ず持続的血液浄化療法を行うようにすると、行わないときに比べて治癒率が改善したことを報告しました。
◆40人の熱中症患者をランダム化
研究班は、次のようにして持続的血液浄化療法の試験を行いました。
2010年6月から2013年8月の間に、重度の熱中症の患者40人(28人が男性で12人が女性)が、研究拠点とした病院の
ICU に受け入れられた。患者は治療群(21人、15人の男性と6人の女性、平均年齢32.9歳)と対照群(19人、13人の男性と6人の女性、平均年齢33.1歳)にランダムに割り付けられた。
重度の熱中症でICU(集中治療室)に送られてきた患者40人を、酸素吸入や冷却など通常の治療を行うグループ(対照群)と、通常の治療に加えて持続的血液浄化療法を行うグループ(治療群)にランダムに振り分けました。治療群ではウリナスタチンという急性膵炎などの治療に使われる薬剤を併用しました。
◆持続的血液浄化療法で治癒率向上
それぞれの治療から次の結果が得られました。
治療群で18人が
治癒 し、1人に軽度の神経学的異常の後遺症があり、2人が死亡した。治癒率は90.48%だった。対して、対照群では12人の治癒、3人に軽度の神経学的異常の後遺症、4人の死亡があり、治癒率78.95%だった。
対照群では治癒率78.95%だったことに対して、治療群では治癒率90.48%と改善していました。
研究班は「ウリナスタチンを併用した持続的血液浄化療法は熱射病の治療に有効であり、さらに進んだ調査を行うべき根拠がある」と結論しています。
持続的血液浄化療法を積極的に行ったほうが、全体として効果がある場合が多かったのかもしれません。ただし、治療による悪い影響がないか、重症度などによって効果が違わないかといった点が今後研究を進めるうえでの課題になるかもしれません。
急な熱中症に素早く適切に対処するための情報が、今後も望まれます。
執筆者
Clinical effectiveness of continuous blood purification in combination with ulinastatin in treating thermoplegia.
Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2014 Nov
[PMID: 25491622]
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。