2015.05.17 | ニュース

戦争から帰ってきた人の子どもには、虐待による受診が増える

米軍データベースから解析
from Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry
戦争から帰ってきた人の子どもには、虐待による受診が増えるの写真
(C) Andriy Petrenko - Fotolia.com

戦地で戦って帰ってきた人が、身体の負傷だけでなく、メンタルの問題を抱えることがあります。戦争の影響は戦った本人だけでなく、その家族にも及ぶかもしれません。アメリカの研究で、親が戦地に配備された場合、その子どもが医療機関を受診する回数などに影響があるかが検討され、子どものメンタルヘルスなどによる受診が増えていたことが報告されました。

◆約50万人の子どもの記録から解析

研究班は、米軍の配備人数が多かった2006年から2007年にかけて、米軍健康管理システムのケア対象となっていた3歳から8歳の子ども487,460人の受診状況と、親の配備または戦闘での負傷に関連があるかどうかを調べました。

 

◆親が戦闘で負傷していると、虐待による受診が2.3倍に

解析の結果、以下のことがわかりました。

対象となった子どものうち、58,479人(12%)の親が配備され、5,405人(1%)の親が配備中に負傷していた。

両親とも配備されていなかった子どもに比べて、親が配備された子ども、親が戦闘で負傷した子どもは、メンタルヘルスの診断のため(それぞれ発生率比1.09 [95%信頼区間1.02-1.17]、1.67 [95%信頼区間1.47-1.89])、負傷のため(それぞれ発生率比1.07 [95%信頼区間1.04-1.09]、1.24 [95%信頼区間1.17-1.32])、配備終了後の虐待のため(それぞれ発生率比1.21 [95%信頼区間1.11-1.32]、2.30 [95%信頼区間2.02-2.61])、受診した数が多かった。

このように、親が配備されていた場合や、戦闘で負傷していた場合には子どもの受診が多く、子どもが虐待で受診する割合は、特に親が戦闘で負傷したあとでは親が配備されていなかった場合の2.3倍になっていたという結果でした。

この結果から、研究班は「親が配備から帰ってくるときには子どものための予防と介入のサービスを強化する必要がある」と述べています。

 

戦争は、戦地にいる兵士だけでなくその子どもまで傷つけることになるのでしょうか?これはアメリカの研究であり日本では状況は同じではありませんが、考えさせられる報告です。

執筆者

大脇 幸志郎

参考文献

Impact of parents' wartime military deployment and injury on young children's safety and mental health.

J Am Acad Child Adolesc Psychiatry. 2015 Apr

[PMID: 25791146]

※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。