◆早期のリハビリテーションはなぜ勧められているの?
長期にわたり体を動かさないことによって、筋力低下や、関節が硬くなるなどの廃用症候群を来たしてしまうため、十分なリスク管理を行った上で早期からリハビリテーションを行うことが推奨されています。
日本の脳卒中ガイドラインでは、患者の状態にはよるものの、24〜48時間以内に寝返りや座る練習などを行うと良い結果が得られた報告の記載があります。
◆2,104人を対象に分析を行う
今回の研究の対象者は、「初発もしくは再発の虚血性もしくは出血性の脳卒中患者(18歳以上)」であり、発症後に通常の介入に加えて、超早期に介入する超早期介入群と通常の介入を行う対照群に、障害の程度をもとにランダムに、振り分けられました。
超早期に行うリハビリテーションの効果を調べるために、超早期介入群と対照群で発症後3か月の障害の程度を計測し、介助なく生活できていた「結果良好」な人の割合を調査しました。評価者はどちらの治療が行われているかについては知らされていません。
◆超早期リハビリと通常リハビリに改善の差なし
調査結果は以下のとおりです。
2006年から2014年にわたって、研究チームは、2,104人の患者を超早期介入する群(1,054人)と通常のケアをする群(1,050人)にランダムに割り当て、2,083人(99%)を3か月追跡調査できた。
超早期介入群の患者はランダムに振り分けられたあと直ぐに、介入が行なわれており、中央値は発症後、18.5時間だった。通常のケアをした群は発症後、24時間前後に介入されていたが、中央値の差は、超早期介入群の患者に比べておよそ5時間遅かった。
超早期介入群のうち、24時間以内に介入した患者は965人(92%)で、通常のケアをしていた群は623人(59%)だった。
結果良好だった人は通常のケアの群(525人、50%)よりも超早期介入群(480人、46%)でより少なかった[...]。 死亡者数は超早期介入群において、8%にあたる88人、一方、対照群は7%にあたる72人だった。
ということで、発症後3か月で介助なく生活できていた人の割合はむしろ超早期介入群の方が少ない結果となりました。
研究チームは「世界中の多くの脳卒中ガイドラインで脳卒中後の早期にリハビリテーションを行うことが推奨されているが、今回の研究結果は現在のガイドラインをより良くしていくことに影響を与えるだろう。ただし、どのような治療が実際に勧められるかについては、治療の量や程度との関係を評価する今後の研究が待たれる。」と述べています。
現在、日本の医療機関においても脳卒中後のリハビリは早期に行うことが一般的であります。
現場の医師の方や理学療法士の方は今回の研究結果をどのように解釈されるでしょうか?
執筆者
Efficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset (AVERT): a randomised controlled trial.
Lancet. 2015 Apr 16
[PMID: 25892679]※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。