トルバプタン(V2受容体拮抗薬)
腎臓(腎集合管)にあるバソプレシンV2受容体に拮抗的に作用し、バソプレシン(抗利尿ホルモン)による水の再吸収を阻害することで利尿作用をあらわす薬。心不全や肝硬変などの体液貯留による浮腫などの改善や多発性のう胞腎の改善などが期待できる薬

トルバプタン(V2受容体拮抗薬)の解説

トルバプタン(V2受容体拮抗薬)の効果と作用機序

  • 腎臓(腎集合管)に作用し、利尿作用などをあらわすことで心不全肝硬変などによる過度な体液貯留などを改善する薬
    • バソプレシンは抗利尿ホルモンとも呼び、腎集合管にあるV2受容体を介して血管内へ水分を吸収させることで水分調節をおこなう
    • 心不全肝硬変などでは体内の水分(体液)が過度に貯留する場合がある
    • 本剤はV2受容体に拮抗的に作用し、水分を排泄する利尿作用をあらわす

トルバプタン(V2受容体拮抗薬)の薬理作用

バソプレシンは抗利尿ホルモンとも呼ばれ、腎臓(腎集合管)にあるバソプレシンV2受容体を介して水分を調節する。V2受容体にバソプレシンが作用すると水の透過性が亢進し血管内へ水分を吸収(再吸収)させる作用などをあらわす。

本剤(トルバプタン)はバソプレシンV2受容体に対して拮抗的に作用をあらわし、腎集合管におけるバソプレシンによる水の再吸収を阻害することで利尿作用をあらわす。これにより他の利尿薬で効果不十分な心不全や肝硬変などによる体液貯留(浮腫など)の改善作用をあらわす。また、バソプレシンによる細胞内のcAMPという物質の産生を抑えることで、腎のう胞の増大が抑えられるため、多発性のう胞腎の改善が期待できる。そのほか、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)による低ナトリウム血症の改善なども期待できる。

なお、本剤はバソプレシン受容体に作用することで、一般的な利尿薬(ループ利尿薬サイアザイド系利尿薬 など)でおこる電解質排泄の増加を伴わない利尿作用をあらわす薬剤となっている。これにより低カリウム血症などの懸念が少ない利尿薬となる一方で、急な水分の排泄などによる脱水症状や高ナトリウム血症などに注意が必要となる。

トルバプタン(V2受容体拮抗薬)の主な副作用や注意点

  • 消化器症状
    • 口渇、便秘、食欲不振、吐き気、下痢などがあらわれる場合がある
  • 精神神経系症状
    • 頭痛、めまい、不眠などがあらわれる場合がある
  • 腎臓・泌尿器症状
    • 頻尿、多尿などがあらわれる場合がある
  • 高ナトリウム血症
    • 本剤の利尿作用における血液濃縮により血液中のナトリウム濃度が過度に高くなる場合がある
    • 本剤を服用中は飲水量、尿量、口渇、脱水、血清ナトリウム濃度などに十分注意する
  • 肝機能障害
    • AST(GOT)、ALT(GPT)などの上昇を伴う肝機能障害があらわれる場合がある
    • 倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸発疹、吐き気・嘔吐、痒みなどがみられ、症状が続く場合には医師や薬剤師に連絡する

トルバプタン(V2受容体拮抗薬)の一般的な商品とその特徴

サムスカ

  • トルバプタンの内服薬
    • OD錠(口腔内崩壊錠)と顆粒剤があり、病態などに合わせて選択される
  • 心不全肝硬変などにおける体液貯留の改善で使う場合には通常、1日1回服用する
  • バソプレシンによる細胞内cAMP産生抑制作用による腎のう胞の増大を抑制する作用もあらわす

サムタス

  • トルバプタンの注射剤