ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(パノビノスタット)
白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などのがん化を促進させる酵素(ヒストン脱アセチル化酵素:HDAC)を阻害し、細胞周期停止や細胞の自滅(アポトーシス)を誘導し抗腫瘍効果をあらわす薬
同義語:
HDAC阻害薬

ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(パノビノスタット)の解説

ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(パノビノスタット)の効果と作用機序

  • ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)という酵素の異常な活性化を阻害し抗腫瘍効果をあらわす薬
    • 多発性骨髄腫白血球の一つである形質細胞のがん化により、貧血、骨折、腎障害などがあらわれる
    • 多発性骨髄腫などではHDACという酵素の異常な活性化がみられ造血器の腫瘍化が亢進する
    • 本剤はHDACを阻害し細胞周期停止及び細胞の自滅を誘導する作用をあらわす

ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(パノビノスタット)の薬理作用

がん細胞は無秩序な増殖を繰り返し正常な細胞を障害し、転移を行うことで本来がんのかたまりがない組織でも増殖する。

多発性骨髄腫は白血球の一つである形質細胞のがん化によりおこる造血器腫瘍で、貧血、感染、骨折、腎障害などがあらわれる。多発性骨髄腫細胞などでは、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)という酵素の異常な活性化が認められ、この活性化によりがんの中でも特に白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などの造血器腫瘍化が亢進するとされている。

本剤はHDACの活性を阻害することで、ヒストン及び非ヒストンタンパク質のアセチル化が促進し、細胞周期停止及び細胞のアポトーシス(自滅)誘導がおこることで抗腫瘍効果をあらわすとされる。

ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(パノビノスタット)の主な副作用や注意点

  • 消化器症状
    • 吐き気・嘔吐、下痢、腹痛、消化不良、便秘などがあらわれる場合がある
    • 場合によっては重度の下痢、脱水症状などがあらわれる場合もあり十分注意する
  • 低血圧
  • 肝機能障害
    • ASTやALTなどの上昇を伴う肝機能障害があらわれる場合がある
    • 倦怠感、食欲不振、発熱、黄疸発疹、吐き気・嘔吐、痒みなどがみられ症状が続く場合は放置せず、医師や薬剤師に連絡する
  • 心障害
    • 頻脈動悸などがあらわれる場合があり、頻度は稀だが心不全などの心障害があらわれる場合もあり十分注意する
  • 骨髄抑制
    • 血小板減少症、貧血好中球減少症などがあらわれる場合がある
    • 上記などにより、肺炎敗血症などの重篤な感染症や出血(胃腸出血、肺出血など)などがあらわれる場合もあり十分注意する

ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬(パノビノスタット)の一般的な商品とその特徴

ファリーダック

  • 本剤を含め3種類の薬剤の併用療法に関して
    • 通常、本剤はボルテゾミブ、デキサメタゾンと併用して使用する
    • 多発性骨髄腫に対して通常、1日1回を週3回、2週間(1、3、5、8、10、12日目)服用し、9日間(13〜21日目)を休薬にあてる
    • 通常、上記の3週間を1サイクルとして、このサイクルを繰り返す