いんとうがん(じょういんとうがん、ちゅういんとうがん、かいんとうがん)
咽頭がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)
咽頭がんは咽頭にできるがん。鼻の奥から口蓋垂に高さにできる上咽頭がん、口蓋垂から舌の付け根までにできる中咽頭がん、食道の入り口付近にできる下咽頭がんに分けられる
1人の医師がチェック 15回の改訂 最終更新: 2023.12.29

咽頭がんを疑われたときに行う検査、診断の付け方

咽頭がんが疑われた時に行う検査を説明します。検査は、がんの診断をつける検査と、がんがどれくらい広がっているかをみる検査が必要になります。治療を決定するために多くの検査が必要です。それぞれみていきましょう。

1. 問診

診察では、まず受診のきっかけや、症状の経過を聞かれます。なぜ受診しようと思ったのか、いつから症状があったのか、症状の変化などを伝えましょう。うまく伝えられなさそうな時は、事前にメモにまとめておくといいでしょう。

その他に、喫煙歴や飲酒歴を聞かれます。喫煙や飲酒は咽頭がんの発症リスクになるからです。ヒトパピローマウイルスHPV)関連中咽頭がんでは、喫煙や飲酒をしている人と、していない人で治療効果が異なるので、重要な情報です。現在していなくても、以前に喫煙や飲酒をしていた場合も忘れずに伝えましょう。

2. 咽頭がんが疑われた時の身体診察

視診

図:咽頭は上咽頭・中咽頭・下咽頭に分けられる。

咽頭は上咽頭、中咽頭、下咽頭に分けられます。この3つのうち、口の中から見えるのは中咽頭のみで、上咽頭や下咽頭を直接みることはできません。上咽頭や下咽頭をみるためには間接喉頭鏡という鏡のような道具を使ったり、ファイバースコープ検査を行います。ファイバースコープ検査は見たい場所にカメラを近付けて観察できるため、がんが周囲へひろがっているかどうかを評価できます。

触診

触診では主に頸部(けいぶ)のしこりの有無をみます。その他に、中咽頭がんの場合は、がんの周囲への拡がりを直接触ることで、診察することもあります。

いずれの咽頭がんでも頸部リンパ節転移を早期から起こしやすいため、触診で頸部のしこりがないかを調べます。正常なリンパ節はしこりとして感じることはありません。しこりが触れた場合は、硬さや大きさなどを診察します。頸部リンパ節転移があるということは、がんがもともとあった場所から、リンパ管にのって周りに広がりはじめているということです。

咽頭がんが進行すると、前方や後方へ広がります。前方に広がると、前頸部の筋肉や甲状軟骨(のどぼとけの軟骨)にがんが浸潤(しんじゅん)します。浸潤とはがんが隣り合った組織に入り込むようにして広がってくることを言います。

がんの浸潤があるかを調べる意味で、触診で前頸部に腫瘤(しゅりゅう;かたまり)が触れないかを確認します。がんが後方に広がると、背骨の前の筋肉に浸潤して、甲状軟骨が動きにくくなるため、触診で甲状軟骨の動きも確認します。

中咽頭がんでは、がんを直接触ることができます。中咽頭がんの半分を占める口蓋扁桃(こうがいへんとう)のあたりにできたがん(中咽頭側壁がん:ちゅういんとうそくへきがん)では直接さわって、周囲への拡がりや、硬さを観察します。舌の付け根あたりにできたがんの場合は、見にくいので、触って硬い部分がないか、痛みがないかなどを確認します。

3. 咽頭がんと血液検査・尿検査

咽頭がんは血液検査で診断はできません。治療方針を決定する際に血液検査を参考にします。手術には合併症があり、放射線治療化学療法には副作用があります。血液検査によって治療の負担に体が耐えられるかを調べることができます。

全身状態把握のための検査

全身状態を把握するために血液検査を行います。手術、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)など、どの治療をするにあたっても、治療に耐えうる全身状態かを把握することが必要です。貧血の有無や、腎臓、肝臓の機能、栄養状態の他、糖尿病の有無などの検査を行います。

貧血や栄養状態が悪い場合や、糖尿病があると、手術を行った後に、合併症が多くなることが報告されています。合併症とは手術によって引き起こされる望ましくないことを指します。合併症は手術ミスのことではなく、うまくいった手術で合併症が出てしまうこともあります。

放射線治療と化学療法を併用する場合には、抗がん剤の副作用で貧血の悪化や、腎機能の悪化の可能性があり、治療前の評価が必要です。

抗がん剤の中でも白金製剤のシスプラチンを用いる場合は、腎機能によって、抗がん剤の量を検討するため、尿を貯めて、腎臓の機能を調べる検査を行うことがあります。

腫瘍マーカー

血液検査のうち、がんに関係する項目として腫瘍マーカーと総称されるものがあります。腫瘍マーカーは咽頭がんを診断することや、咽頭がんの進行度をはかることに決定的な材料とはなりません。

腫瘍マーカーというのは、がんと関係する微量の物質です。がんがあると血液の中で腫瘍マーカーの量が多くなります。腫瘍マーカーを測定することで、診断の助けになります。

治療前に腫瘍マーカーが上がっていて、治療後に腫瘍マーカーが一度下がり、再び腫瘍マーカーが上がってきた場合は、再発を疑う根拠になります。しかし腫瘍マーカーが上がっても再発していない場合があり、また腫瘍マーカーが上がらなくても再発は否定できません。

咽頭がんの腫瘍マーカーとしていくつかの物質が知られています。頭頸部がんに保険適用のある腫瘍マーカーはSCC抗原のみです。咽頭がんはほとんどが、扁平上皮という組織からできた扁平上皮がんです。SCC抗原は扁平上皮がんを反映します。

腫瘍マーカーは咽頭がんがあっても必ず上昇するとは限りません。つまり腫瘍マーカーを測定するだけではがんがあるともないとも確実なことはわかりません。

4. 咽頭がんと内視鏡検査

咽頭がんを診断する時に有用な検査がファイバースコープ検査です。ファイバースコープは胃カメラのような柔らかいカメラです。太さが2.5-5mm程度です。がんが疑われる部位に近づいて観察できることが利点です。

咽頭がんと診断された場合には、治療の前に胃がん食道がんがないか、上部消化管内視鏡検査を行います。それぞれ説明します。

ファイバースコープ検査

ファイバースコープ検査は咽頭がんの診断に重要です。中咽頭がん以外の咽頭がんは、直接みることが出来ないからです。ファイバースコープ検査では、がんに近づいて、カメラで観察したり、がんの一部をつまみとることができます。

ファイバースコープは、胃カメラと似た構造で、先端にカメラとライトがついた細いチューブです。胃カメラより細く、太さが2.5-5mm程度です。

鼻からファイバースコープを挿入して、咽頭を観察します。鼻をファイバースコープが通る時に痛みを感じるため、検査前に鼻の処置を行います。最初に粘膜収縮薬で、鼻の粘膜を収縮させて、鼻の空間をひろげます。次に局所麻酔薬を用います。これらの薬を鼻にスプレーしたり、薬のついた綿棒やガーゼを鼻に入れて処置をします。

ファイバースコープでは、病変に近づいて観察できる利点があります。

最近では特殊な光の波長を用いて早期がんを探すカメラもあります。内視鏡で粘膜の隆起や潰瘍(えぐれていること)が見つかった場合は、がんを疑うことは容易です。しかし、粘膜の発赤(赤くなっていること)のみであった場合、がんと炎症の区別がつきません。その場合は、特殊な光の波長で観察することによって、早期がんを発見できることがあります。

がんを疑った場合は、ファイバースコープを見ながら、腫瘍の一部をつまみます。のどにふれると、オエッとえずく反射が起こりやすいため、のどを局所麻酔薬で麻酔した後に組織を採取します。観察用より太いファイバースコープを鼻から入れて、鉗子(かんし)でがんの一部を1-2mm大で採取します。採取した腫瘍は、病理検査でがんがあるかどうか調べます。病理検査とは採取した組織を顕微鏡で観察する検査のことです。

検査後はのどの違和感がありますが、1時間程度で麻酔の効果がなくなり、飲食も検査日から可能です。外来で簡単に行うことができる検査です。

気を付ける点として、腫瘍をつまんだ部分から出血することがあります。血液を固まりにくくする薬を内服していると、検査後に血が止まりにくくなるため、必ず検査前に担当の医師に伝えてください。

上部消化管内視鏡検査

咽頭がんがある場合は、同じように喫煙や飲酒が原因になる食道がんが一緒にできていることがあります。中咽頭がんが見つかった人の10-20%に食道がん胃がんも見つかります。下咽頭がんでは30-40%の人に食道がんも見つかります。

治療前にはPET検査などで転移を探したうえ、上部消化管内視鏡検査も必要です。PET検査では、小さな食道がん胃がんの診断が難しいため、治療前に別途、上部消化管内視鏡検査を行います。咽頭がんと診断された場合は、治療前に上部消化管内視鏡検査を行い、食道がん胃がんがないかを確認します。

咽頭がんの治療後にも、食道がんになることがあるので、定期的に上部消化管内視鏡検査を行います。

5. 咽頭がんと画像検査

咽頭がんが疑われた場合や、咽頭がんの診断がついた場合には、がんの広がりを調べる画像検査を行います。がんの治療を決める時には、がんの広がりを調べて、進行度をきちんと評価することが重要だからです。

CT検査

CT検査は体の断面をうつし出せる画像検査です。放射線を使います。がんの周囲組織への広がりと、頸部リンパ節転移の有無などを評価します。がんの広がりを詳細に調べるためにはヨード(ヨウ素)化合物である造影剤を注射して撮影を行います。気管支喘息や、ヨード造影剤のアレルギーがある場合や、糖尿病でメトホルミン製剤(メトグルコ®など)を内服している場合は、造影剤の副作用が出やすいので、医師に検査の前に伝えてください。腎臓の機能が悪い場合も造影剤を使用できないことがあります。

MRI検査

MRI検査は磁気を利用する画像検査です。放射線を使うことはありません。CT同様、がんの広がりを評価します。CTより粘膜病変を詳細に評価できる利点がありますが、頸部リンパ節の評価はCTに劣ります。MRI検査ではがんの筋肉への浸潤や、血管への浸潤などが評価可能で、手術可能ながんであるかを評価する点で重要な検査です。MRI検査ではガドリニウムの化合物である造影剤を注射して検査を行います。腎臓の機能が悪いと、造影剤は使用できません。

MRI検査を行うことができない可能性がある人は、体内に金属が入っている場合と、閉所恐怖症の場合です。磁気を利用するため、体内に金属が入っているとMRIを撮影できないことがあります。心臓ペースメーカー、人工内耳、心臓や血管のステント、整形外科で固定のために金属を入れたことがある、などの場合は、医師に伝えてください。最近のものではMRIを使用できる場合もありますが、判断のためにも必ず医師に伝えて下さい。MRI検査は20分程度、狭い筒の中で検査を行うので、狭いところで、ドキドキしたり不安が強くなる人は事前に伝えてください。

超音波検査(エコー検査)

超音波検査エコー検査)は、体の中を観察する画像検査です。頸部リンパ節への転移の有無を評価します。観察したい部位にジェルを塗って、プローブという機械を当てると、プローブの先にある部分が画面にうつります。簡便にでき、かつ放射線を用いないことが利点です。

リンパ節転移の評価はCT検査と超音波検査で行います。超音波検査ではリンパ節の形状や、血流の様子などを詳細に観察することが可能です。

リンパ節内にがんがあるかどうか、判断が難しい場合は、穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)を行います。リンパ節から採取した細胞を顕微鏡で見て、がんらしい細胞がないかを評価する検査です。超音波検査をしながら、リンパ節に注射針を刺して、内部の細胞を吸引して、ガラスに吹き付けて、顕微鏡で評価します。

PET-CT検査

PET(ペット)は画像検査で、放射線を使います。PET/CT検査はPETとCT検査を組み合わせた検査です。PETは、がん細胞が通常の細胞に比べて糖分を活発に取り込むことを利用した検査です。

FDG(フルオロデオキシグルコース)という物質を使います。FDGは糖(グルコース)に似た物質です。FDGが取り込まれた場所で放射線が発生します。発生した放射線を利用して画像を撮影することができます。FDGを点滴で体の中に注入してから撮影します。がんはFDGの集積が高くなる(陽性)と考えられています。

咽頭がんでPET検査を行うのは、頸部リンパ節転移の有無を確認する目的と、遠くの臓器への転移(遠隔転移:えんかくてんい)がないかどうかを調べる目的です。

治療後にも、再発の有無を判断するために、定期的なPET検査を行います。

PET検査では糖分の取り込みを利用するため、糖尿病がある場合で、血糖値が高い場合は、検査を行うことができません。

6. 咽頭がんの診断を確定させる検査:病理検査

咽頭がんかどうかを診断するときに最も信頼できる検査は、病理検査です。がんを疑う腫瘍から、細胞や組織の一部を採取して、顕微鏡でよく調べます。病理検査には、細胞をみる細胞診と、大きなかたまりを評価する組織診があります。

細胞診検査

細胞診検査は、頸部リンパ節転移が疑われた場合に行います。CT検査、PET検査、超音波検査で、明らかに転移と考えられる場合は、細胞診を行わないこともあります。

画像検査で、リンパ節転移か判断が難しい場合は、穿刺吸引細胞診を行います。穿刺吸引細胞診は、リンパ節を針で穿刺(せんし;刺すこと)して、リンパ節内の細胞を吸引して、顕微鏡でみる検査です。超音波検査をしながら、リンパ節に注射針を刺して、内部の細胞を吸引して、ガラスに吹き付けて、顕微鏡で評価します。使用する注射針の太さは、血液検査などで用いる針の太さと同じです。1回穿刺するのみなので、穿刺時には麻酔は使用しません。1回の穿刺で内部の細胞がうまく引けない場合は、再度穿刺することがあります。

まれですが、血管に穿刺した針が当たった場合は、検査後に穿刺部位が腫れることがあります。大きく腫れた場合は、検査をした病院に問い合わせましょう。

病理検査

咽頭がんを疑った際に、がんかどうか調べる検査が必要です。視診や画像検査でがんが疑われた場合は、がんの一部を切り取る生検を行います。採取した組織は、顕微鏡でよく観察して、がんかどうかを調べます。生検では検査結果がでるまでに1-2週間かかります。生検はがんの診断において最も信頼できる検査です。

組織採取の時に出血のリスクがあるため、血を固まりにくくする抗血小板薬(バイアスピリン®、プラビックス®など)や、抗凝固薬(ワーファリン®、エリキュース®など)を服用している場合は忘れずに、医師に伝えましょう。

中咽頭がんではヒトパピローマウイルス(HPV)の感染の有無が、生存率に大きく影響します。生検した検体の中を調べて、感染の有無を確認します。

それぞれの部位のがんの生検の手順を大まかに説明します。

■上咽頭がん

上咽頭では鼻用の硬性内視鏡や、ファイバースコープを用いてがんの一部を切り取ります。内視鏡やファイバースコープが鼻を通過する時に痛むため、事前に麻酔薬のついたガーゼなどを鼻の中にいれて麻酔をしてから検査を行います。大きな塊を採取する方が組織診断に有用なため、カメラを入れた同じ側もしくは反対側の鼻から鉗子を入れて2-3mm大の塊をとることが多いです。

■中咽頭がん

中咽頭では、口から見える口蓋扁桃のあたりであれば、麻酔を注射して、鉗子(かんし)でがんの一部を2-3mm大で採取します。舌の付け根など見えない部分の場合は、鼻からファイバースコープを入れて、鉗子でがんの一部を1-2mm大で採取します。

■下咽頭がん

下咽頭はふれると、オエッとえずく反射が起こりやすいため、のどを局所麻酔薬で麻酔した後に組織を採取します。

観察用より太いファイバースコープを鼻から入れて、鉗子(かんし)でがんの一部を1-2mm大で採取します。検査後はのどの違和感がありますが、1時間程度で麻酔の効果がなくなり、飲食も検査日から可能です。外来で簡単に行うことができる検査です。

腫瘍の場所が食道に近く、耳鼻科のファイバースコープで観察が難しい場合などは、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)時にがんの一部をとる場合もあります。

7. 咽頭がんの診断はどうやってつけるのか

咽頭がんの診断には、がんであるかどうかの診断と、がんの広がりの診断が必要です。がんの広がりを評価して、進行度(ステージ)を決定した後、治療方針を選択します。

がんであるかどうかの診断には、病理検査が必須です。がんを疑う部分を一部切り取って、病理検査でがんがあるか判断します。

がんの広がりの診断には、各種画像検査を行います。

8. 検査でわかる咽頭がんのステージについて

ステージとはがんが、どの程度進行しているかを評価する方法です。ステージが進むほど生存率は下がります。

ステージを決めるには、国際がん連合が決めているTNM国際分類という方法が使われます。TNM分類とは、がんの大きさ(T)、所属リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)をそれぞれ段階に分けて評価をします。上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がんそれぞれにステージ分類が決まっています。

2017年に発表されたTNM国際分類第8版分類では、中咽頭がんについては、ヒトパピローマウイルス感染の有無で2つに分けられています。

下にステージとTNM分類の対応を説明します。やや専門的になるので、自分には関係ないと思う部分は読み飛ばしてください。

上咽頭がんのステージ

まずステージごとにどんな状態かを説明します。これはあとに出てくるTNM分類と対応します。

■ステージ0の上咽頭がん

ステージ0の上咽頭がんは原発部位が上皮内がんの場合です。がんが上咽頭の上皮(じょうひ)という一番浅い層にとどまっています。転移がある確率は極めて低いです。

はじめから上皮内がんを疑って手術することはあまりなく、手術後に、上皮内がんと診断される場合がほとんどです。具体例としては、上咽頭の良性腫瘍の診断で手術を行い、手術後に上皮内がんと診断される場合です。

■ステージ1の上咽頭がん

ステージ1の上咽頭がんはがんが上咽頭にとどまっている状態か、または、中咽頭や鼻などの隣の部位に広がっている場合です。この時点では、リンパ節転移がありません。

中咽頭は、咽頭後壁や、口蓋扁桃、軟口蓋などの部分で上咽頭と連続している部分であり、中咽頭に上咽頭がんが広がることがあります。

■ステージ2の上咽頭がん

ステージ2の上咽頭がんは大きく2通りに分けられます。

ひとつめは、上咽頭から周りの組織に広がっている場合です。正確には上咽頭の後外側にある傍咽頭間隙(ぼういんとうかんげき)に広がっている状態です。この状態で、くびのリンパ節転移に関しては次の3通りのいずれかに当てはまればステージ2です。

  • リンパ節転移が無い
  • がんと同じ側のくびのリンパ節に6cm以下の転移がある
  • 片側または両側の咽頭の後ろにあるリンパ節に6cm以下の転移がある

その他に、がんが上咽頭にとどまるか、中咽頭や鼻のみに広がっている状態で、がんと同じ側の首に6cm以下のリンパ節転移がある場合や、片側または両側の咽頭の後ろにあるリンパ節に6cm以下の転移がある状態もステージ2です。

■ステージ3の上咽頭がん

ステージ3の上咽頭がんの基準のひとつは、がんが最初にできた部位から、頭蓋骨や副鼻腔に広がっている場合です。首のリンパ節転移の有無や数は問いません。

その他に、がんが上咽頭にとどまるか、中咽頭や鼻のみに広がっているか、上咽頭の後外側にある傍咽頭間隙(ぼういんとうかんげき)に広がっていて、両側の首に6cm以下の頸部リンパ節転移がある場合もステージ3です。

■ステージ4の上咽頭がん

ステージ4の上咽頭がんは以下のいずれかに当てはまる場合です。

  • がんが最初にできた部位から頭の中(頭蓋骨内)に広がっている
  • がんが脳神経を取り囲んでいる
  • がんが目の周囲(眼窩)などに広がっている
  • がんが顎関節周囲にある咀嚼筋間隙(そしゃくきんかんげき)に広がっている
  • 原発巣の大きさに関わらず、首のリンパ節転移が6cmを超える大きさ
  • 遠い臓器への転移(遠隔転移)がある

次に、以上のステージの基準とされるTNM分類の基準を説明します。基準に使われている解剖学用語をそのまま載せていますが、大まかな理解でも自分の状態を把握するには十分役立つでしょう。

【上咽頭がんのT分類】

T分類はがんの大きさで評価します。もともと発生した場所にあるがんのことを原発巣(げんぱつそう)または原発腫瘍と言います。原発腫瘍という呼びかたは、転移によってできたがん(転移巣)と区別する意味合いがあります。

Tx:原発腫瘍の評価が不可能
T0:原発腫瘍を認めない
Tis:上皮内
T1:上咽頭に限局する腫瘍、または中咽頭および / または鼻腔に進展する腫瘍
T2:傍咽頭間隙への進展を伴う腫瘍(後外側への浸潤)
T3:頭蓋底骨組織および / または副鼻腔に浸潤する腫瘍
T4:頭蓋内に進展する腫瘍および / または脳神経を取り囲む腫瘍、下咽頭、眼窩に浸潤する腫瘍、または側頭下窩 / 咀嚼筋間隙への進展を伴う腫瘍

【上咽頭がんのN分類】

N分類は所属リンパ節で評価されます。所属リンパ節とは、がんが最初に転移する位置のリンパ節を指します。上咽頭がんの所属リンパ節は頸部リンパ節です。

Nx:所属リンパ節転移の評価が不可能
N0:所属リンパ節転移なし
N1:鎖骨上窩より上方の、片側頸部リンパ節転移および / または片側 / 両側咽頭後リンパ節転移で最大径が6cm以下
N2:鎖骨上窩より上方の両側頸部リンパ節転移で最大径が6cm以下
N3a:最大径が6cmをこえるリンパ節転移
N3b:鎖骨上窩へのリンパ節転移
※正中リンパ節は同側リンパ節
※鎖骨上窩(さこつじょうか):鎖骨の上にあるくぼみ

【上咽頭がんのM分類】

M分類は遠隔転移の評価です。所属リンパ節転移は遠隔転移には入れません。所属リンパ節以外の離れたリンパ節に転移があれば遠隔転移とします。

M0:遠隔転移なし
M1:遠隔転移あり

TNM分類から下の表に従ってステージを決めます。

表 上咽頭がんの病期

  N0 N1 N2 N3 M1
Tis 0 - - - -
T1 I II III IVB IVC
T2 II II III IVB IVC
T3 III III III IVB IVC
T4 IVA IVA IVA IVB IVC

日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 2012年6月 第5版」(金原出版)より一部改変

上咽頭がんのステージ別の5年実測生存率を提示します。統計データから、一人ひとりの経過を正確には予測できません。同じステージに分類される人でも、がんの状態や、全身の元気さは一人ひとり違ってきます。同じ治療をした場合でも、その後の経過は大きく個人差があります。生存率には個人差があります。

病期 5年実測生存率(%)
I 89.3
II 83.7
III 64.5
IV 46.8

参考文献:全がん協加盟施設の生存率共同調査(診断年が2006年-2010年のデータ)

中咽頭がんのステージ

まずステージごとにどんな状態かを説明します。これはあとに出てくるTNM分類と対応します。

■ステージ0の中咽頭がん

ステージ0の中咽頭がんは原発部位(最初に発生した場所のがん)が上皮内がんの場合です。がんが中咽頭の上皮(じょうひ)という一番浅い層にとどまっています。転移がある確率は極めて低いです。

近年、ファイバースコープが発達し、以前は見つからなかった早期の中咽頭がんが診断できるようになりました。がんの表面の異常血管を光の波長で捉えます。このように見つかったがんを治療すると、病理検査では上皮内がんの診断になることが多いです。

■ステージ1の中咽頭がん

ステージ1の中咽頭がんは、大きさが2cm以下の腫瘍(しゅよう)です。首へのリンパ節転移はこの時点ではありません。

■ステージ2の中咽頭がん

ステージ2の中咽頭がんは、大きさが2-4cmの腫瘍です。首へのリンパ節転移はこ

の時点ではありません。

■ステージ3の中咽頭がん

ステージ3の中咽頭がんは、基準が2種類あります。

ひとつはがんの大きさが4cm以下で、がんと同じ側の首に3cm以下のリンパ節転移が1つある状態です。

もしくは、がんが4cmを超える大きさか、喉頭蓋の舌面にがんが広がっている状態で、リン

パ節転移がないか、がんと同じ側の首に3cm以下のリンパ節転移がある状態です。

■ステージ4の中咽頭がん

ステージ4の中咽頭がんは基準が3種類あります。

ひとつは、がんがもともとできた部位から喉頭や舌など周囲に広がっている場合です。がんが頭蓋骨や頸動脈周囲に広がっている場合です。

2番目は、片側に大きなリンパ節転移があるか、両側にリンパ節転移がある状態です。

3番目は遠くの臓器へ転移(遠隔転移)がある場合です。遠隔転移があると手術では取りきれません。

次に、以上のステージの基準とされるTNM分類の基準を説明します。基準に使われている解剖学用語をそのまま載せていますが、大まかな理解でも自分の状態を把握するには十分役立つでしょう。

【中咽頭がんのT分類:第7版】

T分類はがんの大きさで評価します。もともと発生した場所にあるがんのことを原発巣(げんぱつそう)または原発腫瘍と言います。原発腫瘍という呼びかたは、転移によってできたがん(転移巣)と区別する意味合いがあります。

Tx:原発腫瘍の評価が不可能
T0:原発腫瘍を認めない
Tis:上皮内癌
T1:最大径が2cm以下の腫瘍
T2:最大径が2cmをこえるが4cm以下の腫瘍
T3:最大径が4cmをこえる腫瘍、または喉頭蓋舌面へ進展する腫瘍
T4a:喉頭、舌深層の筋肉 / 外舌筋(オトガイ舌筋、舌骨舌筋、口蓋舌筋、茎突舌筋)、内側翼突筋、硬口蓋、および下顎骨のいずれかに浸潤する腫瘍(舌根または喉頭蓋谷の原発腫瘍から喉頭蓋舌面粘膜への伸展は喉頭浸潤ではない)
T4b:外側翼突筋、翼状突起、上咽頭側壁、頭蓋底のいずれかに浸潤する腫瘍、または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

【中咽頭がんのN分類:第7版】

N分類は所属リンパ節で評価されます。所属リンパ節とは、がんが最初に転移する位置のリンパ節を指します。中咽頭がんの所属リンパ節は頸部リンパ節です。

NX:リンパ節転移の評価が不可能
N0:リンパ節転移がない
N1:がんと同じ側のリンパ節に3cm以下の転移が1つ
N2a:がんと同じ側のリンパ節に3cmを超えるが、6cm以下の転移が1つ
N2b:がんと同じ側のリンパ節に6cm以下の転移が2つ以上
N2c:両側あるいは、がんと反対側のリンパ節転移で最大径が6cm以下
N3:最大径が6cmを超えるリンパ節転移

【中咽頭がんのM分類:第7版】

M分類は遠隔転移の評価です。所属リンパ節転移は遠隔転移には入れません。所属リンパ節以外の離れたリンパ節に転移があれば遠隔転移とします。

M0:遠隔転移なし
M1:遠隔転移あり

表 中咽頭がんの病期

  N0 N1 N2a N2b N2c N3 M1
Tis 0 - - - - - -
T1 I III IVA IVA IVA IVB IVC
T2 II III IVA IVA IVA IVB IVC
T3 III III IVA IVA IVA IVB IVC
T4a IVA IVA IVA IVA IVA IVB IVC
T4b IVB IVB IVB IVBG IVB IVB IVC

参考文献:日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 2012年6月 第5版」(金原出版)より

中咽頭がんのステージ別の5年実測生存率を提示します。こちらの結果は、ヒトパピローマウイルスの感染の有無については考慮されていません。ヒトパピローマウイルスが関連した中咽頭がんでは、もう少し5年生存率は良くなると考えられています。またI期の生存率がII期より低い値ですが、これはI期の登録患者数が少なく、正確な統計ができていないためと考えられます。

統計データから、一人ひとりの経過を正確には予測できません。同じステージに分類される人でも、がんの状態や、全身の元気さは一人ひとり違ってきます。同じ治療をした場合でも、その後の経過は大きく個人差があります。

病期

5年実測生存率(%)
I 57.9
II 70.9
III 58.9
IV 42.7

参考文献:全がん協加盟施設の生存率共同調査(診断年が2006年-2010年のデータ)

ヒトパピローマウイルス関連中咽頭がんのステージ

まずステージごとにどんな状態かを説明します。これはあとに出てくるTNM分類と対応します。

■ステージ0のヒトパピローマウイルス関連中咽頭がん

ステージ0の中咽頭がんは原発部位(最初にがんができた場所)が上皮内がんの場合です。がんが中咽頭の上皮(じょうひ)という一番浅い層にとどまっています。転移がある確率は極めて低いです。

近年、ファイバースコープが発達し、以前は見つからなかった早期の中咽頭がんが診断できるようになりました。がんの表面の異常血管を光の波長で捉えます。このように見つかったがんを治療すると、病理検査では上皮内がんの診断になることが多いです。

■ステージ1のヒトパピローマウイルス関連中咽頭がん

ステージ1のヒトパピローマウイルス関連中咽頭がんは、原発巣が4cm以下で、がんと同じ側のリンパ節に6cm以下の転移がある場合です。

がんと同じ側にリンパ節転移がある場合は、個数によってステージは変わりません。

■ステージ2のヒトパピローマウイルス関連中咽頭がん

ステージ2のヒトパピローマウイルス関連中咽頭がんは、基準が2種類あります。

ひとつは原発腫瘍の大きさが4cmをこえる腫瘍もしくは、喉頭蓋舌面へ進展する腫瘍の場合です。

もうひとつはリンパ節転移が両側もしくは、がんと反対側にある場合で、リンパ節転移の大きさが6cm以下の場合です。

■ステージ3のヒトパピローマウイルス関連中咽頭がん

ステージ3のヒトパピローマウイルス関連中咽頭がんは基準が2種類あります。

原発腫瘍が、喉頭や舌などに広がり、頭蓋骨など広い範囲に広がった場合はステージ3です。

リンパ節転移ががんと反対側や両側にある場合や、6cmを超える場合もステージ3です。

■ステージ4のヒトパピローマウイルス関連中咽頭がん

原発腫瘍やリンパ節転移の大きさは問わず、遠くの臓器への転移がある場合のみがステージ4になります。

次に、以上のステージの基準とされるTNM分類の基準を説明します。基準に使われている解剖学用語をそのまま載せていますが、大まかな理解でも自分の状態を把握するには十分役立つでしょう。

【ヒトパピローマウイルス関連中咽頭がんのT分類:第8版】

TNM国際分類第8版では、ヒトパピローマウイルス関連中咽頭がんは別個に分類されました。T分類はがんの大きさで評価します。もともと発生した場所にあるがんのことを原発巣(げんぱつそう)または原発腫瘍と言います。原発腫瘍という呼びかたは、転移によってできたがん(転移巣)と区別する意味合いがあります。

T0:原発腫瘍を認めない
T1:最大径が2cm以下の腫瘍
T2:最大径が2cmをこえるが4cm以下の腫瘍
T3:最大径が4cmをこえる腫瘍、または喉頭蓋舌面へ進展する腫瘍
T4:喉頭、舌深層の筋肉 / 外舌筋(オトガイ舌筋、舌骨舌筋、口蓋舌筋、茎突舌筋)、内側翼突筋、硬口蓋、外側翼突筋、翼状突起、上咽頭側壁、頭蓋底、下顎骨のいずれかに浸潤する腫瘍(舌根または喉頭蓋谷の原発腫瘍から喉頭蓋舌面粘膜への伸展は喉頭浸潤ではない)または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

【ヒトパピローマウイルス関連中咽頭がんのN分類:第8版】

N分類は所属リンパ節で評価されます。所属リンパ節とは、がんが最初に転移する位置のリンパ節を指します。中咽頭がんの所属リンパ節は頸部リンパ節です。

ヒトパピローマウイルス関連中咽頭がんでは、リンパ節転移が大きくても数が多くても、治療への反応性が高く、リンパ節転移は生存率に影響を与えないため、N分類は簡略化されています。

N0:リンパ節転移がない
N1:がんと同じ側のリンパ節に6cm以下の転移が1つ以上
N2:両側あるいは、がんと反対側のリンパ節転移で最大径が6cm以下
N3:最大径が6cmを超えるリンパ節転移

【ヒトパピローマウイルス関連中咽頭がんのM分類:第8版】

M分類は遠隔転移の評価です。所属リンパ節転移は遠隔転移には入れません。所属リンパ節以外の離れたリンパ節に転移があれば遠隔転移とします。

M0:遠隔転移なし
M1:遠隔転移あり

  N0 N1 N2 N3 M1
T1 I I II III IV
T2 I I II III IV
T3 II II II III IV
T4 III III III III IV

下咽頭がんのステージ

まずステージごとにどんな状態かを説明します。これはあとに出てくるTNM分類と対応します。

■ステージ0の下咽頭がん

ステージ0の下咽頭がんは原発部位(最初にがんができた場所)が上皮内がんの場合です。がんが下咽頭の上皮(じょうひ)という一番浅い層にとどまっています。転移がある確率は極めて低いです。

近年、ファイバースコープが発達し、以前は見つからなかった早期の下咽頭がんが診断できるようになりました。がんの表面の異常血管を光の波長で捉えます。このように見つかったがんを治療すると、病理検査では上皮内がんの診断になることが多いです。

■ステージ1の下咽頭がん

ステージ1の下咽頭がんでは、がんがもともとできた部位にとどまっている、もしくは、大

きさが2cm以下の場合です。この時点では、首のリンパ節に転移はありません。

■ステージ2の下咽頭がん

ステージ2の下咽頭がんは、がんがある側の喉頭が動いているが、下咽頭の周囲に少し広

がっているか、もしくは最大径が4cm以下の腫瘍です。この時点では、首のリンパ節に転移はありません。

■ステージ3の下咽頭がん

ステージ3の下咽頭がんは、基準が2種類あります。

ひとつはがんがある側の喉頭が動いているが、下咽頭の周囲に少し広がっている状態か、がんの最大径が4cm以下の場合で、がんと同じ側の首に3cm以下のリンパ節転移が1つある場合です。

もうひとつはがんの大きさが4cmを超えたり、もともとがんができた部位から、喉頭や食道に広がっている場合で、リンパ節転移はないか、がんと同じ側の首に3cm以下のリンパ節転移が1つある場合です。

■ステージ4の下咽頭がん

ステージ4の下咽頭がんは、基準が3種類あります。

第1は、がんが甲状軟骨や輪状軟骨、舌骨、首の前面にある筋肉などに広がっている場合です。がんが縦隔や頸動脈周囲に広がっている場合もステージ4です。

第2は、両側の首にリンパ節転移がある場合や、大きさが6cm以上のリンパ節転移がある場合です。

第3に、遠くの臓器へ転移(遠隔転移)がある場合もステージ4です。遠隔転移があると手術で取りきれません。

次に、以上のステージの基準とされるTNM分類の基準を説明します。基準に使われている解剖学用語をそのまま載せていますが、大まかな理解でも自分の状態を把握するには十分役立つでしょう。

【下咽頭がんのT分類:第7版】

T分類はがんの大きさで評価します。もともと発生した場所にあるがんのことを原発巣(げんぱつそう)または原発腫瘍と言います。原発腫瘍という呼びかたは、転移によってできたがん(転移巣)と区別する意味合いがあります。

Tx:原発腫瘍の評価が不可能
T0:原発腫瘍を認めない
Tis:上皮内癌
T1:下咽頭の1 亜部位に限局し、および / または最大径が2cm以下の腫瘍
T2:片側喉頭の固定がなく、下咽頭の1 亜部位をこえるか、隣接部位に浸潤する腫瘍、または最大径が2cmをこえるが4cm以下で片側の喉頭の固定がない腫瘍
T3:最大径が4cmをこえるか、または片側喉頭の固定、または食道へ進展する腫瘍
T4a:甲状軟骨、輪状軟骨、舌骨、甲状腺、頸部正中軟部組織のいずれかに浸潤する腫瘍(頸部正中軟部組織には、前頸筋群および皮下脂肪組織が含まれる)
T4b:椎前筋膜、縦隔に浸潤する腫瘍、または頸動脈を全周性に取り囲む腫瘍

【下咽頭がんのN分類:第7版】

N分類は所属リンパ節で評価されます。所属リンパ節とは、がんが最初に転移する位置のリンパ節を指します。下咽頭がんの所属リンパ節は頸部リンパ節です。

NX:リンパ節転移の評価が不可能
N0:リンパ節転移がない
N1:がんと同じ側のリンパ節に3cm以下の転移が1つ
N2a:がんと同じ側のリンパ節に3cmを超えるが、6cm以下の転移が1つ
N2b:がんと同じ側のリンパ節に6cm以下の転移が2つ以上
N2c:両側あるいは、がんと反対側のリンパ節転移で最大径が6cm以下
N3:最大径が6cmを超えるリンパ節転移

【下咽頭がんのM分類:第7版】

M分類は遠隔転移の評価です。所属リンパ節転移は遠隔転移には入れません。所属リンパ節以外の離れたリンパ節に転移があれば遠隔転移とします。

M0:遠隔転移なし
M1:遠隔転移あり

表 下咽頭がんの病期

  N0 N1 N2a N2b N2c N3 M1
Tis 0 - - - - - -
T1 I III IVA IVA IVA IVB IVC
T2 II III IVA IVA IVA IVB IVC
T3 III III IVA IVA IVA IVB IVC
T4a IVA IVA IVA IVA IVA IVB IVC
T4b IVB IVB IVB IVB IVB IVB IVC

参考文献:日本頭頸部癌学会編「頭頸部癌取扱い規約 2012年6月 第5版」(金原出版)より

下咽頭がんのステージ別の5年実測生存率を提示します。統計データから、一人ひとりの経過を正確には予測できません。同じステージに分類される人でも、がんの状態や、全身の元気さは一人ひとり違ってきます。同じ治療をした場合でも、その後の経過は大きく個人差があります。

病期 5年実測生存率(%)
I 61.3
II 59.3
III 50.0
IV 33.1

参考文献:全がん協加盟施設の生存率共同調査(診断年が2006年-2010年のデータ)