いんとうがん(じょういんとうがん、ちゅういんとうがん、かいんとうがん)
咽頭がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)
咽頭がんは咽頭にできるがん。鼻の奥から口蓋垂に高さにできる上咽頭がん、口蓋垂から舌の付け根までにできる中咽頭がん、食道の入り口付近にできる下咽頭がんに分けられる
最終更新: 2018.02.10

咽頭がんの治療について:手術、放射線治療など

咽頭がんの主な治療は、手術と化学放射線治療抗がん剤と放射線の併用)です。がんのできた部位と進行度で治療を選択します。治療の選択には効果と有害事象を知る必要があります。治療について詳しくみていきましょう。

1. 咽頭がんの治療にはどんなものがあるのか

咽頭がんはできる場所によって治療も異なります。がんと診断されてはじめに行う初回治療は主に3種類です。

  • 手術
  • 放射線治療
  • 放射線治療に抗がん剤を加えた化学放射線治療

この中からがんの場所などによって適していると考えられるものを選びます。咽頭がんは場所によって3種類に分けられます。

  • 上咽頭がん
  • 中咽頭がん
  • 下咽頭がん

図:咽頭は上咽頭・中咽頭・下咽頭に分けられる。

上咽頭がんは手術で治療することはほとんどありません。位置的にがんを取りきる手術が難しいことと、がん細胞の特性上、放射線や抗がん剤が効きやすいためです。

中咽頭がんはヒトパピローマウイルスの感染の有無によって変わります。感染がなく大きながんなら手術を選択します。ヒトパピローマウイルスに感染していれば放射線治療(化学放射線治療)を選択することが多いです。

下咽頭がんは進行度によって、手術か放射線治療(化学放射線治療)を選択します。

部位 T分類 N分類 手術 放射線
治療
化学
放射線
治療
上咽頭がん T1 N0 ×  
T2-T4 N0,N+ ×  
中咽頭がん T1-T2 N0  
N+  
T3-T4 N0,N+  
下咽頭がん T1-T2 N0,N+  
T3-T4 N0,N+  

N0:リンパ節転移なし、N+:リンパ節転移あり、◎:第一選択、◯:第二選択

T分類、N分類という言葉については「検査でわかる咽頭がんのステージについて」で詳しく説明しています。大まかには、T分類はがんが最初に発生した場所(原発巣)、N分類はリンパ節転移を評価したものです。表に記載はありませんが、M分類は遠隔転移のことです。遠隔転移とは肺や肝臓、骨などの臓器に転移した場合を指します。

全ての治療の前に導入化学療法抗がん剤治療)を行うことがあります。大きな原発巣であった場合は、導入化学療法の効果を見て治療方針を決めます。導入化学療法を行って効果があった場合は、放射線治療(または化学放射線治療)を行い、効果がなかった場合は手術を行います。

ただし導入化学療法を行わない施設もあります。導入化学療法を行ったほうが生存期間を延ばしたり再発を防いだりする効果が高いかどうかは、まだ確実な証拠がなく、結論が出ていないためです。

咽頭がんの治療では、がんを治すとともに、食事を食べたり、話したりという機能をなるべく残す必要があります。自身の病状や希望とともに、手術後の生活を考えて、治療を選択するのがよいでしょう。

病状などの不明点は担当医に何でも聞いてみましょう。自分自身が納得できる治療を選んで受けることが大事です。診断や治療法を十分に納得した上で治療を始めましょう。

セカンドオピニオンと言って、担当医以外の医師の意見を聞くこともできます。セカンドオピニオンを聞くには、担当医から診療情報提供書紹介状)を書いてもらいます。担当医に言いにくいという方もいると思うのですが、セカンドオピニオンを聞くことは、最近では一般的なことなので、遠慮せずに伝えてください。

上咽頭がんの治療選択

上咽頭がんは、放射線が効きやすいことと、手術が難しい場所であるため、放射線治療が主な治療です。ごく早期のがん(T1)を除いて、化学療法を併用します。化学療法を併用することで、放射線の効果を高める効果と、放射線があたらない部分の潜在的ながんへの効果を期待できます。潜在的ながんとは、目に見えないような小さながんのことです。

上咽頭がんはリンパ節転移を早期から起こしやすいため、広範囲に放射線をあてます。そのため粘膜炎や皮膚炎などの放射線治療の合併症が重症になることがあります。

化学放射線治療後に、頸部リンパ節転移が残存した場合には、頸部郭清術(頸部のリンパ節をまとめて取り除く手術)を行います。

遠隔転移が起こりやすい進行がんでは、化学放射線治療後に、補助化学療法が行われることがあります。補助化学療法では、全身に抗がん剤を投与できるため、潜在的ながんを治療できると考えられます。補助化学療法の効果についてはまだ結論がでておらず、施設によって行う場合と、行わない場合があります。

上咽頭がんの局所再発をした場合には、その人の状態によりますが、手術ができることは少なく、ガンマナイフ、陽子線などでの治療を行います。

診断時にすでに遠隔転移がある場合は、病状に応じてですが、化学療法のみの治療を行うことが多いです。

中咽頭がんの治療選択

中咽頭がんの治療では、がんの根治を狙うとともに、発声の機能や、飲み込み(嚥下)の機能の温存が重要です。

ヒトパピローマウイルス関連の中咽頭がんでは放射線が効きやすいため、治療前にヒトパピローマウイルスの有無を調べ、治療方針を検討します。

中咽頭は側壁、前壁、上壁、後壁の4つの亜部位に分けられます。このうち、側壁にできるがんが中咽頭がんの半分以上をしめています。側壁にはヒトパピローマウイルス関連のがんが主に発症します。中咽頭がんは放射線が効きやすく、飲み込みや発声の機能を残すという点では、手術より放射線治療(または化学放射線治療)が有利です。

側壁がんや、上壁がん(口蓋垂の周囲)の早期がん(T1-2)では経口的手術が可能で、術後の発声機能や嚥下機能も問題ないことが多いです。

進行がんの手術では、原発巣を大きく取り除き、欠損した部分を他の部分の組織で埋める再建手術が必要になります。欠損部分が大きいと、食事の時に鼻に食べ物や水がまわったり、嚥下機能や咀嚼機能(噛む機能)の低下を来すためです。

頸部リンパ節転移に対しては頸部郭清術(頸部のリンパ節をまとめて取り除く手術)を同時に行うことが多いです。左右どちらか、原発巣がある側の頸部郭清術を行います。原発巣が体の左右両側にまたがっている場合は、両側の頸部郭清術が必要になります。

進行がんの手術では欠損が大きく、嚥下機能や発声機能が著しく低下するため、手術後の機能温存のため、放射線化学療法を選択する場合もあります。

ヒトパピローマウイルスが陽性の場合は化学放射線療法が効きやすく治りやすいことが知られています。ヒトパピローマウイルス陰性の場合や、喫煙が多い場合は、化学放射線療法が効きにくいことが知られており、個々の病状に応じて、手術にするか検討します。

喫煙量は10パック年以上だと、放射線の効果が低くなるという報告があります。パック年とは、1日に何箱のタバコを何年間吸い続けたかを掛け合わせて計算する方法です。1日1箱を1年吸っても、1日2箱を半年吸っても1パック年という計算になります。10パック年は、1日1箱を10年もしくは、1日2箱を5年などの計算になります。

参照:N Engl J Med 2010; 363:24-35

下咽頭がんの治療選択

図:咽頭と喉頭の位置関係。

下咽頭がんの治療においては喉頭温存を検討する必要があります。喉頭を摘出する(喉頭温存をしない)場合には、手術後には自分の声がでなくなります。

早期がんの場合は、喉頭温存のために、化学放射線治療や、喉頭温存手術(経口的手術、外切開による下咽頭部分切除など)を行います。進行がんでは下咽頭喉頭全摘出術が主体になりますが、喉頭温存を考えて、化学放射線治療や、喉頭温存手術を選択する場合もあります。

手術では、経口的手術、喉頭温存下咽頭部分切除術、喉頭摘出下咽頭部分切除術、下咽頭喉頭全摘出術、下咽頭喉頭食道全摘出術、下咽頭頸部食道切除術などがあります。進行がんに対しては、下咽頭喉頭全摘出術が主に行われますが、がんのできた部位や、広がりによって、喉頭温存が試みられています。

下咽頭、喉頭、食道のうち摘出した部分には小腸の一部である空腸を移植して、新しい食べ物の通り道を作ります。

下咽頭がんは頸部リンパ節転移も多いため、病状に応じて、片側もしくは両側の頸部郭清術(頸部リンパ節をまとめて取り除く手術)を行います。

放射線治療を行う場合では化学療法を併用する化学放射線治療が一般的です。

2. 咽頭がんの手術(外科的治療)はどんなものがあるの?

咽頭がんの手術には皮膚を切ってがんを取り切る方法と、皮膚を切らずに口の中からがんを

切り取る方法(経口的手術:けいこうてきしゅじゅつ)があります。がんが大きい場合は皮

膚を切り取る方法、がんが小さい場合は経口的手術を選択します。

  • 経口的手術
  • 外切開
    • 中咽頭がんに対する手術
      • 中咽頭悪性腫瘍手術
      • 舌喉頭全摘術
    • 下咽頭がんに対する手術
      • 喉頭温存下咽頭部分切除術
      • 喉頭摘出下咽頭部分切除術
      • 下咽頭喉頭切除術
      • 下咽頭喉頭頸部食道摘出術
      • 下咽頭頸部食道切除術
      • 下咽頭喉頭全食道抜去術

上咽頭がんは一般的に手術治療を行いません。上咽頭は手術治療が困難な部位にあるからです。中咽頭がんや、下咽頭がんは手術治療を行います。

経口的手術は、皮膚を切ってがんを切り取る外切開の方法よりも、体への負担が少なく、入院期間も短くてすむ利点があり、近年普及しています。

咽頭がんで外切開での手術が必要になるのは、がんが大きく、経口的手術ができない場合です。

外切開の手術では、声を出す機能を温存する手術(喉頭温存:こうとうおんぞん)と、喉頭温存ができない手術があります。

喉頭は気管や肺につながる空気の通り道にあります。また喉頭は食べ物の通り道と隣合わせです。そのため、食べ物がうまく飲み込めないと、喉頭から気管、肺に食べ物が入ることがあります(誤嚥:ごえん)。喉頭を温存すると術後も発声は可能ですが、誤嚥も起こしやすくなります。一方、喉頭を温存しない場合は、発声はできませんが、誤嚥を起こすことはありません。

経口的手術

経口的手術(経口的切除術)は首に傷をつけずに、口から道具を入れて手術の操作を行って、がんを切除する方法です。がんとその周囲の組織の切除のみですむため、身体への負担が少ない利点があります。切除する範囲が小さいため、食べ物を食べたり、話したりする機能も保たれることがほとんどです。

■ 経口的手術の種類や方法は?

経口的手術にはいくつかの方法があります。肉眼ではがんの広がりを詳細に観察することが難しいため、内視鏡で観察しながら手術を行います。硬性内視鏡を用いる方法、消化器内視鏡を用いる方法があります。

硬性内視鏡を用いる方法はtransoral videolaryngoscopic surgery(TOVS)と呼ばれ、消化器内視鏡を用いる方法はendoscopic laryngopharyngeal surgery(ELPS)と呼ばれます。

TOVSとELPSでは観察方法が異なりますが、がんの切除方法はほぼ同じです。内視鏡で観察しながら、がんの周囲の正常な部分と一緒に電気メスで切り取ります。切り取った部分には、粘膜の再生を促す人工的なシートを貼り付けることがあります。

海外ではロボットを用いた経口的ロボット支援手術(transoral robotic surgery:TORS)が徐々に行われるようになっていますが、日本では未だ研究段階です。

■ 経口的手術はどんな人ができるの?

経口的手術でのがんの摘出ができるかどうかは、がんの位置や大きさ、深さなどで決まります。個々の病状で可否は変わりますが、中咽頭がんでは4cm以下のもの、下咽頭がんでは4cm以下のもので、声帯の周囲に広がっていないものが主な対象になります。

頸部リンパ節転移がある場合でも、原発巣が小さい場合は、原発巣は経口的手術で取ることが可能です。この場合、頸部リンパ節転移に対しては、頸部郭清術を手術時にあわせて行います。

■ 手術の合併症にはどんなものがあるの?

合併症とは手術によって引き起こされる問題のことです。手術ミスをしたから合併症が出るのではなく、うまくいった手術で合併症が出てしまうこともあります。手術後早期におきる合併症としては下記のものがあります。

・気道狭窄

手術の操作によって、空気の通り道の粘膜がむくんで、一時的に呼吸がしにくくなります。時間がたつと徐々に改善します。

・出血

切除部分から出血することがあります。出血量が多い場合は再手術が必要になることがあります。

手術後、しばらくしてからの障害がでる機能としては、下記のものがあります。

・食べ物を飲み込む機能(嚥下機能:えんげきのう)

術後に飲み込みの機能が悪くなるかどうかは、手術部位とがんの大きさによります。

中咽頭がんでは、口蓋垂周囲(のどちんこのあたり)を大きく切り取ると、食事の時に鼻に食物や水分が戻る、鼻咽腔逆流(びいんくうぎゃくりゅう)という症状がでることがあります。いずれも軽度ですむことが多いです。

下咽頭がんでは、食道の入り口の粘膜を手術した場合は、傷同士がくっついたり、切り取った部分が硬くなり、食べ物の通り道が狭くなることがあります。そのため、切り取る範囲が大きく、食べ物の通り道が細くなることが予想される場合は、経口的手術を行わず、食べ物の通り道を作ることができる外切開での手術を選択します。

・声を出す機能(発声機能:はっせいきのう)

ほとんどの部位で手術後に問題になることはありません。

中咽頭がんで口蓋垂周囲(のどちんこのあたり)を大きく切り取ると、鼻に声が抜けるようになることがあります。開鼻声(かいびせい)と言います。

声帯に近い下咽頭がんの手術を行った場合には、声がれがでることがあります。切り取った部分がくっつくことで、声帯が動きにくくなるためです。

中咽頭悪性腫瘍手術:中咽頭がんに対する外切開の手術

中咽頭がんのうち、放射線がききにくいタイプや、再発などした場合には外切開でのがんの手術が必要になります。切除範囲が大きい場合は、食事を噛みにくくなったり、飲み込みにくくなることがあります。食事をとりやすくするために、がんを切り取った部分を、別の組織で埋める再建手術を同時に行います。

再建手術では、局所皮弁、有茎皮弁、遊離皮弁などを使います。局所皮弁は欠損部位の周囲の粘膜で欠損部を埋める方法です。有茎皮弁は、くびや肩、胸などの皮膚と筋肉の一部を切って血管を元の場所に繋げたまま、縫い付ける方法です。

遊離皮弁では、遠くの場所から血管をつけた組織を切り取ったものを縫い付けます。遊離皮弁を採取する部分は、前腕、太もも、お腹など様々です。遊離皮弁とは、筋肉の一部を血管とともに切り取ったものです。がんを摘出した部分に遊離皮弁を縫い合わせます。縫い合わせただけでは、血流がなくて組織が死んでしまうため、移植した先の血管に、持ってきた組織の血管を縫合します。遊離組織の手術では血流の維持が重要です。術後に血流が悪化した場合は、皮弁が壊死(えし)してしまうため、再手術が必要になることがあります。

中咽頭悪性腫瘍手術では、視野がとりにくい場合は、唇や下顎の骨を真ん中で半分に切って、がんの部分に到達する必要があることがあります。術後の創部がやや目立つ切開方法です。

舌喉頭全摘術:中咽頭がんに対する外切開の手術

中咽頭がんのうち舌根部にできたがんに対して行う手術です。中咽頭がんで外切開での手術が必要になるのは、舌根部に深く入ったがんです。

経口的手術が難しい場合や、放射線治療(または化学放射線治療)後にがんが残存したり、再発した場合などに舌喉頭全摘術が検討されます。がんの広がりによっては、頸部リンパ節転移がなくとも、頸部郭清術を合わせて行うことがあります。

舌喉頭全摘術は舌根部のがんと喉頭を一緒に切り取る手術です。舌根を大きく切除すると嚥下機能が著しく低下します。喉頭が残っていると手術後に誤嚥が必発であるため、誤嚥をしないように、喉頭も一緒に切り取ります。舌根部の欠損が大きくなるため、有茎皮弁や遊離皮弁での再建を行います。

喉頭を一緒に切り取るため、喉頭温存ができず、手術後は発声ができません。左右の鎖骨の間に永久気管孔という新しい呼吸の経路を作ります。

舌根部がなくなると、舌も動かしにくくなり、食事を塊にしてのどの奥に送り込む機能も低下します。術後は流動食などを流し込むような食事方法になります。

初回の治療から、舌喉頭全摘術を行うことはあまりなく、放射線治療後に、がんが残存した場合や、再発した場合などに検討します。

喉頭温存下咽頭部分切除術:下咽頭がんに対する外切開の手術

下咽頭がんのうち、喉頭にはがんが広がっていない場合に行う手術です。がんの大きさによっては経口的手術も可能ですが、傷同士がくっついて食事の通り道が狭くなると考えられる場合には、喉頭温存下咽頭部分切除術を行います。

がんの切除部分は、縫い閉じる場合と、他の部位から組織を移植して、新しい食べ物の通り道を作る場合があります。他の部位から移植する組織としては、小腸の一部である空腸や、前腕を使います。

縫い合わせた、新しい食べ物の通り道がくっつくまで10日前後は口から飲水などができません。術後10日前後で造影剤を飲み込む検査を行い、縫合部分がくっついていることを確認して食事を再開します。

縫合部分がくっついていても、誤嚥がある場合は、飲み込みのリハビリ(嚥下リハビリ)を行います。嚥下機能の低下は必発であるため、長期間の嚥下リハビリを要することがあります。

手術後は、咽頭や喉頭がむくんで、呼吸がしにくくなるため、一時的に気管切開を行います。むくみが改善して、誤嚥も少なくなってきたら、気管切開を閉じます。

嚥下機能が手術前から低下している人に、喉頭温存下咽頭部分切除術を行うことはできません。手術後に嚥下機能が改善せず、嚥下性肺炎誤嚥性肺炎)を繰り返すことがあるからです。

以前に脳卒中などの病気を経験した人や高齢者では、手術前から嚥下機能が低下していることがあります。嚥下性肺炎を起こした場合に重症化しやすい、肺がんの術後、喫煙による慢性呼吸器疾患、心臓疾患などがある場合は、喉頭温存下咽頭部分切除術を行うことが難しいかもしれません。よく主治医と相談して治療を決定しましょう。

下咽頭喉頭頸部食道摘出術(咽喉食摘術)、遊離空腸再建術:下咽頭がんに対する外切開の手術

下咽頭がんが周囲に大きく広がっている場合には、喉頭や頸部食道を含めて摘出する必要があります。摘出する範囲によって、下咽頭喉頭全摘出術、下咽頭喉頭食道全摘出術、下咽頭頸部食道切除術などがあります。

いずれも喉頭を一緒に切り取るため、喉頭温存ができず、手術後は発声ができません。左右の鎖骨の間に永久気管孔という新しい呼吸の経路を作ります。

がんを含めて周囲の構造を切り取った部分には、小腸の一部である空腸を移植して、新しく食べ物の通り道をつくります。食道がん合併している場合は、下咽頭喉頭全食道抜去術

で、食道も全摘出することがあります。この場合は、胃を筒状にして、上まで持ってきて残った咽頭に縫い付けて新しい食事の通り道を作ります。

最も多く行われるのは遊離空腸(ゆうりくうちょう)による再建です。遊離空腸とは、空腸の一部を血管とともに切り取ったものです。咽頭、食道を摘出した部分に空腸を縫い合わせます。縫い合わせただけでは、血流がなくて空腸が死んでしまうため、移植した先の血管に、持ってきた組織の血管を縫合します。遊離空腸の手術では血流の維持が重要です。術後に血流が悪化した場合は、皮弁が壊死(えし)してしまうため、再手術が必要になることがあります。

食べ物の通り道は空腸でできているため、通り道が細くなることもなく、手術後の食事は問題なくできます。

縫い合わせた空腸がくっつくまで10日前後は口から飲水などができません。術後10日前後で造影剤を飲み込む検査を行い、縫合部分がくっついていることを確認して食事を再開します。

頸部郭清術

頸部郭清術(けいぶかくせいじゅつ)では耳の後ろから鎖骨の上までの範囲にある脂肪を摘出します。頸部郭清術は頸部リンパ節転移を取り除くための手術です。

咽頭がんでは、リンパ節転移が高率に起こります。リンパ節転移は咽頭がんのある部分から、リンパ管を通って転移をおこします。そのため、転移したリンパ節のみを摘出するのみでは不十分で、リンパ管も一緒に摘出する必要があります。リンパ管は頸部の脂肪の中に埋まっているため、脂肪ごと摘出します。

脂肪の中には重要な血管や神経もあるため、それらを傷つけないように摘出します。リンパ節転移が大きく、血管や神経に巻きついている場合は、血管や神経を切断せざるを得ないことがあります。

手術前の検査で頸部リンパ節転移がない場合も、がんが大きい場合は、がんがある側の頸部郭清術を行います。目に見えるリンパ節転移がなくても、微小な転移が隠れている可能性があるからです。がんが大きくて、もともとがんができた側の反対側まで広がるような場合は、両側の頸部郭清術を行います。

頸部郭清術の合併症

頸部郭清術で起こりうる血管損傷や神経損傷の合併症は下記のものがあります。合併症が起こる頻度には差があります。損傷した場合の症状を記載します。

  • 血管損傷
    • 内頸静脈:顔面の浮腫(むくみ)、頭痛
    • 総頸動脈:半身麻痺
  • 運動神経損傷
    • 副神経:腕が上がりにくい(外転90度以上)
    • 顔面神経下顎縁枝:口角の下垂、口角からの息漏れ
    • 舌下神経:舌の運動低下
    • 横隔神経:横隔膜が上がる(自覚しないことが多い)
    • 迷走神経:食事のむせ、嗄声(声がれ)
    • 腕神経叢:手が動かない
  • 感覚神経損傷
    • 頸神経:頸部全体の締めつけ感、頸部の感覚低下
    • 後頭神経:後頭部の感覚低下
    • 耳介神経:耳たぶの感覚低下

3. 抗がん剤(化学療法)

咽頭がんの治療で抗がん剤を使用する場合は下記のどれかになります。

  1. 導入化学療法
  2. 放射線治療との同時併用(化学放射線治療)
  3. 手術や放射線治療(化学放射線治療)後の補助療法
  4. 他臓器への遠隔転移がある進行がんや、再発した場合に対する治療

導入化学療法

導入化学療法とは、手術や放射線治療などの根治治療の前に行う抗がん剤治療です。導入化学療法は主に下記を目的として行われます。

  1. がんを縮小して根治治療の効果をあげる
  2. 導入化学療法の効果をみて、根治治療方法を決定する
  3. 目に見えない小さな遠隔転移を治療する

■上咽頭がん

上咽頭がんでは、導入化学療法を行うことで、目に見えない小さな遠隔転移を治療することができると考えられています。導入化学療法を行うほうが、無病生存率をあげたり、新たな遠隔転移を防ぐことができるという報告もありますが、効果に関しては、まだ確実な証拠がなく、結論が出ていません。

参照:Eur J Cancer. 2017 Apr;75:14-23.

■中咽頭がん、下咽頭がん

中咽頭がんや下咽頭がんでは、導入化学療法の効果をみて、がんの縮小が見られれば、放射線治療か化学放射線治療を行い、がんの縮小がない場合は、手術を検討することがあります。

下咽頭がんでは、もともと手術可能な大きさで喉頭温存が難しい場合で、喉頭温存を希望した場合には、導入化学療法を行います。がんが小さくなった場合は、根治治療で喉頭温存が可能な化学放射線治療が可能になる場合があります。

ただし、導入化学療法の効果として、喉頭温存率の上昇は見られるものの、生存率の向上がないことが知られています。そのため、導入化学療法を行わない施設もあります。

導入化学療法には抗がん剤のドセタキセル、シスプラチン、フルオロウラシルを組み合わせたTPF療法を用います。TPF療法は効果的ですが治療の副作用が強いため、個々の併存症や年齢などに応じて、ドセタキセルを除いた2剤の、PF療法を用いる場合もあります。

参照:N Engl J Med. 2007 Oct 25;357(17):1705-15.

放射線治療との同時併用(化学放射線治療)

放射線治療に抗がん剤を併用する目的は、放射線治療の効果を増強させることと、放射線の当たらない照射野外の、目に見えないがんをコントロールすることです。

■上咽頭がん

上咽頭がんでは抗がん剤を併用した化学放射線治療を主に行います。ごく早期のI期では抗がん剤を併用せずに、放射線単独治療を行います。併用する抗がん剤はシスプラチンが主です。3週間に1回投与して、放射線治療中に合計で3回投与する方法が一般的です。

中咽頭がんや下咽頭がんで用いられることのあるセツキシマブに関しては、上咽頭がんでは十分な研究結果がなく使用されません。

■中咽頭がん

中咽頭がんでも、早期がん(I-II期)を除いて、抗がん剤を併用して放射線治療を行います。進行がんでは化学放射線治療もしくは手術を行います。手術治療では発声機能や嚥下機能が悪化する可能性があるため、機能の温存を希望する場合は化学放射線治療を行います。併用する抗がん剤はシスプラチンが主です。3週間に1回投与して、放射線治療中に合計で3回投与する方法が一般的です。年齢や併存疾患によって、セツキシマブなどを使用します。

■下咽頭がん

下咽頭がんでも、早期がん(I-II期)を除いて、抗がん剤を併用して放射線治療を行います。進行がんでは化学放射線治療もしくは手術を行います。下咽頭がんの手術治療では喉頭温存ができないこともあるため、喉頭温存を希望した場合には、化学放射線治療を行います。併用する抗がん剤はシスプラチンが主です。3週間に1回投与して、放射線治療中に合計で3回投与する方法が一般的です。年齢や併存疾患によって、セツキシマブなどを使用します。

手術や放射線治療(化学放射線治療)後の補助療法

化学放射線治療後や、根治手術後に再発のリスクが高いと考えられる場合にも術後に化学療法を行うことがあります。

■上咽頭がん

上咽頭がんでは、化学放射線治療後に、シスプラチンとフルオロウラシルを投与するPF療法を行った報告があります。現時点では、補助療法の効果については、十分な根拠がないものの、行ったほうが良いのではないかという結論になっています。補助療法を行うかについては、各医療機関や個々の病状に応じて判断をしています。

■中咽頭がん、下咽頭がん

中咽頭がんや下咽頭がんの手術後で再発リスクが高い場合は、追加で放射線治療もしくは、化学療法を併用した放射線治療を行います。

再発のリスクが高いと考えられるのは、切除したがんの断端陽性の場合と、リンパ節の節外浸潤がある場合です。断端陽性とは、切除したがんの端にがんが残っていた状態で、体内にがんが一部残っていることを示します。リンパ節の節外浸潤は、転移したリンパ節の外にがんがひろがっている様子が見えることを言います。

他臓器への遠隔転移がある進行がんや、再発した場合に対する治療

診断時にすでに他の臓器への転移がある場合や、手術や化学放射線治療後に再発して、再び手術や化学放射線治療ができない場合は、がんの進行を遅らせる目的で化学療法を行います。診断時に他の臓器への転移(遠隔転移)がある場合は、すでに全身にがんが拡がっている状態です。この場合は、例外はあるものの、手術や化学放射線治療などは行いません。

頸部リンパ節転移は遠隔転移ではありません。頸部から離れた場所のリンパ節転移は遠隔転移です。

手術や化学放射線治療を行った後に、がんが再発した場合は、再発部位の手術や化学放射線治療を検討します。他の臓器へ転移がある場合や、手術や化学放射線治療ができない場合は、化学療法を行います。

使用する抗がん剤は、シスプラチン、フルオロウラシル、セツキシマブの組み合わせや、パクリタキセル、セツキシマブの組み合わせなどがあります。これらの効果がなくなった場合には、ニボルマブの使用を検討します。

4. 放射線治療

放射線治療は、がんのある部位に、体の外から放射線をあてる治療です。照射はがんのある部位にあてるほかに、上咽頭がんや下咽頭がんでは、まわりにも予防的照射を行うことがあります。予防的照射とはそのがんで、転移が起こりやすいリンパ節の領域への照射です。

1回1.8-2Gy(グレイ)を33-35回照射します。照射期間は6-7週間になります。一般的には土日祝日を除いて、毎日同じ部位に、同じ量の放射線を当てます。治療の後半では放射線を当てる範囲を変更して照射を行います。放射線治療の効果は治療終了後も1ヶ月程度持続します。放射線を当てると細胞のDNAが傷ついて、それ以上、細胞が増殖できなくなります。細胞分裂の周期は細胞によって異なるため、放射線の照射が終わった後も、効果が1ヶ月程度は持続します。

有害反応として、皮膚のやけど(放射線性皮膚炎)、口からのどの粘膜のやけど(粘膜炎)が必発です。放射線治療の終盤では、のどの粘膜炎の痛みのために、食事がとれなくなることがあります。個人差がありますが、1ヶ月程度で徐々に皮膚炎や粘膜炎が改善します。

放射線治療には、放射線単独で行う場合と、抗がん剤を併用する化学放射線治療があります。がんの部位とステージに応じて選択します。

咽頭がんで放射線単独治療を行うのは、ごく早期のがんです。それ以外の咽頭がんは、放射線治療に化学療法を併用します。放射線のみの治療に比較して、化学療法を併用すると、照射中の有害反応は多くなりますが、再発などの率が少ないことが知られています。

放射線治療の有害反応については、同じ頭頸部がんである喉頭がんのページに詳しく記載してあります。「喉頭がんの放射線治療で気をつけるべき有害反応とは?」をご覧ください。

参照:Head Neck. 2001 Jul;23(7):579-89

■上咽頭がん

上咽頭がんは放射線が効きやすいがん細胞であるため、治療の主体は放射線治療になります。ごく早期のI期をのぞいて、抗がん剤を併用した化学放射線治療を行います。併用する抗がん剤はシスプラチンが主です。3週間に1回投与して、放射線治療中に合計で3回投与する方法が一般的です。

頸部リンパ節転移が多いため、くびの広範囲に放射線を照射します。合併症である粘膜炎や皮膚炎が強くでることがあります。

■中咽頭がん

中咽頭がんでも、早期がん(I-II期)を除いて、抗がん剤を併用して放射線治療を行います。進行がんでは化学放射線治療もしくは手術を行います。手術治療では発声機能や嚥下機能が悪化する可能性があるため、機能の温存を希望する場合は化学放射線治療を行います。

また、頸部リンパ節転移が大きく、放射線治療で縮小が期待できない状況などでは、先に手術で頸部郭清術を行い、リンパ節を摘出した後に、化学放射線治療を行うことがあります。

がんの原発巣が口の奥の方のため、口腔内にあたる放射線量が多くなります。放射線治療の副作用である口腔粘膜炎が強く出る傾向にあります。

併用する抗がん剤はシスプラチンが主です。3週間に1回投与して、放射線治療中に合計で3回投与する方法が一般的です。年齢や併存疾患によって、セツキシマブなどを使用します。セツキシマブを使用した放射線治療では、シスプラチンを使用した場合に比べて、粘膜炎や皮膚炎が強くでるという副作用もあります。

■下咽頭がん

下咽頭がんでも、早期がん(I-II期)を除いて、抗がん剤を併用して放射線治療を行います。進行がんでは化学放射線治療もしくは手術を行います。下咽頭がんの手術治療では喉頭温存ができないこともあるため、喉頭温存を希望した場合には、化学放射線治療を行います。また、頸部リンパ節転移が大きく、放射線治療で縮小が期待できない状況などでは、先に手術で頸部郭清術を行い、リンパ節を摘出した後に、化学放射線治療を行うことがあります。併用する抗がん剤はシスプラチンが主です。3週間に1回投与して、放射線治療中に合計で3回投与する方法が一般的です。頸部リンパ節転移が多いため、くびの広範囲に放射線を照射します。合併症である粘膜炎や皮膚炎が強くでることがあります。

5. サルベージ治療(姑息的治療)

サルベージ治療とは、放射線治療(または化学放射線治療)後にがんが残存した場合や、再発した場合に行う治療のことです。

放射線治療(または化学放射線治療)が終了してから10週間前後で、がんの残存がないかPET検査を行います。PET検査は咽頭がんの転移・再発を探す画像検査です。PET検査でがんの残存が疑われる部分がある場合や、ファイバースコープ検査などで原発巣の残存がある場合や、頸部リンパ節の腫れ(リンパ節転移と疑わしいもの)が残存している場合は、病理検査を行います。病理検査は最初の診断時と同じで、がんを疑う部分をつまんで切り取って組織検査をしたり、リンパ節に針を刺して細胞を採取して細胞診を行います。病理検査でがんが残存していることがわかった場合には、手術を行います。

再発時も同様です。病理検査でがんの再発が見つかった場合は手術を行います。初回治療が終了してから、最初の2年が最も再発しやすいため、その間は1ヶ月に1回程度の通院をしながら、再発を疑わせる様子がないかを診ます。

サルベージ治療は残存部位や再発部位によって、部位にあった手術を行います。頸部リンパ節の残存や再発の場合は、頸部郭清術を行います。中咽頭がんや下咽頭がんの残存、再発の場合は、がんの部分を切除する手術を行います。切除範囲に応じて、再建を行います。喉頭温存を希望して、放射線治療(または化学放射線治療)を行った場合でも、残存や再発があった場合は、がんの根治のためには、喉頭を摘出せざるを得ない場合もあります。

放射線治療(または化学放射線治療)後のサルベージ治療時は、術後の合併症が多くなります。放射線治療(または化学放射線治療)によって組織が硬くなっており、血流が悪いためです。手術での操作が難しくなったり、皮膚の傷の治りが悪くなります。

6. 手術後遺症にはどんなものがあるか

中咽頭がんや下咽頭がんの手術では、機能障害が起こることがあります。機能障害を最小限にするために再建を行います。

声がでない(失声、発音障害)

声がでない発声障害に関しては、声が全くでなくなる場合(失声)と、発音障害があります。

■失声

失声は、喉頭を摘出した場合の後遺症になります。中咽頭がんで舌喉頭全摘をした場合や、下咽頭がんで咽頭喉頭食道全摘出術などをした場合です。元の声で話すことはできなくなりますが、代替発声方法を獲得すると、コミュニケーションを問題なくとることができます。代替発声方法として、食道発声、電子喉頭、シャント発声などがあります。喉頭を摘出した場合は身体障害者3級の取得が可能です。電子喉頭などの補助がでる自治体もあります。認定には申請後2ヶ月程度かかりますので、術後は早めに申請しましょう。

失声について詳しくは、「手術後に声がでなくなったらどうしたら良い?」の章をあわせてご覧ください。

■発音障害

主に中咽頭がんの手術後遺症です。口蓋扁桃のあたりを大きく摘出した場合や、舌根部を大きく摘出した場合、口蓋垂(のどちんこ)のあたりを大きく摘出した場合などに起こります。がんの摘出部が大きい場合は、摘出を埋めるように再建を行いますが、口蓋扁桃のあたりを大きく摘出した場合や、舌根部などを摘出した場合は舌の動きが悪くなることがあり、話しにくさが残ります。口蓋垂がなくなると、鼻にぬけるような声(開鼻声:かいびせい)になります。いずれもリハビリを行うとやや改善します。

飲み込みが難しい(嚥下障害、咀嚼障害)

嚥下障害

中咽頭がんで大きく切除して再建した場合や、下咽頭がんで喉頭温存下咽頭部分切除をおこなった場合に起こりやすい後遺症です。手術前の嚥下機能にもよりますが、手術後に長期間のリハビリを要することがあります。

以前に脳卒中などの病気を経験した人や高齢者では、手術前から嚥下機能が低下していることがあります。手術後にリハビリを行っても、嚥下機能が改善しない場合は、口から十分な栄養をとることができません。胃瘻(いろう)を併用しての栄養摂取が必要になることもあります。

中咽頭がんの手術で、口蓋垂がなくなると、食事が鼻に戻る鼻咽腔逆流(びいんくうぎゃくりゅう)が起きることがあります。通常の嚥下時には、口蓋垂がのどの奥の壁にくっついて鼻に食物が戻らないようになっています。口蓋垂の周囲が大きく欠損した場合は、嚥下時に口と鼻の間に通路が残存してしまうため、鼻咽腔逆流がおこります。再建組織で埋めて、鼻に戻りにくくしますが、少量の鼻咽腔逆流が残存することがあります。

■咀嚼障害

主に中咽頭がんの手術後遺症です。口蓋扁桃のあたりを大きく摘出した場合や、舌根部を大きく摘出した場合などに、咀嚼(噛むこと)がしにくくなったり、舌の動きが悪くなると、食物を固まりにしてのどの奥に送り込むことができないため、食事が食べにくくなります。嚥下リハビリが必要になります。

外見の問題

中咽頭がんも、下咽頭がんものどの奥のがんであり、手術を行った場合でも、外見はさほど変化しません。首には傷がつきますが、徐々に目立たなくなります。

頸部郭清術で胸鎖乳突筋という側頸部を覆う筋肉を摘出した場合には、摘出した側の首が細くなります。

中咽頭がんで、まれに唇と下顎骨の真ん中を切る必要があります。顔の真ん中に縦の線が入るため、多少目立ちます。

下咽頭がんで喉頭も摘出する手術を行った場合には、鎖骨の間に永久気管孔という呼吸のための穴が空きます。永久気管孔は加湿の目的と、ゴミが入らないようにするため、ガーゼやハンカチ、スカーフなどで覆うため、通常の生活で目立つことはありません。

頸部の傷の目立ち具合は、個々の体質もあります。ケロイド体質などでは目立つことがありますので、主治医に相談してみましょう。

7. 手術後遺症に対する緩和的治療

手術後遺症のうち、発音の障害や、飲み込みの障害に関しては、根気強くリハビリをする必要があります。手術後は言語聴覚士とともにリハビリを行いますが、自分ひとりでもできるリハビリ方法を習っておくと、いつでもリハビリを行うことができます。

頸部郭清術の手術後遺症として、肩こりがでることがります。頸部郭清術では腕を横から上に挙げる機能をもつ副神経の周囲を触ります。がんの浸潤(しんじゅん;組織に入り込んでいること)がなければ温存しますが、手術中に副神経に触ることで、副神経障害が起きることがあります。副神経障害では、肩こり、肩の重い感じ、くびの痛みなどが出ることがあり、重症になると、腕が上がらなくなります。

術後は早期にリハビリを開始することが望ましいです。術後出血や、縫合部位が開く心配がなくなる、1週間程度での開始が安全です。

肩を上げ下げしたり、肩関節を回したり、腕を横から上にあげるような運動をしましょう。当初は痛いかもしれませんが、動かさないと肩周囲の筋肉がどんどん硬くなって、動きにくくなります。手術後に肩が重い感じや痛みがある場合には、主治医に相談して、必要に応じてリハビリを行いましょう。理学療法士に自分でできる運動方法を聞いておくとよいでしょう。