いんとうがん(じょういんとうがん、ちゅういんとうがん、かいんとうがん)
咽頭がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん)
咽頭がんは咽頭にできるがん。鼻の奥から口蓋垂に高さにできる上咽頭がん、口蓋垂から舌の付け根までにできる中咽頭がん、食道の入り口付近にできる下咽頭がんに分けられる
最終更新: 2018.02.10

のどの違和感は咽頭がん?咽頭がんの症状や、咽頭がんになりやすい人は?

のどの違和感や痛みが続くと、咽頭がんが心配になることもあるかもしれません。咽頭がんの初期症状や、進行したときの症状などを詳しく説明します。咽頭がんの発症リスクなどについてもみていきましょう。

1. 咽頭がんに起こりやすい症状

図:咽頭は上咽頭・中咽頭・下咽頭に分かれる。

咽頭は上咽頭、中咽頭、下咽頭にわかれ、それぞれの場所で起こる症状が異なります。いずれのがんも早期では症状が乏しいことが多いです。中でも下咽頭がんは症状がわかりにくく、症状が出た時にはがんが進行していることが多いです。

咽頭がんでしか出現しない症状はありません。下に記載した症状があるときも、他の病気である可能性もあります。それぞれの症状をみていきましょう。

上咽頭がんに起こりやすい症状

  • 首のしこり
  • 耳の症状:耳のつまったような感じ、耳鳴り、難聴
  • 鼻の症状:鼻づまり、鼻血、血混じりの鼻水
  • 脳神経症状:顔のしびれ、ものが2重に見える、など

図:耳の構造。上咽頭は耳管を通じて中耳とつながっている。

上咽頭は鼻の奥にあり、耳と鼻をつなぐ耳管(じかん)に近いため、耳や鼻の症状がでます。上咽頭の周囲には脳神経という、色々な機能をもった神経があるため、上咽頭がんが広がると、様々な脳神経症状が出ます。初診時の受診理由として最も多いのは、首のしこりです。詳しく説明します。

  • 首のしこり

上咽頭がんでは、頸部リンパ節転移が起こりやすく、がんが転移したリンパ節をしこりとして触れます。初診時に半分の人に頸部リンパ節転移があります。しこりは両側にあることもあります。

頸部リンパ節転移のしこりは、一般的には硬く、痛みはありません。周囲の組織とくっついているため、指でつまんで動かそうとしてもなかなか動きません。

頸部のしこりのみでは他の病気の可能性もありますが、頸部のしこりに加えて、耳の詰まった感じや、鼻づまりがある場合は、一度医療機関に受診して調べてみましょう。

  • 耳の症状:耳のつまったような感じ、耳鳴り、難聴

耳管の鼻側の出口(耳管咽頭口:じかんいんとうこう)の近くにがんができると、耳管がふさがってしまうことがあります。がんで耳管がふさがると、耳管につながっている中耳に水が溜まりやすくなり、滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)になります。滲出性中耳炎では耳のつまったような感じや、膜をはったような感じ、耳の中に水が入ったような感じの症状が出ます。滲出性中耳炎は小さな子供や、高齢者に多い病気です。しかし、大人で片側のみの浸出性中耳炎がある場合は、上咽頭がんなどを考えて、ファイバースコープ検査を受けることをお勧めします。耳鳴りや難聴などの症状が出ることもあります。

  • 鼻の症状:鼻づまり、鼻血、血混じりの鼻水

上咽頭は鼻の最も奥にあるため、がんが大きくなると鼻づまりを感じます。がんから出血をすると鼻血も出ます。鼻血は前にたれるより、のどの奥に流れることが多いです。少し粘り気のある鼻水に、血が混じることもあります。長期間にわたって、鼻血や血の混じる鼻水がある場合は、一度、耳鼻咽喉科に相談してみてもよいかもしれません。

  • 脳神経症状:顔のしびれ、ものが2重に見える、など

上咽頭のすぐ上には頭蓋骨があります。上咽頭がんが進行すると、近くにある血管などにそって広がり、脳神経に浸潤し、頭蓋骨の中にまで広がります。脳神経とは脳から直接分岐する神経で、それぞれ重要な働きをもっています。浸潤とはがんが隣り合った組織に入り込むようにして広がってくることを言います。

上咽頭がんで浸潤されやすい神経は、顔の感覚を担当する三叉神経(さんさしんけい)と、目の動きを担当する外転神経(がいてんしんけい)です。三叉神経に浸潤すると顔のしびれなどの症状が出ます。外転神経に浸潤すると、ものが二重に見えます。

がんが更に広がると他の脳神経にも浸潤し、視力低下、嗄声(させい:声がれ)、鼻に食べ物や飲み物が回る、ろれつが回りにくいなどの様々な症状がでます。

中咽頭がんに起こりやすい症状

  • のどの違和感、痛み
  • 飲み込み時の違和感
  • 首のしこり

特に進行すると出やすい症状もあります。

  • のどからの出血
  • 口が開けにくくなる
  • 飲み込み時のムセ込み
  • 呼吸が苦しくなる

がんの初期では症状がないことがほとんどですが、のどの違和感や軽度の痛みを感じたり、食事を飲み込む時にしみるような感じがでることがあります。

初期では腫瘤(しゅりゅう;かたまり)や粘膜がえぐれたような潰瘍は、はっきりしないこともあります。中咽頭がんでは、頸部リンパ節転移が起こりやすく、がんが転移したリンパ節をしこりとして触れます。初診時に2/3の人に頸部リンパ節転移があります。

ヒトパピローマウイルスが関連した中咽頭がんでは、原発巣(もともとのがんの部位)がごく小さくて目に見えないサイズでも、大きな頸部リンパ節転移があることがあります。のどの症状が全くない場合もあります。頸部リンパ節転移のしこりは、一般的には硬く、痛みはありません。周囲の組織とくっついているため、指でつまんで動かそうとしてもなかなか動きません。

頸部のしこりのみでは他の病気の可能性もありますが、頸部のしこりに加えて、のどの違和感などがある場合は、一度医療機関に受診して調べてみましょう。

がんが進行すると、がんから出血したり、がんがまわりに広がると大きく口を開けられなくなったり、飲み込みが上手くできず、むせこむことがあります。時にはがんが大きくなって、呼吸の経路を塞いで、呼吸が苦しくなることがあります。

下咽頭がんに起こりやすい症状

  • のどの違和感、痛み
  • 飲み込み時の違和感
  • 耳の痛み
  • 嗄声(声がれ)
  • 首のしこり

下咽頭がんも初期では症状がないことがほとんどです。のどの違和感や軽度の痛みを感じたり、食事を飲み込む時にしみるような感じがでることがあります。

症状が進行すると、耳の痛みや、嗄声(声がれ)がでることがあります。下咽頭には耳の痛みの神経と同じ神経があり、下咽頭がんによる痛みが、耳の痛みとして感じることがあります。下咽頭がんが周囲にひろがると、声帯の動きが悪くなって、声がれが出ます。更に進行してがんが大きくなると、がんによって気道が狭くなり、息苦しさがでてくることがあります。

下咽頭はまわりのリンパ流が豊富なため、リンパ流にがん細胞がのって、転移しやすい部位になります。最初に転移するのは、首のリンパ節で、がんがある方の首のリンパ節が腫れて、首のしこりとして触れることがあります。がんの転移のリンパ節は一般的には硬く、痛みはありません。周囲の組織とくっついているため、指でつまんで動かそうとしてもなかなか動きません。下咽頭がんのうち、首のしこりに気がついて受診する人は20%程度です。実際には、初診時に、60-70%の人に頸部リンパ節転移があります。

2. どんなときに咽頭がんを考えたほうが良いか?

咽頭がんに起こりうる症状はいずれも、咽頭がん以外でも起こることがあります。急性上気道炎かぜ症候群)などの症状と違い、のどの違和感や、痛みなどの症状が、1ヶ月以上などの長期間に渡って続くことが特徴です。もちろん、長期間の症状がある場合でも、必ずしも咽頭がんとは限りません。

上咽頭がんの症状の1つである鼻出血は、他の腫瘍が原因になることもありますし、鼻出血を繰り返す内科の病気もあります。鼻づまりはアレルギー性鼻炎や、慢性副鼻腔炎でも起こります。耳のこもった感じは、突発性難聴や、滲出性中耳炎などでも起こります。

咽頭がんでは、のどの症状が出る前に頸部リンパ節転移による、首のしこり(塊)を触れることもあります。頸部リンパ節炎などの炎症と異なる点は、痛みを伴わないことと、長期間腫れが続くことです。これらの症状がある場合も、一度耳鼻咽喉科に受診してみましょう。

3. 咽頭がんの初期症状にはどんなものがある?

咽頭がんの初期にはいずれも症状がでないことがほとんどです。そして、咽頭がんの症状もいずれも咽頭がんのみで起こる症状はありません。しかし、かぜ症候群などの場合は、1ヶ月以上、症状が持続することはありません。症状が持続する場合は、がんの可能性もありますので、耳鼻咽喉科に受診しましょう。

4. 咽頭がんが末期になるとどんな症状が出るのか?

咽頭がんが進行した時の症状は、咽頭がんができた部位によって異なります。頸部リンパ節転移が大きくなったり、肺転移が進行した場合はいずれの部位でも似たような症状になります。それぞれについて見ていきましょう。

上咽頭がんが進行した時の症状

上咽頭は頭蓋骨のすぐ下にあるため、上咽頭がんが進行すると、近くにある血管などにそって広がり、脳神経に浸潤します。頭蓋骨には脳神経や血管を通す小さい穴がたくさん合いていますが、その穴から頭蓋骨の中にがんが広がります。脳神経とは脳から直接分岐する神経で、それぞれ重要な働きをもっています。浸潤とはがんが隣り合った組織に入り込むようにして広がってくることを言います。

上咽頭がんで浸潤されやすい神経は、顔の感覚を担当する三叉神経(さんさしんけい)と、目の動きを担当する外転神経(がいてんしんけい)です。三叉神経に浸潤すると顔のしびれなどの症状が出ます。外転神経に浸潤すると、目で横をみた時に、ものが二重に見えます(複視:ふくし)。

更に進行すると視力低下、全方向性での複視なども起こります。その他に、軟口蓋(なんこうがい:のどちんこのあたり)の動きが悪くなって、話す時に声が鼻に抜けたり、飲み込み時に鼻に食事や水が周ることがあります。声がれ、ろれつが回らないなどの様々な症状がでます。

リンパ節のうち、鼻の奥の外側にある、外側咽頭後リンパ節(ルビエールリンパ節)に転移しやすく、難治性の頭痛の原因になります。

中咽頭がんが進行した時の症状

中咽頭がんが進行すると、がんが大きくなって、食事、呼吸の通路が狭くなります。食事の経路が狭くなると、飲み込みが上手くできず、むせこむこんだり、誤嚥を起こすことがあります。呼吸の経路が狭くなると、呼吸が苦しくなることがあります。食事をした時に食事ががんにぶつかったり、飲み込み時に周囲の粘膜にぶつかって、出血を起こすことがあります。がんが大きくなると、周囲の神経や筋肉に浸潤して、飲み込み時に食事や飲み物が鼻にまわったり、口を大きく開けられなくなることがあります。転移は、頸部リンパ節の他、肺、肝臓、骨などにします。

下咽頭がんが進行した時の症状

下咽頭がんが進行すると、がんが大きくなって、食事を通る通路が狭くなります。のどの痛みや、のどと同じ痛みの神経が通る耳も痛くなります。がんにより声帯の動きが悪くなり、声がれが進行します。がんが大きくなると、空気の通り道も塞ぐようになり、呼吸がしにくくなります。がんにより食道の入り口が狭くなることと、声帯の動きが悪くなることから、食事や水を飲み込む時にむせやすくなります。時には誤嚥(食べ物が気管に入ること)をおこし、嚥下性肺炎誤嚥性肺炎)などを起こす可能性があります。

下咽頭がんが転移しやすい場所は、頸部リンパ節の他、肺、肝臓、骨などです。リンパ節のうち、鼻の奥の外側にある、外側咽頭後リンパ節(ルビエールリンパ節)に転移すると、難治性の頭痛になります。

咽頭がんで頸部リンパ節転移が進行した時の症状

咽頭がんが頸部リンパ節に転移して、大きくなった場合にはくびが腫れることがあります。くびが腫れて痛みが出たり、感染を起こして皮膚が赤くなることがあります。まれに、皮膚をやぶって、がんが出て来て、出血などを起こすこともあります。

咽頭がんの肺転移が進行した時の症状

咽頭がんでは肺転移を起こすことがあります。最初は無症状ですが、進行すると胸に水が溜まり(胸水:きょうすい)呼吸が苦しくなることがあります。胸水を減らす方法としては、胸に針やチューブなどを刺して水を抜く方法や、再度水が溜まらないように治療する方法もあります。その他に、呼吸の苦しさを緩和するために、酸素を吸ったり、薬で対処する方法もあります。

5. どんな人が咽頭がんになりやすいのか?咽頭がんの原因は?

咽頭がんの主な原因としては飲酒や喫煙が有名ですが、ウイルス感染も大きな原因の1つになります。

飲酒(アルコール)

飲酒は咽頭がんの最も大きなリスクになります。少量の飲酒でも顔が赤くなる人は、フラッシャーと呼ばれ、咽頭がんになりやすいことが知られています。アルコールの代謝によって生じるアセトアルデヒドは、細胞毒性や突然変異を起こしやすくしたり、発がん性をもちます。フラッシャーはアセトアルデヒドを分解する酵素が欠損しており、アセトアルデヒドによる細胞障害が起きやすく、がんになりやすいのです。

喫煙(タバコ)

喫煙も咽頭がんのリスクになります。咽頭がんの原因のうち、喫煙が関与する人が24.3%、飲酒と喫煙両方が関与する人が41.6%います。飲酒をまったくしない人の中で、まったく喫煙をしない人に比べて、1日1-20本の喫煙をする人は2.2倍、1日20本より多く喫煙する人は4.15倍(オッズ比)、頭頸部がんになりやすくなるという報告があります。

参照:Cancer Epidemiol Biomarkers Prev February 1 2009 (18) (2) 541-550.

食事

頭頸部がんは、主に喫煙、飲酒、ウイルス感染との関連がある一方、食事や運動とはあまり関連しないと言われています。

遺伝

この遺伝子を持っていれば必ず咽頭がんになるというものは現時点では見つかっていません。

中咽頭がんに関しては、有害物質の解毒作用に関わる遺伝子のタイプによって治療後の経過などに差があったという報告があります。この遺伝子異常があると、タバコの有害物質の解毒や、ヒトパピローマウイルスの排除に何かの影響を与えているのではないかと予想されています。この遺伝子異常のみでは発がんは説明できません。様々な要因が合わさって、がんになると考えられます。

参照:Cancer Epidemiol. 2013 Aug;37(4):505-11.

ウイルス

  • 上咽頭がんのウイルス:EBウイルス(エプスタインバールウイルス)

上咽頭がんの原因として、EBウイルスの感染があります。EBウイルスは、上咽頭がん以外にも、胃がんやリンパ腫などの悪性腫瘍と関連することが知られています。

EBウイルスは幼少期に大きな症状を出さずに感染して、そのまま体に住み着きます。ほとんどの健康な大人がEBウイルスを持っています。幼少期に感染せずに大人になって感染すると、伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう)になります。

EBウイルスに感染した細胞が様々な要因によって、がん化すると考えられています。ほとんどの人がもっているウイルスですが、全ての人ががんになるわけではありません。

血液検査やがんの組織からEBウイルスを調べることができます。血液中のEBウイルスの抗体価や、EBウイルス量が多いと上咽頭がんになりやすいという報告や、上咽頭がんの治療後に再発しやすいという報告もあります。現時点では、EBウイルスの感染の有無で、治療方針などは変わりません。

参照:N Engl J Med 2001; 345:1877-1882. Cancer Sci. 2004 Jun;95(6):508-13. Cancer. 2013 Mar 1;119(5):963-70.

  • 中咽頭がんのウイルス:ヒトパピローマウイルス

ヒトパピローマウイルスは、子宮頸癌の発症に関与するウイルスとして有名です。咽頭がんの中では、主に中咽頭がんの発症に関連します。頭頸部がんは喫煙率や、飲酒量の低下によって、世界的に減少傾向にあります。しかし中咽頭がんは増加傾向にあります。中咽頭がんが増加しているのは、ヒトパピローマウイルスの感染が原因となる中咽頭がんが増加しているためと考えられています。

ヒトパピローマウイルスには種々の型があります。そのうち16型が子宮頸がんや中咽頭がんの発症に関連すると言われています。16型が検出された場合の子宮頸がんになりやすさ(オッズ比)は、検出されない場合の434倍とした推計があります。同様に中咽頭がんでも274倍という推計があります。肺がんでは喫煙者と非喫煙者を比べて10倍ほどの違いがあることと比較すると、ヒトパピローマウイルスによる違いは非常に高い値であることがわかります。

ヒトパピローマウイルスが原因となった中咽頭がんでは、放射線や抗がん剤が効きやすく、生存率が良いです。治療方法は、手術治療ではなく放射線と抗がん剤の併用で治療することが多いです。

生存率が良いことを反映して、2017年に発表されたがんの進行度を表すTNM病期分類第8版では、ヒトパピローマウイルスに関連した中咽頭がんは、従来よりも軽い進行度に分類されることになりました。

参照:J Natl Cancer Inst Monogr. 2003;(31):3-13. J Clin Oncol. 2013 Jul 20.