えいちてぃーえるぶいわんかんれんせきずいしょう
HTLV-1関連脊髄症(HAM)
HTLV-1というウイルスの感染が原因で脊髄に慢性的に炎症が起こる病気
9人の医師がチェック 54回の改訂 最終更新: 2020.01.10

HTLV-1関連脊髄症(HAM)の基礎知識

POINT HTLV-1関連脊髄症(HAM)とは

HTLV-1関連脊髄炎(HAM)はHTLV-1という成人T細胞性白血病を起こすウイルスによって脊髄に慢性的な炎症が起こる病気です。HTLV-1に感染したら必ずHAMになるわけではなく、感染者の0.25%がHAMになるということが分かっています。主な症状は歩行障害・頻尿・残尿感・感覚障害ですが、重症になると筋力が低下し下半身の発汗障害が出てきます。 MRI検査で脊髄の程度を調べ、血液検査でHTLV-1の感染を確認することで診断します。治療に特効薬はありませんが、炎症を抑えて神経のダメージが進行しないように治療(ステロイド薬やインターフェロン療法など)します。HAMが心配な人や治療したい人は、感染症内科や神経内科を受診して下さい。

HTLV-1関連脊髄症(HAM)について

  • HTLV-1というウイルスの感染が原因で脊髄慢性的炎症が起こる病気
    • HTLV-1ウイルスは、成人T細胞性白血病ATL)の原因ウイルスとしても知られている
  • HTLV-1の感染経路としては母親から子への母乳を介する感染が多い
    • 現在は妊婦健診の公費助成項目となっている
    • 性行為により感染する場合もある
    • 過去には輸血により感染した事例もあった
  • HTLV-1に感染している全ての人に発症するというわけではない
    • HTLV-1感染者がHAMを発症する可能性は、生涯でおよそ0.25%(400人に1人)と高くない
  • 日本には約3,000人の患者がいるとされる
    • 西日本、特に九州、沖縄に多い
    • 中年以降での発症が多いが、子どもでも発症することがある
    • 女性の方が発症が多い(男女比は約1:2)

HTLV-1関連脊髄症(HAM)の症状

  • ます最初に歩行障害が起こることが多い
  • 主な症状
    • 痙性歩行障害:足のつっぱった感じがあり、内股で爪先立ちするように歩いたり、膝や足ががくがくと震える
    • 排尿障害頻尿残尿感、尿失禁、繰り返す膀胱炎など様々
    • 軽度の感覚障害:下半身でしびれや痛みが続く
  • 重症の場合の症状
    • 手足の脱力・筋力低下
    • 下半身の発汗障害:汗による体温調節がうまくできなくなる
    • (男性の場合)インポテンス
  • 自己免疫疾患シェーグレン症候群など)を合併することがある

HTLV-1関連脊髄症(HAM)の検査・診断

  • 血液検査、髄液検査
    • HTLV-1の存在と量を確認する
    • HTLV-1に対する抗体の確認
  • MRI検査などで脳や脊髄病変の状態を観察する

HTLV-1関連脊髄症(HAM)の治療法

  • HTLV-1ウイルスを抑える治療法はないが、炎症を抑えて神経の症状が進行しないようにすることが重要になる
  • 主な治療法は薬物療法となる
    • ステロイド薬:炎症を抑える
      • 症状の進行が早い場合はステロイドパルス療法を行う
      • 内服の場合は、長期間の内服が必要となる
    • インターフェロン(皮下注射):ウイルスを攻撃し、免疫機能を正常に近づける
  • 日常生活で気を付けること
    • 筋力を維持するために家庭で定期的にリハビリをする
    • 少しの段差でつまずきやすいので、転倒や骨折に注意する
    • 尿の出にくさを放置すると尿路感染症や腎臓の機能を悪化させる原因となるので、早めに泌尿器科の診察を受ける
    • 他のHTLV-1関連疾患を発病する可能性もあるので、定期的に医療機関へ受診する

HTLV-1関連脊髄症(HAM)のタグ