せいそうねんてんしょう(せいさくねんてんしょう)
精巣捻転症(精索捻転症)
精巣そのものではなく、精巣とつながっている血管がねじれる病気。精巣が壊死してしまうことがあるので、発症後数時間以内での緊急手術が必要となる
5人の医師がチェック 40回の改訂 最終更新: 2024.12.19

精巣捻転症(精索捻転症)の症状について

精巣捻転が起こると陰嚢に強い痛みと腫れが現れます。また、吐き気や腹痛といった陰嚢とは一見関係しない症状もあります。このページでは精巣捻転症の症状を詳しく説明し、症状が精巣捻転症と似通った病気についても合わせて説明します。

1. 精巣捻転症でよく見られる症状について:痛みや腫れ、吐き気など

精巣捻転症にはすみやかな治療が必要です。次のような症状が現れたら速やかに医療機関を受診してください。

  • 陰嚢の痛み・腫れ
  • 吐き気・嘔吐
  • 腹痛

精巣捻転症は精巣が回転し、それに合わせて精巣とつながる血管(精巣動脈と精巣静脈)がねじれてしまう病気です。血管がねじれると、中を流れる血液が滞り、精巣が痛んだり腫れたりします。また、精巣動脈と精巣静脈はお腹の中の血管とつながっていることから、しばしば腹痛や吐き気などの症状も現れます。

精巣捻転症の成り立ち

注意が必要なのは子どもが精巣捻転症を発症した場合です。乳幼児では症状を十分に言葉で伝えられず、しばしば発見が遅れます。痛い場所がはっきりとしない場合は、親御さんが陰嚢を調べて腫れの有無を観察したり、痛みの有無を聞いてみてください。

また、思春期の子どもでは恥ずかしさのため、痛みを我慢をして受診が遅れてしまうことがあります。疑わしい様子があれば「精巣捻転症」という直ちに治療が必要な病気である可能性を伝えてあげてください。

恥ずかしさの対策としては、親子で「精巣捻転症」という病気について前もって話す機会を設けると良いかもしれません。知識の共有は、恥ずかしさに打ち勝つ方法の1つとなりえます。

2. 精巣捻転症と似た症状が現れる病気について

精巣捻転症の主な症状は陰嚢の痛みと腫れですが、似たような症状が現れる病気がいくつかあります。ここでは代表的な3つの病気について説明します。

精巣、精巣上体、精巣垂の構造

精巣炎

精巣炎は精巣に炎症が起きて腫れたり痛くなったりする病気です。おたふく風邪流行性耳下腺炎)の合併症として起こることが多く、原因ウイルスであるムンプスウイルスが精巣に感染して炎症を起こします。精巣に生じる症状は精巣捻転症と似ていますが、ムンプスウイルスによる精巣炎では、耳の下の腫れ、喉の痛み、発熱などのおたふく風邪の症状をともなうことから見分けられます。精巣炎についてはこちらのページでも詳しく説明しているので、参考にしてください。

精巣上体炎

精巣上体は精巣の上部を覆うようにして隣接している臓器です。精巣上体に炎症が起こると、痛みや腫れといった精巣捻転症と似た症状が現れます。精巣上体炎では高熱が出ることが多いですが、精巣捻転症では多くはありません。精巣上体炎になると自然に治ることははほとんどなく、抗菌薬治療が必要です。 精巣上体炎について詳しくはこちらのページで説明してます。

精巣垂捻転

精巣垂は精巣や精巣上体に存在する数ミリの突起物です。この小さな突起物がねじれた状態を精巣垂捻転といい、精巣捻転症と同様に陰嚢が痛みます。精巣垂捻転であれば自然に治ることがありますが、痛みの原因が精巣捻転症の場合は速やかに手術をしなくてはなりません。。手術の必要性を判断するために、診察や検査が行われます。どちらの病気か判断が難しい場合には、診断と治療の目的を兼ねて手術が行われます。

参考文献

・赤座英之/監, 「標準泌尿器科学」, 医学書院, 2014
・勝岡洋治/編, 「泌尿器科診療ガイド」, 金芳堂, 2011