ひまん(ひまんしょう)
肥満(肥満症)
皮下脂肪、内臓脂肪が蓄積した状態で、BMIが25以上の場合を指す。さらに健康障害などの条件を満たすと「肥満症」に該当する
8人の医師がチェック 89回の改訂 最終更新: 2024.12.04

肥満(肥満症)で知っておくと良いこと

肥満とは脂肪が過剰に蓄積した状態であり、体格指数(BMI)が25以上の状態を指します。予防のためにできること、メタボリックシンドロームとの違い、がんや遺伝との関係など、知っておくと良いことをまとめました。

1. 何科に相談したらよいのか

子どもであれば小児科に相談をしてください。大人であれば内科が適切ですが、かかりつけのお医者さんがいれば、まずは相談してみるのもよいです。相談したお医者さんの判断によっては、肥満外来に紹介されることもあります。(肥満外来はこちらからも検索できます。)

2. 予防のためにできること

食べた分のエネルギーが消費する分を超えると、脂肪として身体に蓄積し、肥満につながります。肥満はなってしまった後で改善を図ることもできますが、まずはならないよう予防したいものです。そのために大事なのは適切な食事と、適度な運動習慣です。しかし、これらを継続して実行するのは簡単ではありません。例えば「よく噛んで食べる」、「ジュースはお茶やお水にかえる」、「階段を使う」など、ちょっとしたルールを取り入れてみるもの一つの手です。

◎よく噛んでゆっくり食べる

食べるスピードが速い人は、遅い人よりも肥満の割合が高いと言われています[1]。食べるスピードが速い人は、よく噛むことを意識してみてください。噛む回数を増やすことで食べるスピードが遅くなり、肥満予防効果が期待できます[2]。とはいえ、漠然とよく噛もうとしても、なかなか実践が難しいと思います。そこで、30回そしゃく法が役立ちます。これは、一口入れるたびに30回噛んでから飲み込むようにする方法です。よく噛むことで、肥満予防だけでなく、食べ物の消化を助けたり、味覚を発達させたりするなどの副次的な効果も期待できます[2]。

◎規則正しい生活

規則正しい生活には肥満予防効果が期待できます[2]。通常、体温やホルモンの分泌などは約24時間の周期で変化することが知られています。このリズムを司っているのが「体内時計」と呼ばれる機構です。このリズムが乱れると肥満につながります。ある報告によれば、体内時計を調節する機能をなくしたマウスは、肥満になったとのことです[3]。

体内時計を整えるには日中に日光を浴びたり、食事を毎食決まった時間に摂ったりすることが効果的です。このような規則正しい生活は、肥満の予防になるだけでなく健康の維持にもつながります。

◎お菓子やジュースを摂りすぎない

菓子類やジュースなどの嗜好品は特に注意が必要です。ついつい食べすぎてしまいがちですし、ちょっとの量しか食べていなくてもたくさんのカロリーが含まれていることが多いからです。とはいえ、全く口にしてはいけないとまで言うつもりはありません。美味しいお菓子は楽しみの一つでもあります。節度ある量にとどめておくことができるならば摂取してもよいでしょう。

以下を参考に自分にあった工夫をして上手に摂るようにしてください。

  • おやつを食べるのは1日1回決まった時間のみとする
  • 食べる量だけ出してから食べる
  • ジュースを水やお茶に置き換える

なお、菓子や嗜好飲料(お酒やジュースなど)のエネルギー量の目安として、食事バランスガイドでは1日200kcal程度にとどめておくとよいとされています。食品パッケージの「栄養成分表示」にエネルギー(熱量)が書いてありますので、買う前・食べる前にチェックしてみてください。

◎運動の習慣をつける

運動には減量や肥満予防の効果に加えて、一度落とした体重を維持する「リバウンド予防効果」があると言われています[3]。激しい運動である必要はありません。中強度の運動で十分効果が期待できます。中強度の運動とは一般的な人では、速歩や自転車に乗るくらいの運動のことです。また、移動を徒歩にする、階段を使うなど、日常生活の中で活動量を増やすことも良い運動になります。

運動習慣のあまりない人が、いきなり激しい運動をすると、長続きしづらいことに加えて、心肺に負担がかかることもあり、無理のない運動から始めることが勧められます。

3. 肥満症とメタボリックシンドロームの違いとは

肥満症とメタボリックシンドロームは似た概念であるものの、多少異なります。体格指数(BMI)が25以上であれば肥満と診断され、肥満による健康の問題があれば肥満症になります。肥満による健康問題とは、たとえば糖尿病や高血圧のことで、11疾患が定められています。

一方で、メタボリックシンドロームとは内臓脂肪の蓄積があり、血中脂質・血圧・血糖のうち2つ以上が異常値となる状態です。メタボリックシンドロームの基準に当てはめることで、BMIが高値でなくても脳卒中や循環器疾患のリスクのあるの人を見つけ出すことができます。

ここで、メタボリックシンドロームの診断基準についてさらに詳しく説明しておきます。

メタボリックシンドロームの診断基準】

(診断項目)
①内臓脂肪の蓄積:腹部CT検査またはウエスト周径(男性85cm以上、女性90cm以上)で該当
トリグリセライド≧150mg/dLまたはHDLコレステロール<40mmHg
収縮期血圧≧130mmHgまたは拡張期血圧≧85mmHg
④空腹時血糖≧110mg/dL

(判定基準)
①を満たし、②-④の少なくとも2項目に該当する。(すでに、②-④に対する薬を使用している場合は、それぞれの項目に該当とする)

ここにでてくる内臓脂肪の蓄積は腹部CT検査で詳しく調べることができます。CT検査とは放射線を用いて身体の断面の画像を映し出す検査です。おへその位置で輪切りにした画像で、内臓脂肪が100cm2以上あれば内臓脂肪が多いとされます。

また、ウエスト周径を測ることでも内臓脂肪が多いかどうかがわかります。ウエスト周径の測定は、腹部CT検査よりも精度は劣りますが、簡便であることから、よく行われます。ウエスト周径が成人男性であれば85cm、成人女性であれば90cmが、先に説明した腹部CT検査での100cm2に相当すると考えられ、それらより長い時には内臓脂肪が多いとされます。ただし、ここでいうウエスト周径はへそを含む高さでの周径であることに注意してください。

このように、体重やBMIと直接関係がなく診断されるのがメタボリックシンドロームです。

4. 肥満とがんとの関係について

肥満とがんは無縁ではありません。肥満の人がなりやすいのは、大腸、食道、子宮体部、膵臓、腎臓、乳房、肝臓のがんです。

これらのうち、大腸がん乳がんの検診は、自治体が実施するがん検診(対策型検診)で、無料または比較的安価に受けられます。希望する人は、各自治体の担当窓口に相談してみてください。これらの検診を受けることによって早期発見早期治療につながり、死亡リスクの低下が期待できます。また、肥満が要因となるがんは、減量することによって、リスクが下がる可能性があります[2]。

5. 肥満は遺伝するのか

肥満に関わる遺伝子はいくつか見つかっています。β3アドレナリン受容体(β3AR)や脱共役タンパク質1(UCP1)などです。遺伝子のタイプによって肥満になりやすさは多少違うものの、大きく肥満に関わっているのは生活習慣です。自分でできる肥満の予防・治療として、生活習慣を見直すことが重要です。

参考文献

1. Nagahama S, et al. Self-reported eating rate and metabolic syndrome in Japanese people: cross-sectional study. BMJ Open. 2014 Sep 5;4(9):e005241.
2. 日本肥満学会. 肥満症診療ガイドライン2016. ライフサイエンス出版. 2016
3. Turek FW, et al. Obesity and metabolic syndrome in circadian Clock mutant mice. Science. 2005 May 13;308(5724):1043-5.
4. Cypess AM, et al. Activation of human brown adipose tissue by a β3-adrenergic receptor agonist. Cell Metab. 2015 Jan 6;21(1):33-8.