やきゅうひじ
野球肘
骨や軟骨が完成していない成長期に球技などによる肘の酷使が原因で生じる肘の障害の総称
6人の医師がチェック 58回の改訂 最終更新: 2024.08.16

野球肘の検査について:レントゲン(X線)検査やMRI検査など

野球肘は成長期に過剰に投球することなどで発症します。野球をしている人で、肘が痛くなっていれば多くは野球肘なので、野球肘の診断自体は簡単につきます。ここでは、肘のどの部位が損傷しているかを調べるための検査について解説していきます。

1. 問診、診察

肘は複数の骨や軟骨、筋肉、靭帯などで構成されます。野球肘と言っても、肘のどの部位がどのように損傷しているかは人それぞれです。そこでお医者さんは、まず以下のような点を中心に問診・診察を行い、損傷している部位を予測します。

【問診・診察でのポイント】

  • 年齢や野球歴
  • 野球をする頻度やポジション(投手や捕手かどうか)
  • 肘が痛む部位と程度(内側、外側、後ろ側など)
  • 痛みの出現状況(次第に、あるいは突然) 
  • 手や指の痺れの有無(薬指や小指の痺れなど)

こうした内容を確認して、野球肘の原因を想定したうえで必要な検査を進めていきます。

2. レントゲン(X線)検査

野球肘に対する検査では、レントゲン検査が最もよく行われます。レントゲン検査では骨の異常が手軽に確認できるものの、軟骨、筋肉、靭帯などを観察するのは困難です。そのため、骨以外の異常も確認する必要がある人では、レントゲン検査に加えてMRI検査がよく行われます。

3. CT検査

CT検査では放射線を用いて肘の断面図を撮影します。レントゲン検査では分かりにくい小さな骨の異常も見つけられます。そのため、レントゲン検査に追加してCT検査も行われることがありますが、筋肉や靭帯などの異常を見つけることはCT検査でも容易ではありません。したがって、野球肘での検査としてはMRI検査のほうが多く行われています。

また、CT検査は、直ちに問題になる量では決してありませんが放射線被曝のある検査なので、子どもでは特にそのリスクも頭の片隅に入れる必要があります。

4. 超音波検査

超音波(エコー)検査は、お医者さんや技師さんがゼリーを塗った探触子(プローブ)を直接肘に当てて行う検査です。リアルタイムで様々な角度から肘の内部の様子を観察できます。検査時間は様々ですが、熟練者であれば数分〜5分ほどで十分に観察が可能です。とても便利な検査ではありますが、熟練した検査者が行わないと正確に異常を検出できないことがあります。

後述のMRI検査と比較すると、野球肘の原因を突き止めるために超音波検査が行われる頻度はそれほど多くありません。一方で、「上腕骨小頭離断性骨軟骨炎」という肘の外側が痛くなるタイプの野球肘を早期発見するにはとても有用とも言われています。上腕骨小頭離断性骨軟骨炎は最も重症なタイプの野球肘であり、初期には症状が出にくいため、これを早期発見できるのは大きなメリットです。そのため、近年は野球をプレーする子供に対する超音波検診が普及してきています。

5. MRI検査

野球肘の原因を詳しく調べるのに極めて有用で客観的な検査です。骨だけでなく、軟骨、筋肉、靭帯などの様子もよく分かるため、レントゲン検査に加えて行われます。MRI装置がある診療所・クリニックは多くないため、検査の際には専門の検査センターや病院に紹介されることもよくあります。

検査費用は3割の自己負担の人では4,000円-5,000円ほどです(20248月時点)。やや高価であるため、レントゲン検査だけで十分に原因が推測でき、軽症の人では必ずしも行われません。