ろうときょう
漏斗胸
胸の正面にある骨である胸骨がうまく成長しないことにより、胸の真ん中が陥没する病気
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最終更新: 2017.12.06
漏斗胸の基礎知識
POINT 漏斗胸とは
漏斗胸は胸骨(胸の正面を縦に走る骨)がうまく成長しないことにより、胸の真ん中が陥没する病気です。400人から1,000人に1人程度いるとされており、さほど珍しい病気ではありません。男性の方が多く見られます。症状はあまり出ないことも多いですが、運動能力の低下、胸の痛み、息切れなどが見られる場合もあります。肺や心臓をよほど圧迫しているなどでなければ治療は行わなくてよいですが、見た目が気になるなどの理由で手術が行われる場合があります。漏斗胸が気になる人、治療を希望する人は呼吸器外科を受診してください。
漏斗胸について
- 胸の真ん中が陥没した状態
- なぜ漏斗胸になるか原因ははっきり分かっていない
- 少なくとも400人から1,000人に1人程度は漏斗胸と言われている
- 逆に胸板が突出している場合は、鳩胸という
- 鳩胸に比べると漏斗胸の方が圧倒的に多い
- 男性に多い(女性の約3-5倍程度)
- 胸郭変形疾患の家族の約半数に胸郭変形疾患がみられる
- 3歳以降に漏斗胸が自然に改善することは滅多にない
- 12歳以降の成長期に悪化するケースも3-4割ほどある
- 寿命には影響しないと報告されている
- 多くは漏斗胸単独の問題だが、マルファン症候群、エーラス・ダンロス症候群、ヌーナン症候群、ターナー症候群、神経筋疾患などの他の病気に伴って漏斗胸になることもある
背骨 の側弯を合併 するケースが数十%あると言われており、そちらも合わせてチェックする
漏斗胸の症状
- 小学校入学前
- 体重が増えにくいことがある
- 小学校入学後〜成人まで
- 精神的な影響が見られる
- 周囲との違いや周囲からの指摘を受けて気にしてしまう
- 気になることで気持ちが落ち込む
- 精神的な影響が見られる
- 成人後
- 胸痛・疲れやすさ・呼吸困難感などがみられることがある
- 無症状のことも多い
漏斗胸の検査・診断
- 視診:外見を観察する
- 視診で診断できることが多い
- 仰向けで寝たときに、乳首を結んだラインより2.5cm以上胸骨が陥没している場合には中等症から重症の漏斗胸であると報告されている
- 画像検査:心臓の状態(大きさや異常の有無)を調べる
胸部レントゲン 検査- 心臓が圧迫されることで異常が見られることがある
背骨 が曲がっていないか(脊椎 側弯)合わせて評価する
胸部CT検査 - 手術前には胸部CT検査が必要である。
- 視診で診断はできるが、胸郭の縦横比を評価するのに非常に有用
心電図 :心臓の電気信号に異常がないか調べる- 心臓が圧迫される影響を受けて異常
所見 が見られることがある
- 心臓が圧迫される影響を受けて異常
呼吸機能検査 :肺の圧迫により呼吸機能が低下していないかを調べる- 漏斗胸があっても肺活量はほとんどの場合で正常範囲内である
- 検査所見の異常はほとんどの場合で、心臓や肺が圧迫されていることによる正常値とのずれであり、心臓や肺そのものの異常ではない
漏斗胸の治療法
- 心臓や呼吸の機能に重大な影響を与えることは稀なので、多くは美容的観点が主目的の治療
保存治療 - 胸を外部から吸引する方法があるが、長期間を必要としその効果も不明
- 手術
- 手術のタイミングはいつが良いのか分かっていないが、骨が成長しきった成人前後がベストという意見が多い
- 金属バーで胸骨を挙上するナス法(Nuss)法という手術が有名
- 専門は呼吸器外科だが、どこの呼吸器外科でもやっているような手術ではないので、治療を希望するならば、手術経験のある近隣の施設を調べてから受診するのがよい