おうしょくぶどうきゅうきんしょくちゅうどく
黄色ブドウ球菌食中毒
黄色ブドウ球菌という細菌が出す毒素によって発症する食中毒
6人の医師がチェック 109回の改訂 最終更新: 2022.06.29

黄色ブドウ球菌食中毒の基礎知識

POINT 黄色ブドウ球菌食中毒とは

黄色ブドウ球菌の作るエンテロトキシンという毒素によって起こる腸炎です。食品に含まれる毒素を口にすることで食中毒になります。毒素は耐熱性であり、加熱しても発症を予防できないことが特徴的です。また、摂取してから1-5時間という短い期間で発症することも特徴です。主な症状は吐き気・嘔吐・腹痛・下痢・発熱ですが、症状は半日程度で改善していきます。 便を用いた細菌検査(培養検査・エンテロトキシンの有無を調べる検査)を行って診断しますが、症状と発症時間から推測して診断することも少なくありません。症状の原因が細菌自体によるものではなく細菌の出す毒素なので、抗菌薬を使用しても症状は改善しません。基本的には治療しないでも自然に治る病気ですが、症状が強い人には症状を和らげる治療(対症療法)が行われます。黄色ブドウ球菌食中毒が心配な人や治療したい人は、消化器内科や感染症内科、救急科を受診して下さい。

黄色ブドウ球菌食中毒について

  • 黄色ブドウ球菌という細菌が原因となった食中毒
    • 黄色ブドウ球菌はエンテロトキシンという毒素をつくる
    • 毒素を食品と一緒に食べることにより、人に危害を及ぼす
    • 毒素は耐熱性であり、食前に加熱しても全く防げない
  • ヒトの手の傷や鼻の粘膜、便などから黄色ブドウ球菌が体内に入ることで起こる
    • ヒトの手が関与する加工食品(弁当、おにぎりなど)が原因となることが多い
  • 夏に発症することが多い

黄色ブドウ球菌食中毒の症状

  • 摂取後1-5時間(平均約3時間)で、吐き気・嘔吐・腹痛・下痢が起こる
    • 食中毒の中で最も潜伏期間が短い
  • 症状の持続時間は短い
    • 数時間のことが多く、長くても半日程度
  • 一般に高熱は出ない

黄色ブドウ球菌食中毒の検査・診断

  • 血液検査、便検査
  • 細菌検査:原因となる食品、糞便、吐物、手拭きなどからの黄色ブドウ球菌、エンテロトキシンがないか調べる
  • 画像検査(レントゲンCT):他の病気でないことを確認するために行われることもある
  • 実際には問診と診察のみから診断されることが多い

黄色ブドウ球菌食中毒の治療法

  • 通常半日から1日程度で症状が自然と改善するため、安静にして脱水にならないよう水分摂取をすることが最も重要
    • 抗菌薬黄色ブドウ球菌を殺してもエンテロトキシンは残っているので効果がない
  • 重症の場合でも補液と対症療法で様子を見ることがほとんど
    • 脱水症状を起こした場合は点滴を行う
  • 以下の方法で予防できる
    • 食品を扱う時は手指をよく消毒する
    • 手に傷や化がある場合は食品を取り扱わない
      • 料理人の切り傷から毒素がうつることが多いので、切り傷がある人が料理をする場合は手袋をするなどで防ぐことができる
    • 食品を10℃以下に保つ
    • 調理をする人は、帽子やマスクを着用をするようにする
  • 加熱をしてもすでに産生された毒素は分解されないため予防できない

黄色ブドウ球菌食中毒の経過と病院探しのポイント

黄色ブドウ球菌食中毒が心配な方

黄色ブドウ球菌食中毒は、いわゆる食中毒の中でも有名なものの一つです。黄色ブドウ球菌自体は人の皮膚に普段から存在している菌ですが、これが食品中で繁殖して毒素を作り出すことが問題となります。おにぎりやサンドイッチといったような手づかみで調理するものが原因となりやすいです。

食事をとった後数時間以内に嘔吐や腹痛、下痢といった症状が出現した場合には黄色ブドウ球菌食中毒の可能性があります。しかし、症状のみからその原因が黄色ブドウ球菌だと確定させることはできません。原因となった菌が何であるかを悩む必要はあまりないので、症状が強ければまずは内科や小児科のクリニックを受診してみるのが良いでしょう。大病院でなければ対応ができないような病気ではありませんので、お近くのクリニックの受診が適切です。

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黄色ブドウ球菌食中毒でお困りの方

黄色ブドウ球菌食中毒は、薬で治すことができません。菌そのものが問題であれば抗生物質が効くはずなのですが、実際は菌が分泌した毒が問題となるのが黄色ブドウ球菌による食中毒だからです。毒自体は単なる化学物質なので、抗生物質で分解することはできません。

黄色ブドウ球菌による食中毒は、体内に毒素が入ってから数時間ですぐに症状を発症し、逆に1日程度ですぐに治まるのが特徴です。特効薬がありませんので、下痢と嘔吐で脱水を起こさないよう、少しずつでも水分を摂取しながら、体内の毒素が分解されるのを待つことが治療となります。ですので、症状が辛いときに無理をして病院を受診しなければならないということはありません。
病院を受診すると、他の病気ではないことを確かめられるというメリットはありますが、黄色ブドウ球菌食中毒らしいという診断になったら、その後は特に大きな効果のある薬が処方されるというわけではありません。

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