しんけいがしゅ
神経芽腫
小児の腹部にできることが多い悪性腫瘍。白血病、脳腫瘍に次いで多い。
7人の医師がチェック 141回の改訂 最終更新: 2021.07.26

神経芽腫の基礎知識

POINT 神経芽腫とは

交感神経や副腎髄質に発生する悪性腫瘍です。ほとんどが子どもの頃に発病します。具体的には、0歳から3歳の間に発病することが多く、5歳未満の発病が90%を占めます。腫瘍は全身にできるのですが、ほとんどの場合(約3分の2)お腹にできます。腹痛や発熱、手足の麻痺など腫瘍ができた場所によって、さまざまな症状が現れます。神経芽腫が疑われる場合には、血液検査や尿検査、画像検査(CT検査やMRI検査)などを用いて診断が行われます。治療は進行度によって異なり、手術や抗がん剤治療、放射線治療などから適したものが選ばれます。神経芽腫は小児科や泌尿器科、消化器外科などで治療が行われます。

神経芽腫について

  • 小児の交感神経に関連した部位にできる悪性腫瘍
    • 交感神経は全身を走っているため、できる部位は様々
    • 約65%がお腹にできる
    • 副腎にできることも多い
    • 交感神経のもとになる細胞が異常に増え続ける
    • 白血病脳腫瘍に次いで多い小児がん
  • 原因は不明
  • 国内で年間 150-200 人前後の発症
    • 診断時の年齢は0-3歳が多い(90%が5歳未満)
    • 10歳以降に発生することはまれ
    • 約70%は診断された時にはすでに他の臓器へ転移がみられる(リンパ節、骨、肝、皮膚など)

神経芽腫の症状

  • 初期の段階では、ほとんどが無症状
    • 健診や他の病気で行った検査などで偶然みつかる
    • まれにお母さんのお腹の中にいる時に超音波検査で見つかることもある
  • 進行してくると様々な症状が現れる
    • がんができた部位によって症状は大きく異なる
    • 転移による症状で初めて気づかれることもある
      • 手足の麻痺
      • 歩行障害
      • 発熱
      • 貧血
      • 腹痛
      • 腹部膨満
      • 不機嫌
      • 呼吸障害
      • 骨の痛み
      • 眼窩出血
      • 膀胱直腸障害(排尿・排便がうまくできない)   など

神経芽腫の検査・診断

  • 組織検査で腫瘍細胞があること、もしくは骨髄検査で腫瘍細胞があることと腫瘍マーカーが上がっていることで診断する
  • その他に全身の状態や転移の有無を調べるために様々な検査が行われる
    • 血液検査:腫瘍マーカーや肝臓・腎臓の値などを調べる
    • 尿検査:腫瘍マーカーを調べる
    • 画像検査:腫瘍の大きさや位置、転移の有無などを調べる        病期(どの程度病気が進行しているか)を決定するために重要
      • 超音波検査X線レントゲン)写真、腹部CT検査腹部MRI検査
      • MIBGシンチグラフィ
      • 骨シンチグラフィ
    • 組織診断:腫瘍を一部切り取り、顕微鏡で細胞の形や細胞の並びなどをみる(病理検査)
    • 骨髄検査:骨髄に針を刺すか一部を切り取って、骨髄の中に腫瘍細胞が存在するか調べる
    • 遺伝子検査、染色体検査:予後を予測するために特定の遺伝子変異や染色体異常がないか確認する
  • 腫瘍マーカーとしては尿中バニリルマンデル酸(VMA)やホモバニリン酸(HVA)が使われる
    • 血中乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH), 神経特異性エノラーゼ(NSE), フェリチンなどが高値になることもあるが、神経芽腫以外でも上昇しうるため解釈には注意が必要

神経芽腫の治療法

  • 病期発症時の月齢、病理検査の結果、遺伝子変異の有無、染色体の本数などにより治療法は大きく異なる
    • 様々な検査を元に治療前にリスクを低・中・高の大きく3段階に分ける
    • リスク分類により治療法を決定していく
    • 発症時の年齢は18か月未満の方がリスクは低い
  • 手術療法:リスクが低い場合には手術だけで良いこともある
  • 化学療法抗がん剤による治療
    • シスプラチン・シクロホスファミド・ドキソルビシン・カルボプラチン・エトポシドなど
    • 手術や放射線療法と組み合わせて行う
    • 副作用は必発だが、薬の種類により様々
    • 予後不良群では造血幹細胞移植を組み合わせて大量化学療法を行うこともある
    • 大量化学療法後にはジヌツキシマブという薬が使われることがある
  • 放射線療法:腫瘍のある部位に放射線を当てて腫瘍の死滅を狙う
    • 化学療法や手術だけでは不十分な例で行うことが多い
  • 予後はリスク分類の結果によって大きく異なる
    • リスク分類の結果により、無病3年生存率(再発なく3年後に生存している人の割合)は20%以下から90%以上まで幅がある 
    • 乳児では自然に消えることもあり、予後良好
    • 再発例の予後は不良で、治療法も定まったものはない

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