たいべんきゅういんしょうこうぐん
胎便吸引症候群
胎児が分娩前に胎便を羊水中に排泄し、それを出生時に吸い込んで呼吸困難を起こした状態
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最終更新: 2019.02.19
胎便吸引症候群の基礎知識
POINT 胎便吸引症候群とは
胎児が分娩前に胎便を羊水中に排泄してしまい、産まれるときに胎便を吸い込んで呼吸困難を起こした状態のことです。吸引した便によって気道が閉塞することや肺炎によって呼吸障害が起こります。胎便吸引症候群から新生児仮死になったり脳に障害が残ったりすることがあります。産まれた直後から多呼吸(呼吸数が多い)や鼻翼呼吸(鼻を膨らませるような呼吸)、呻吟(うーうーとうなるような呼吸)などが現れます。胎便吸引症候群が疑われる新生児には呼吸を助ける管が挿入されたり、胎便の吸引が行われます。
胎便吸引症候群について
- 何らかの原因で胎児が羊水内に胎便(胎児の腸管内容物)を排泄し、それを気道内に吸引することで起こる病気
- 胎児が低酸素にさらされることや予定日超過が胎便排泄の原因となる
早産 児では起こりにくい- 新生児仮死に
合併 しやすい - 胎便により気道が閉塞されること、化学性の肺炎が起こること、肺を膨らませる成分(サーファクタント)の働きが阻害されること等により呼吸障害が生じる
- 全ての分娩のうち0.1-3%程度で起こると考えられている
- 羊水中への胎便排泄は全分娩の10-20%程度で起こる
- 胎便を排泄した胎児の約5-10%で胎便吸引が起こる
- 肺高血圧(肺の血圧が上昇すること)を生じることもあり注意が必要
- 新生児仮死に合併しやすいこともあり、脳に障害を残すこともある
合併症 の有無により生命予後 は大きく変わる
胎便吸引症候群の症状
胎便吸引症候群の検査・診断
胎便吸引症候群の治療法
- 軽症の場合は酸素を投与するだけで呼吸が落ち着くこともあるが、多くの場合に気管挿管が必要になる
- 口の中から管を入れて、呼吸を手助けする
- 気管挿管中は動いて管が抜けたりすると危険なので、鎮静(薬で眠らせること)や筋弛緩薬が必要になる
- 呼吸状態が落ち着くまで授乳はできない
- ある程度呼吸が落ち着いた時点で、鼻から胃に通した細い管(胃管)から母乳(もしくはミルク)を少量投与することがある
- 栄養や水分の補給は点滴から行う
- 生理食塩水で気道内を洗浄する(肺を膨らませる物質:サーファクタントを使うこともある)
- 1週間前後は気管挿管が必要なことが多いが、重症度により大きく変わる
細菌 感染が疑われるような場合には抗菌薬 を使用する- 新生児では呼吸障害に伴い、血圧が低下したり
徐脈 になることも多い- 必要に応じて血圧をあげるような薬剤を使用する
- 気胸を伴った場合は、細い管を胸部に刺して肺を膨らませる
- 肺高血圧を伴い重症化した場合には、一酸化窒素吸入療法や膜型やECMO(体外循環の一種)が必要になることもある