急性胃炎・急性胃粘膜病変(AGML)とはどのような病気か
急性胃炎・急性胃粘膜
1. 急性胃炎・急性胃粘膜病変(AGML)とは

胃や十二指腸に急性炎症を起こす病気を「急性胃炎」もしくは「急性胃粘膜病変」と呼びます。英語では「Acute gastric mucosal lesion」という名前がついており、略して「AGML」と呼ばれます。急性炎症とは具体的にどのような状態かと言うと、胃粘膜が赤くなっていたり、びらん(胃粘膜に浅い傷がつくこと)や潰瘍を起こしている状態です。時には粘膜からの出血が見られる場合もあります。ちなみに、上部
AGMLの特徴を一言でまとめると、「急におなかの上のほうが痛くなり、内視鏡検査で胃粘膜に異常を認める病気」ということになります。いわゆる胃炎や胃潰瘍とも重なる部分がある病気です。AGMLの特徴は、びらんや潰瘍が多発する点や潰瘍の深さが浅いことが多いという点にあります。
AGMLは男性に起こりやすいことが知られています。どの年齢でも起こる病気ですが、若い世代ではストレスが原因になることが多く、60歳以上など高齢者では薬剤が原因になることが多いです。
2. AGMLの原因
胃は強力な酸である胃酸を分泌する臓器です。胃酸によって食べ物を消化することができますが、自らを消化してしまわないように胃粘膜を保護する働きが備わっています。この胃酸(攻撃因子)と胃粘膜保護(防御因子)のバランスが崩れると胃酸によって胃粘膜に傷がついてしまいます。AGMLの原因には、攻撃因子が過剰に強めてしまうものや防御因子の働きを弱めてしまうものが含まれます。具体的には以下のようなものがあります。
- ストレス
- 薬剤:非ステロイド性抗炎症薬(
NSAIDs ;ロキソニン®など)など - アルコール
- 食事
感染症 :ヘリコバクター・ピロリ菌、サイトメガロウイルスなど- 医療行為:肝動脈
塞栓 療法、食道静脈瘤硬化療法など - 全身疾患:肝硬変、慢性腎不全、外傷、熱傷など
AGMLの人のうち原因が明らかになるのは40-60%程度と言われており、約半数の人では原因がはっきりしないことがあります。それぞれの原因について詳しくはこちらで説明してます。
3. AGMLで見られる症状
みぞおちのあたりに突然痛みが起こるのはAGMLの人によく見られる症状です。強い痛みを感じることが多く、心筋梗塞など他の病気と間違われることもあります。
その他に以下のような症状が見られることもあります。
- 吐き気、嘔吐
- おなかの不快感
- おなかの膨満感
- 食欲低下
吐血 、下血
これらの症状がある場合にはAGMLが疑われますが、おなかの病気では似たような症状が出ることがあるため、他の病気が隠れていないかを医療機関で調べる必要があります。
4. AGMLの検査
AGMLの検査ではまず
問診
問診では受診のきっかけになった症状を中心に、これまでにかかった病気や普段から飲んでいる薬の内容などについて詳しく聞かれます。
- 症状について
どのような症状がいつから起こったかを質問されます。痛みについては場所や強さ、痛みの種類などについて聞かれます。 - これまでにかかった病気について
今までに経験した病気について、何歳のころにどのような病気にかかったか、どのような治療を行ったかを質問されます。 - 普段から飲んでいる薬について
内服薬 がAGMLの原因になることがあるため、飲んでいる薬の内容について詳しく質問されます。お薬手帳など薬の名前がわかるものを持って診察にのぞむと情報が伝えやすくなります。 - 飲酒や喫煙について
飲酒量が多い人やアルコール度数の高いお酒を飲む人は、アルコールがAGMLの原因となることがあります。普段から飲んでいるお酒の種類、量、週に何日飲酒するかなどを質問されます。
また喫煙は胃潰瘍などの原因になることがあるため、一日の喫煙量やこれまでの喫煙期間などについて聞かれます。
身体診察
身体診察では腹部を中心とした
画像検査
画像検査では上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で胃粘膜の状態を調べます。
先端に
AGMLでは胃に炎症があることを示す粘膜の
AGML以外の病気が隠れていないかを調べるために、腹部超音波検査やCT検査などを行う場合もあります。
5. AGMLの治療
AGMLの原因が明らかな場合には、その原因を取り除くことがもっとも基本的な治療です。その上で胃酸の量を減らしたり胃粘膜を保護するような薬物治療を行います。出血が起きている場合には内視鏡を使った止血術が行われます。
原因を取り除く
AGMLの人の約半数ではストレスや薬剤などの原因が判明します。AGMLの治療ではまずこれらの原因を取り除くことが重要です。精神的ストレスを取り除くことは簡単ではありませんが、一時的な対応として入院治療を行うことでストレスの要因から離れることができます。非
食事療法
AGMLの症状が強かったり、出血を起こしている場合には入院して食事を止めます(絶食)。食事を止めている間は脱水や栄養不足にならないように点滴治療を行います。
食事を再開する場合は、流動食(スープ状の食事)や柔らかいおかゆのような食事からはじめます。胃への負担を減らすために塩分や脂肪の多い食事、辛い食事、硬いおかずは避けたほうが良いでしょう。食事を食べても症状が悪化しなければ、1-2日ごとに普段の食事に近づけていきます。
薬物治療
AGMLの薬物治療では胃酸の分泌を抑える薬や胃粘膜を保護する薬を使います。具体的には以下のような薬剤が用いられます。
- 胃酸を抑える薬:プロトンポンプ阻害薬(PPI)
- 胃酸を抑える薬:H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)
- 胃粘膜保護剤
- アルギン酸(主な商品名:アルロイドG)
- 制酸剤
- 漢方薬
この中ではプロトンポンプ阻害薬が使われることが多いですが、病状に応じて他の薬を用いたりいくつかの薬を組み合わせて内服することもあります。
内視鏡的止血術
びらんや潰瘍から出血が起こっている場合には、内視鏡を使って止血術を行います。止血術に使う治療器具は内視鏡の中を通して内視鏡の先端から出すことができ、カメラで出血している場所を観察しながら止血処置を行います。
なお、AGMLは自然に治ることがあるのか、再発はするのか、などのよくある質問については「急性胃炎・急性胃粘膜病変(AGML)で知っておくとよいこと」にまとめましたので、参考にしてみてください。
参考文献
・小俣政男, 千葉勉/監修, 「専門医のための消化器病学第2版」, 医学書院, 2013
・Jensen PJ, Feldman M, Acute hemorrhagic erosive gastropathy and reactive gastropathy. UpToDate (2020.5.2最終更新)
・Feldman M, Jensen PJ, Gastritis: Etiology and diagnosis. UpToDate(2020.5.2最終更新)
・gastropedia:急性胃粘膜病変(2020.7.31閲覧)