ぜんりつせんえん
前立腺炎
前立腺が炎症を起こした状態のことで、陰部の痛みや排尿障害、発熱の原因となる
7人の医師がチェック 104回の改訂 最終更新: 2022.05.30

前立腺炎の人が日常生活で注意することや再発予防などについて

前立腺炎はどのようにして治療を始めて治療後にはどのようなことをすれば再発を予防できるのでしょうか。ここでは前立腺炎の人が日常生活で注意することや再発予防のためにできることなどを解説します。

1. 前立腺炎は自然治癒する?

前立腺炎は急性と慢性の2つに分けることができますが、どちらにしても治療をせずに治ることは難しいです。急性前立腺炎と一部の慢性前立腺炎は細菌感染が原因です。このために抗菌薬による治療が有効です。慢性前立腺炎の中には原因がわからないものもありますが、前立腺炎症を抑える薬などで効果が望めます。

前立腺炎を疑う症状がある場合は、自然治癒を期待して医療機関の受診を先送りにするのではなく、早めに医療機関を受診した方が症状が早く良くなることが期待できます。

2. 前立腺炎は何科で治療できる?

前立腺炎は主に泌尿器科または感染症科で治療することができます。

泌尿器科では前立腺炎以外の前立腺の病気についても調べることができます。例えば前立腺肥大症前立腺がんなどです。

感染症科は感染症のスペシャリストなので細菌や抗菌薬についての知識が豊富です。前立腺炎の中でも急性前立腺炎と一部の慢性前立腺炎は細菌感染が原因です。感染症科は抗菌薬が効きにくい細菌が感染を起こしている場合などの治療に長けています。

3. 前立腺炎の人が日常生活で注意すること

前立腺炎の人は日常生活でどのようなことに注意して過ごせばいいのでしょうか。日常生活で心がけたいのは前立腺炎を悪化させないようにすることです。特に大切な生活での注意点を2つ解説します。

デスクワークや自転車(または自動車)の運転時の注意点

長時間のデスクワークや自転車(自動車)の運転は前立腺に刺激を与えてしまうと考えられています。なぜなのでしょうか。

図:前立腺と周りの臓器の位置関係。

前立腺は肛門と陰茎の根本の間の奥にあります。座った状態ではちょうど前立腺が圧迫されてしまいます。炎症を起こしている場所を圧迫する行為は症状を悪化させる恐れがあります。デスクワークや自転車(または自動車)の運転時には以下のことを参考にしてみてください。

  • 時間を決めて休憩をとる
  • 座布団やクッションを使って圧迫をとる

デスクワークや自転車(または自動車)の運転を長い時間すると前立腺も長時間圧迫されてしまいます。長時間のデスクワークや運転をするときには時間を決めて休憩をとり立ち上がったりすることで前立腺への負担を軽くすることができます。

とはいえ仕事や運転を長時間同じ姿勢でやらなければならないこともあります。その場合には、座布団やクッションを使うと前立腺への圧迫をとることができるかもしれません。座布団やクッションにも種類が色々あるので素材や硬さなどで自分に合うものを探してみるとよいでしょう。

飲酒に関する注意点

過度な飲酒は前立腺炎の症状が悪化することがあります。飲酒の量が増えると前立腺がむくんだり膀胱の収縮が弱くなります。前立腺のむくみや膀胱の収縮力の低下は排尿困難感や排尿時痛が強くなる原因になります。

過度な飲酒は前立腺炎の症状に悪い影響を及ぼします。飲酒は適切な量を守ることで症状が悪化しないようにする助けとなります。

4. 前立腺炎の再発を予防するにはどうすればいい?

前立腺炎が治った後には二度と繰り返さないようにしたいものです。「前立腺炎は再発するのか?」という疑問から始め、再発を予防するために確認しておくべきことなどについて解説します。

前立腺炎はなぜ再発する?

前立腺炎には急性前立腺炎と慢性前立腺炎があり、どちらも再発することはあります。急性前立腺炎と一部の慢性前立腺炎は細菌感染が原因です。細菌感染は何回も起こるので前立腺炎が再発することはありえます。再発を防ぐにはどうすればいいのでしょうか。

前立腺肥大症が隠れていないかを調べ治療する

前立腺炎は排尿の状態が悪い人に起こりやすいとされています。排尿障害の原因として多いのが前立腺肥大症です。前立腺が肥大すると尿の流れが悪くなります。尿の流れが悪くなると様々な要因が重なり尿の中で細菌が増殖します。尿の中で細菌が多くなると前立腺に細菌が入り込んで感染を起こすことがあります。

前立腺肥大症のために排尿状態が悪く細菌感染が起きやすい状態は、原因である前立腺肥大症を治療しないと改善が見込めません。前立腺炎になった人は前立腺肥大症がないかを調べてもらうことをお勧めします。排尿状態がよくなれば細菌感染の危険性が下がり前立腺炎の再発予防にもなることが期待されます。

糖尿病があればしっかり治療する

糖尿病の人は感染症への抵抗力が低下することが知られています。糖尿病の治療が不十分で血糖値が高い状態が続いている人は特に注意が必要です。急性前立腺炎と一部の慢性前立腺炎は、細菌感染によって起こります。このために細菌感染に対して抵抗力が落ちている糖尿病の人は前立腺炎の再発に注意が必要です。糖尿病の持病がある人は、前立腺炎の再発を予防するためにも糖尿病の治療をしっかりと行うことが大切です。

5. 前立腺炎が治らない場合にはどうすればいいのか?

前立腺炎の治療をしているのに症状がよくならないときにはどうすればいいのでしょうか。前立腺炎は細菌感染が原因の場合とそうではない場合の2つに分けることができるのでそれぞれで考えてみます。

細菌感染が原因の前立腺炎が治らない場合

細菌感染による前立腺炎は抗菌薬による治療に効果が期待できます。しかし中には治りきらない人もいます。どんな場合でしょうか。

急性前立腺炎は、抗菌薬による治療を開始してしばらくすると薬の効果が現れて症状が軽くなります。症状が軽くなるともう治ったと自己判断して薬を飲むのをやめてしまう人がいます。これはよくありません。治療期間に満たない前に薬をやめてしまうと細菌が再び増殖をして症状がぶり返して治らない状況に陥ります。さらに中途半端な治療のために細菌が抗菌薬に対して耐性を獲得して、薬が効かなくなって治りにくくなることもありえます。

一方で細菌感染が原因の慢性前立腺炎は、急性前立腺炎とは異なりなかなか抗菌薬による効果が現れにくいです。慢性前立腺炎は炎症の程度が激しくないのですが抗菌薬が前立腺に行き渡りにくいのです。このために長期に渡る内服治療が必要なことは珍しくありません。効果がゆっくりなために治療中に効果がないと判断して自己判断で薬を飲むのをやめてしまう人がいます。治療をやめてしまえば症状は良くはなりません。

慢性前立腺炎に対する抗菌薬の効果はゆっくりと現れます。短期間での効果は小さくても医師から伝えられた治療期間中はまず治療を完遂することを目標にしましょう。

抗菌薬の投与期間は、完治の確率が高くなるように考慮された、治療に必要な期間です。治療期間を守らなければ効果が不十分に終わり耐性菌を作ってしまうことがあります。医師から説明された期間は抗菌薬の内服はしっかりと行ってください。

細菌感染が原因ではない前立腺炎が治らない場合

慢性前立腺炎の一部は細菌感染が原因ですが、一方で原因がわからないことも多いです。原因がわからないがために治療は難しくなります。

では治らない前立腺炎はどのように向き合えばいいのでしょうか。まずやるべきことは前立腺炎以外の病気が隠れていないかを調べることです。前立腺に起こる病気は前立腺炎以外にも前立腺肥大症前立腺がんなどがあります。前立腺炎の人に前立腺がん前立腺肥大症が隠れていることはありえますし、そのために症状が良くならないこともありえます。治療をしているにも関わらず症状が良くならないときには他の病気の可能性についても調べておくとをお勧めします。