[医師監修・作成]前立腺炎はどんな病気?症状・原因・検査・治療などの解説 | MEDLEY(メドレー)
ぜんりつせんえん
前立腺炎
前立腺が炎症を起こした状態のことで、陰部の痛みや排尿障害、発熱の原因となる
7人の医師がチェック 104回の改訂 最終更新: 2022.05.30

前立腺炎はどんな病気?症状・原因・検査・治療などの解説

前立腺炎は男性にしかない前立腺という臓器に炎症が起こる病気です。前立腺炎は急性前立腺炎と慢性前立腺炎の2つに分けることができ、それぞれで特徴が異なります。ここでは前立腺炎の症状・原因・検査・治療などを解説します。

1. 前立腺炎とは?

前立腺炎は前立腺という男性にしかない臓器に炎症が起きる病気です。前立腺炎の一部は細菌感染が原因で起こりますが、原因がわからないこともあります。前立腺炎が起こると尿が出づらくなったり排尿時の痛みがでたりと排尿に関する症状が現れます。

前立腺炎は珍しい病気ではなく多くの男性に発病していると考えられています。

2. 前立腺の場所は?:解剖学的な位置についての解説

前立腺はどんな臓器なのでしょうか。

前立腺は男性にしかない臓器です。前立腺は膀胱(ぼうこう)という尿をためる臓器の出口の部分にあります。膀胱から尿を出す通り道が尿道ですが、前立腺は尿道を取り囲むようにして存在しています。見方によっては尿道が前立腺を貫いているようにも見えます。前立腺は身体の外から触れることができません。前立腺は、陰茎の付け根の奥にあり、直腸越しに触れることは可能です。

図:前立腺と周りの臓器の位置関係。

前立腺の体積は正常な人では20cc程度で、くるみと同じくらいの大きさです。前立腺の役割は精液の一部をつくることなどです。

前立腺の病気は、前立腺炎以外では前立腺がん前立腺肥大症などがあります。

3. 前立腺炎の種類

前立腺炎は、急性前立腺炎と慢性前立腺の2つに分けることができます。前立腺炎の分類にはさらに細かく分けるNIH分類という方法を用いることもあります。NIH分類は専門的な内容になりますが紹介します。ここを読み飛ばして「急性前立腺炎」または「慢性前立腺炎」の節まで進んでも理解への支障にはなりません。

【NIH分類】

  • カテゴリー I:急性細菌性前立腺炎
  • カテゴリー II:慢性細菌性前立腺炎
  • カテゴリー III:慢性非細菌性前立腺炎(慢性骨盤内疼痛症候群:CPPS)
    • IIIA:炎症性CPPS
    • IIIB:非炎症性CPPS
  • カテゴリー IV:無症候性炎症性前立腺炎

NIH分類ではまず、急に起こった急性前立腺炎と、長く続いている慢性前立腺炎に分けます。急性前立腺炎はカテゴリーIで、慢性前立腺炎ならカテゴリーIIかカテゴリーIIIです。

さらに慢性前立腺炎を原因によって細かく分けます。慢性前立腺炎を原因によって細かく分けることは治療を決める上で大切なのです。なぜなら、原因が細菌なら抗菌薬抗生物質・抗生剤)が有効ですが、細菌感染がない慢性前立腺炎には抗菌薬が効かないからです。細菌による慢性前立腺炎はカテゴリーII、細菌感染がない慢性前立腺炎はカテゴリーIIIとします。カテゴリーIVはどれにも当てはまらない特殊な場合です。

治療のために細かな分類は大切なのですが、このページはわかりやすさを考えて急性前立腺炎と慢性前立腺炎の2つに分類して解説します。

急性前立腺炎

急性前立腺炎の原因は、細菌が前立腺に入り込んで感染を起こすことです。前立腺は尿道という尿を出す管の一部分を取り囲むようにしてあり、射精管という管で尿道とつながっています。尿の中に細菌がいると射精管を介して前立腺に細菌が入りこんで感染を起こします。慢性前立腺炎の一部も細菌の感染により起こりますが、症状は軽いことが多く、急性前立腺炎は症状が強いことが特徴的です。急性前立腺炎は細菌感染なので抗菌薬を用いて治療します。

慢性前立腺炎

慢性前立腺炎は、細菌感染が関係している場合とそうではない場合があります。細菌感染以外の原因についてははっきりとしないことも多いです。急性前立腺炎を起こした一部の人が慢性前立腺炎になります。慢性前立腺炎は細菌感染が原因の場合には抗菌薬による治療を行い、そうではない場合には炎症を和らげる治療を行います。

4. 前立腺炎の症状

前立腺炎には急性前立腺炎と慢性前立腺炎があり、2つで症状は異なります。

  • 急性前立腺炎の症状
    • 排尿時に痛みがある:排尿時痛
    • 尿が出にくいまたは出なくなる:排尿困難感・尿閉
    • 排尿の回数が多くなる:頻尿
    • 発熱
    • 寒気がする:悪寒

急性前立腺炎は、細菌が前立腺に入り込み感染を起こした状態です。前立腺は膀胱の出口にあり尿道の一部を取り囲むようにして存在しています。前立腺炎が起こると尿道にも影響が及んで排尿時の痛みや尿が出づらいなどの症状が現れます。

排尿に関係しない症状では、発熱や寒気があります。発熱や寒気は菌血症という危険な状態に陥っていることを示唆します。細菌感染が起こると、細菌が血管の中に入り込み全身に広がってしまうことがあります。この状態を菌血症といいます。急性前立腺炎の人では菌血症を起こすことがあるので、発熱や悪寒などは特に注意が必要な症状です。

  • 慢性前立腺炎の症状
    • 排尿時に痛みがある:排尿時痛
    • 尿が出にくくなる:排尿困難感
    • 排尿回数が多くなる:頻尿
    • 肛門周囲の違和感や不快感がある
    • 陰嚢(いんのう)の中に痛みを感じる

慢性前立腺炎の症状は急性前立腺炎と重なるものもあります。排尿時の痛みや尿が出にくくなるなどです。症状の程度は慢性前立腺炎のほうが急性前立腺炎に比べると軽いことが多く、痛みではなく違和感と表現する人もいます。また前立腺から離れた陰嚢の中の精巣上体という部分に痛みや違和感を感じることもあります。

前立腺炎の症状については「前立腺炎の症状」で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

5. 前立腺炎の原因

前立腺炎の原因には何があるのでしょうか。

急性前立腺炎の原因は細菌感染です。慢性前立腺炎の原因は一部が細菌感染ですが、不明なこともあります。以下に急性前立腺炎と慢性前立腺炎の2つに分けて原因を解説します。

急性前立腺炎は細菌感染が原因で起こります。前立腺は尿の通り道(尿道)とつながっているので、尿の中に細菌がいると前立腺に入り込んで感染を起こします。尿の中には本来は細菌は存在していないのですが、膀胱炎尿道炎などの感染症や前立腺肥大症、排尿のための管の挿入などが原因で尿の中に細菌が現れて増殖します。

急性前立腺炎の原因については、「前立腺炎の原因」で詳しく解説しているのであわせてお読みください。

尿路感染症(尿の通り道の感染症)を繰り返している人は慢性前立腺炎になりやすいと考えられています。前立腺は、尿が身体の外に出るときに通る尿道とつながっています。尿路感染症があると尿には細菌が多く含まれているので、排尿の際に細菌が前立腺に入り込み感染を起こすことがあります。

前立腺肥大症は前立腺が大きくなる病気で、尿道を狭くすることがあります。前立腺肥大症の影響で尿道が狭くなると尿が出にくくなります。尿が出にくくなると様々な影響で尿の中に細菌が増えやすくなります。尿の中に細菌が多く含まれていると細菌が前立腺の中に入り込んで感染が起こります。

糖尿病の人は免疫力が低下して感染症が治りにくくなることがあります。そのため、糖尿病の人が前立腺炎になると、治らずに慢性化してしまうことがあります。

慢性前立腺炎の原因については、「前立腺炎の原因」で詳しく解説しているのであわせてお読みください。

6. 前立腺炎の検査

前立腺炎を疑ったときに行う検査には二つの目的があります。一つは前立腺炎と確定することでもう一つは前立腺炎以外の病気がないかを調べることです。

【前立腺炎を疑った時に用いられる診察や検査】

  • 診察
    • 問診
    • 身体診察
      • 直腸診など
  • 尿検査
    • 尿定性検査
    • 尿沈渣
  • 血液検査
  • 細菌学的検査
    • 尿の塗抹検査
    • 尿の培養検査
  • 画像検査
    • 超音波検査
    • CT検査
    • MRI検査

排尿時の痛みや尿が出にくいなどの症状があり前立腺炎を疑ったときには、問診を行い詳しい情報を探します。身体診察では全身をくまなく調べますが、特に大事なのが直腸診という肛門から指を入れて前立腺を触る検査です。前立腺炎が起きていると直腸診で痛みがあります。

前立腺は尿道とつながっているので、前立腺で炎症が起きると尿にも影響が現れ、尿検査で異常をとらえることができます。

細菌学的検査は尿の中にどんな細菌がいるかを調べる検査です。急性前立腺炎と一部の慢性前立腺炎は、細菌感染が原因です。どんな細菌が感染を起こしているかを知ることは治療にとって大切です。そのためには尿を調べることで原因となっている細菌を知ることができます。画像検査は前立腺炎と他の病気を見分けるのに用いられます。前立腺炎と同じ症状は、他の病気でも現れることがあります。例えば急性前立腺炎では発熱をすることがありますが、腎盂腎炎(じんうじんえん)など他の病気でも発熱することがあります。他の病気の可能性が否定出来ないときには画像検査を用いて調べます。

前立腺炎の検査については「前立腺炎の検査」で詳しく解説しているのであわせて参考にしてください。

7. 前立腺炎の治療

前立腺炎は大きく急性前立腺炎と慢性前立腺炎に分けることができ、治療法も2つで異なります。急性前立腺炎と慢性前立腺炎で分けて治療法を説明します。

前立腺炎の治療については「前立腺炎の治療」で解説しているので参考にしてください。

急性前立腺炎の治療

  • 抗菌薬治療(抗生物質、抗生剤) 
  • 膀胱に管を入れる処置:膀胱ろう

急性前立腺炎は細菌による感染が原因で起こります。細菌感染に対しては抗菌薬(抗生物質、抗生剤)による治療が有効です。

急性前立腺炎では、前立腺が炎症のために大きくなり膀胱から先の尿道を圧迫することで、尿が出なくなることがあります。尿がでない状態のときにはお腹から膀胱に管を挿入する処置が必要になります。膀胱ろうといいます。

急性前立腺炎は外来で治療できることもある一方で、高熱が出ていたり尿が出なくなったりした場合には入院して治療する必要があります。

慢性前立腺炎の治療

  • 抗菌薬治療 
  • 前立腺疾患治療薬
  • 漢方薬

慢性前立腺炎は急性前立腺炎とは異なり、細菌感染だけが原因ではありません。細菌感染が原因であれば抗菌薬を用いて治療し、細菌感染ではないときには前立腺の炎症を抑える薬で治療が行われます。他には漢方薬なども使うことがあります。

8. 前立腺炎の再発予防と付き合い方

前立腺炎は再発することがある病気です。前立腺炎を再発させないためにはどのようなことに注意が必要なのでしょうか。また前立腺炎が治るまでの症状との付き合い方についても解説します。

前立腺炎の再発予防

細菌感染が原因の前立腺炎は再発することが十分にありえます。再発の予防には以下のことが大切です。

前立腺炎は排尿障害がある人(尿の出ぐあいが悪い人)に起こりやすいとされています。男性の排尿障害の原因として多いのが前立腺肥大症です。排尿障害があると様々な要因が重なり尿の中で細菌が増殖します。尿道と前立腺は射精管という管を介してつながっているので、尿の中に細菌が多く存在すると細菌が前立腺に入り込んで前立腺炎の原因になります。排尿障害がある人は前立腺肥大症などの尿の流れを妨げる病気が隠れていないかを調べておくことが予防において有効です。

糖尿病の人は感染症への抵抗力が低下することが知られています。糖尿病の治療が不十分で血糖値が高い状態が続いている人は特に注意が必要です。糖尿病の治療は前立腺炎の再発を予防する上でも重要ですし、他の糖尿病合併症を予防する意味もあります。糖尿病の治療が不十分だと医師に言われている場合には治療についての見直しなどをおすすめします。

前立腺炎との付き合い方

前立腺炎の中でも慢性前立腺炎の人は症状が長く続くことがあり、症状と上手に付き合っていかなければなりません。前立腺炎とはどのようにすれば上手に付き合うことができるのでしょうか。一つ例をあげて考えてみます。

前立腺炎は前立腺が圧迫されると症状が悪くなることがあると考えられています。前立腺は陰茎の根本と肛門の間の奥にある臓器なので座ったときには強い圧力がかかります。したがって長時間のデスクワークや車(や自転車)の運転は前立腺を圧迫して刺激を与えてしまうので工夫したほうがいいかもしれません。長時間のデスクワークや運転をするときには時間を決めて休憩をとったりクッションなどを使うことで前立腺への刺激も少なくすることができます。

過度な飲酒にも注意が必要です。アルコールの摂取量が多くなると前立腺がむくんだり膀胱の収縮力が低下したりして排尿困難感や排尿時の痛みなどの症状が悪化してしまいます。このようにアルコールの過剰摂取は前立腺炎の症状に悪影響を与えてしまいます。

前立腺炎は、抗菌薬などによる治療も大切ですが、一方でできるだけ前立腺に負担をかけないような工夫もまた大切です。生活の中で前立腺炎の症状が悪化すると感じるときにはどんな動作が影響しているかを観察してみてください。その動作を避けるような工夫が症状と上手に付き合うヒントを与えてくれるかもしれません。