ぜんりつせんえん
前立腺炎
前立腺炎とは、前立腺が炎症を起こした状態のことで、陰部の痛みや排尿障害、発熱の原因となる
7人の医師がチェック 95回の改訂 最終更新: 2018.02.09

前立腺炎の治療には何があるのか?薬で治る?

前立腺炎は細菌感染が原因で起こる場合とそうではない場合があります。細菌感染が原因で起こる前立腺炎に対しては抗菌薬による治療が有効です。原因がわからない場合には炎症を抑える治療などが主体になります。

1. 急性前立腺炎の治療

急性前立腺炎は細菌による感染が原因で起こります。細菌感染に対しては抗菌薬(抗生物質、抗生剤)による治療が有効です。

急性前立腺炎の人のなかには前立腺が炎症のために大きくなり尿が膀胱(ぼうこう)から先に流れなくなる場合があります。前立腺は尿の通り道を取り囲む位置にあるからです。

図:前立腺と周りの臓器の位置関係。

尿がでない状態が続くと命に危険を及ぼす状態にも発展します。そのためお腹から膀胱に向かって穴を開け、管を挿入して膀胱の中の尿を身体の外に出す処置が必要になります。

参考:レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版、標準泌尿器科

急性前立腺炎の抗菌薬治療

急性前立腺炎は細菌感染が原因なので抗菌薬(抗生物質・抗生剤)を使って治療します。抗菌薬は感染を起こしている細菌にあわせて適切なものが選ばれます。以下に治療に使う抗菌薬の例を示します。

【急性前立腺炎に対する抗菌薬治療の例】

  • セフトリアキソン+ドキシサイクリン
  • シプロフロキサシン
  • レボフロキサシン
  • ST合剤

急性前立腺炎に対する抗菌薬は、尿の塗抹検査(とまつけんさ)や培養検査(ばいようけんさ)などを判断材料にして選ばれます。尿の塗抹検査は短時間で原因菌の大まかな種類を知ることができるので、最初に用いる抗菌薬を選び出すのに役立ちます。培養検査は原因となっている細菌を増殖させて調べるので、細菌の名前や抗菌薬の効果など詳しい情報が得られます。培養検査を判断材料にすることにより最も効果がある抗菌薬を選び直すことができます。

前立腺炎の検査については「このページ」を参考にして下さい。

急性前立腺炎は淋菌やクラミジアが原因となることもあります。問診や検査の結果などから淋菌やクラミジアが感染を起こしていると考えられる場合にはリストの1番上のセフトリアキソンとドキシサイクリンという2つの薬を使った治療を選びます。

急性前立腺炎の抗菌薬治療については「感染症治療薬ガイド 前立腺炎」もあわせて参考にしてください。

膀胱に管を入れる処置

急性前立腺炎になると前立腺が腫れて大きくなることがあります。前立腺は膀胱の出口にあるので腫れると尿の流れを妨げてしまいます。前立腺の腫れがひどい場合には尿が膀胱から先へまったく流れなくなります。尿閉という状態です。

尿閉になると何らかの方法で尿を身体の外に出さなければなりません。尿閉の状態から尿を身体の外に出すにはどうすればいいのでしょうか。

解決策としては、狭くなった尿道に管を通す方法とお腹から膀胱に向かって管を入れる方法の2つが考えられます。どちらの方法も選ぶことができますが、狭くなった尿道に管を入れる行為は炎症を起こしている前立腺に対して刺激を与えてしまい炎症が悪化することが懸念されます。このため、お腹から膀胱に直接管を挿入する方法が選ばれます。膀胱ろうという方法です。

膀胱ろうの目的は炎症を起こしている前立腺に負担をかけずに尿を身体の外に出すことです。膀胱ろうは超音波検査の画像を見ながらお腹に針を刺して管を挿入します。膀胱ろうの処置が完了すると挿入した管を介して尿が出てきます。治療中は管を挿入したままにしておき、前立腺炎が十分に治りきった段階で抜きます。管を抜いた後は治療の前と同じように排尿ができます。膀胱ろうで管を挿入した傷はわずかに残ることがありますが、時間の経過とともに目立たなくなります。

2. 慢性前立腺炎の治療

慢性前立腺炎は急性前立腺炎とは異なり、細菌感染だけが原因ではありません。細菌感染があれば抗菌薬を用いて治療し、細菌感染がないときには前立腺の炎症を抑える薬などで治療が行われます。

参考:レジデントのための感染症診療マニュアル 第3版、標準泌尿器科

抗菌薬治療

慢性前立腺炎で細菌感染が原因となっている場合には抗菌薬を治療に用います。

抗菌薬は感染を起こしている細菌にあわせて適切なものが選ばれます。以下に治療例を示します。

【慢性前立腺炎に対する抗菌薬治療の例】

  • シプロフロキサシン
  • レボフロキサシン
  • ST合剤

慢性前立腺炎に対する抗菌薬は、急性前立腺炎と同様に尿の塗抹検査(とまつけんさ)や培養検査(ばいようけんさ)などを判断材料にして選ばれます。塗抹検査は短時間で原因菌の大まかな種類を知ることができるので、最初に用いる抗菌薬を選び出すのに役立ちます。培養検査は原因となっている細菌を増殖させて調べます。培養検査は時間はかかるのですが、細菌の名前や抗菌薬の効果など詳しい情報が得られます。培養検査を判断材料にすることにより最も効果がある抗菌薬を選び直すことができます。

前立腺炎の検査については「このページ」を参考にして下さい。

慢性前立腺炎の抗菌薬治療については「感染症治療薬ガイド 前立腺炎」もあわせて参考にしてください。

前立腺疾患治療薬(セルニルトン®)

セルニチンポーレンエキス(商品名セルニルトン®)は数種類の植物の花粉を材料にして作られた薬です。前立腺に炎症が起きていると前立腺はむくんだり刺激に対して過敏になったりしています。セルニルトンには前立腺の炎症を抑える効果があります。前立腺の炎症を抑えるセルニルトンには2つの効果が期待できます。 

  • 尿の出具合をよくする
  • 肛門周囲や会陰部の痛みや違和感を抑える

セルニルトンの副作用は主に胃腸障害や胃部不快感、食欲不振などです。副作用が現れる確率は低く3%未満と報告されています。

もう一つの注意点としてはセルニルトンの材料であるチモシイ、トウモロコシ、ライ麦、ベーゼル、ネコヤナギ、ハコヤナギ、フランススギ、マツの花粉にアレルギーがある人はセルニルトンを使わないようにします。

漢方薬

漢方薬の中には前立腺炎に効果のある薬がいくつかあるので紹介します。

■牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)

牛車腎気丸は、八味地黄丸(ハチミジオウガン)という漢方薬に牛膝(ゴシツ)と社前子(シャゼンシ)という生薬を加えたものです。

牛車腎気丸は血液の流れを良くしたり膀胱を縮ませる神経を抑えることで、頻尿(ひんにょう)や排尿困難などの症状を改善させる効果があります。他の効果としては腰痛や浮腫み(むくみ)などにも有効とされています。

■八味地黄丸(ハチミジオウガン)

八味地黄丸は、牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)から牛膝(ゴシツ)と社前子(シャゼンシ)を除いた8種類の生薬から構成されている漢方薬です。一般的に体力がやや虚弱から中等度の場合に適するとされます。加齢に伴う腎機能の低下などにより尿が出ない場合にも尿が出すぎる場合にも有用とされるため、高齢者の泌尿器症状にもよく使われる漢方薬のひとつです。全身の倦怠感、口渇、腰痛、夜間頻尿などを伴うような症状には特に有用とされています。

■漢方薬による治療の注意点

通常の薬に比べると漢方薬は安全性が高いというイメージをもつ人が多いと思います。しかし、漢方薬も「薬」なので副作用はあります。

例えば、生薬の甘草(かんぞう)を過剰に摂ってしまうと、高血圧や四肢の脱力などの原因となる偽性アルドステロン症などが起こったりもします。他には間質性肺炎という病気や肝臓の機能が低下する原因にもなります。とはいえ漢方薬の副作用が現れることは少なく、現れたとしてもほとんどは薬を中止することでよくなります。

副作用は気になる所ですが、副作用が起きたと自己判断して治療を中止すると症状が悪化したりする原因になります。非常に重い症状となれば話は別ですが、副作用かもしれないと感じたらまず薬を処方している医師や薬剤師に相談してみることが大切です。

3. 前立腺炎は入院治療が必要?

前立腺炎は外来で治療が可能なことが多いです。ただ急性前立腺炎を起こしている人で状態が安定しない人には入院治療が必要です。具体的にはどんなときに入院が必要なのでしょうか?

入院が必要なのは以下のときです。

  • 発熱している:菌血症の疑いがある
  • 水分や食事の摂取ができない:脱水になる危険性がある
  • 尿がでない:尿閉の状態である

解説します。

菌血症とは、血液中に細菌が侵入することを指し、深刻な状態です。菌血症が起こると発熱します。菌血症は状態が悪くなりやすいので入院して強力な抗菌薬治療などが必要です。

急性前立腺炎では高熱が出たりして、水分や食事の摂取が出来なくなることがあります。さらに発熱すると体から多くの水分が奪われるので脱水が起きやすくなっています。ひどい脱水は、意識障害などの原因になるので早めに治療しなければなりません。脱水に対しては水分を点滴で補うことで状態がよくなります。

尿閉は膀胱から先に尿が流れない状態のことです。急性前立腺炎では前立腺が炎症のために大きくなります。前立腺が腫れて大きくなると尿道を閉塞し尿閉が起こることがあります。尿閉が起こると膀胱の中に尿がたまり続けてしまいます。尿閉が続くと腎臓などの機能が低下してしまうので治療が必要です。尿閉の治療は、膀胱に管を挿入して膀胱の中の尿を身体の外に出します。膀胱の中の尿を身体の外に出す方法はいくつかありますが、急性前立腺炎では下腹部から膀胱に直接管を通す膀胱ろうという方法が選ばれます。膀胱ろうが必要な場合には入院治療が望ましいです。

前立腺炎で入院が必要な状況について解説しました。違う見方をすると、最初は外来で治療が可能と言われても、治療中に発熱や脱水、尿閉が起こった場合には入院が必要と判断されるかもしれません。症状が変化した場合には治療を受けている医療機関に相談して対応を確認してください。