ほっさせいやかんけっしきそにょうしょう
発作性夜間血色素尿症(PNH)
血液を作るときの大元となる造血幹細胞に異常が生じ、「壊れやすい赤血球」ができてしまう病気
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最終更新: 2021.02.01
発作性夜間血色素尿症(PNH)の基礎知識
POINT 発作性夜間血色素尿症(PNH)とは
血液中の成分である赤血球は、肺で酸素を取り込み全身に届ける役割があります。本来は体内での赤血球寿命は約120日ほどです。発作性夜間血色素尿症では、壊れやすい赤血球が作られてしまうため、赤血球の産生が壊される量に追いつかずに貧血となります。症状としては、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、だるさ、疲れやすさなどの貧血症状に加えて、褐色尿(ヘモグロビン尿)、腹痛、飲み込みにくさ、勃起障害などが出る場合があります。発作性夜間血色素尿症の診断は採血検査、尿検査、骨髄検査などで行います。治療は普段のコントロールと、溶血発作時の治療に分けられます。溶血発作時にはステロイド薬、輸液、ハプトグロビン製剤などを使います。重症の場合には骨髄移植が検討されることもあります。発作性夜間血色素尿症が心配な方や治療したい方は血液内科を受診してください。
発作性夜間血色素尿症(PNH)について
- 血液の元である造血幹細胞に異常が生じ、「壊れやすい赤血球」ができてしまう病気
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症とも呼ばれる
- 英語でのparoxysmal nocturnal hemoglobinuriaの頭文字をとってPNH(ピーエヌエイチ)とも呼ばれる
- 赤血球が壊されてしまうことを「溶血(ようけつ)」という
- PNHの溶血は夜間睡眠時に起こりやすいので、この病名がつけられている
- とてもまれな病気で、日本にいる患者は約400人と推定される
- この病気へのかかりやすさに男女差はない
- 20-60歳代の幅広い年齢層で発症する
- 再生不良性貧血の合併や、相互に病気が移行することが知られている
- 欧米人ではヘモグロビン尿や血栓症が起こりやすい
- 日本人では貧血だけではなく、汎血球減少(白血球や血小板も減る)が起こりやすい
- 厚生労働省の指定する難病の1つである
- 一定の診断基準を満たし、ある程度以上重症であれば治療費の補助を受けられる場合がある
発作性夜間血色素尿症(PNH)の症状
- 主な症状
- 患者によって現れる症状が様々であり、珍しい病気のため診断が難しく、診断まで数年かかることもある
発作性夜間血色素尿症(PNH)の検査・診断
- 血液検査
- 赤血球、白血球、血小板など血球成分の数を調べる
- 溶血しているかどうか調べる
- 血液検査でこの病気が疑われた場合、赤血球の性質や数を確認するために行われる検査
- フローサイトメトリー(診断において非常に重要)
- ハム試験
- 砂糖水試験
- 尿検査
- 骨髄検査
- 腰骨や胸の骨から骨髄を採取する
- 骨髄を採取して顕微鏡で確認したり、染色体検査を行う
発作性夜間血色素尿症(PNH)の治療法
- 3大症状である溶血、血球減少、血栓症、それぞれに対する治療を行う
- 溶血の程度が強い場合にはエクリズマブ(ソリリス®)やラブリズマブ(ユルトミリス®)の使用を検討する
- ソリリス®やユルトミリス®使用時は髄膜炎菌ワクチンの接種が必須
- 感染症や手術などのストレス時における溶血発作には以下のような治療を行う
- 補液(水分の点滴)
- ハプトグロビン製剤
- 輸血
- ステロイド薬
- 血球減少(造血不全)に対してはステロイド薬やG-CSF製剤を使用する
- 感染症にかかりやすくなるため、手洗い、うがい、マスク等で予防することが重要
- 血小板(止血機能を持つ)の減少により、出血しやすくなる
- 血栓症の治療
- 溶血の程度が強い場合にはエクリズマブ(ソリリス®)やラブリズマブ(ユルトミリス®)の使用を検討する
- 3大症状の程度が強い場合には骨髄移植を検討する
- ゆっくりと進行する病気である
- 診断後の平均生存期間は32年ほどと報告されている
- 日本人での主な死因は血球減少に伴う出血や感染症である
- 5%ほどの患者さんは無治療で治るケースもある
- ソリリス®やユルトミリス®の登場により、治療成績はさらに良くなっていくと期待されている
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